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22:聖剣フィクサー







 一ヶ月ほど経った。 


 ずいぶんとこちらの世界の生活にも慣れ、日常として日々を過ごすようにもなってきた。


 「あっ、常連さんだニャ♪今晩も来るニャ?」


 フッ、

 オレが街を歩けばこんなもんだ。

 異世界の女性達がオレを一人にしてくれない。

 困ったもんだぜ・・・。


 「いや、この一週間毎日通わせてもらったんで、流石に今日は、、、」

 「そっか、残念だニャ。今日のアタシは発情中ニャんだけどニャ~」

 「行きますぅ!!!」

 「ふっ、チョロいニャ・・・い、いや何でもないニャ!じゃあ、待ってるニャ」


 参ったぜ。

 これがモテる男という奴か・・・

 まったく、困った子猫ちゃんだぜ


 それにしても、こんなジゴロ(死語)なオレではあるが、そろそろ足を地に付けた生活がしたいものだ。

 宿暮らしというのは、便利なようで落ち着かない。

 もう少しこの世界を見て回って拠点を探すのも良いだろうが、もうここコーヴァで賃貸でも借りて、我が城を築くのも良いのかもしれない。


 そして、狩りには週5日は行くようにしている。

 一度の狩りで、だいたい10万イェンほどは稼いでいるので、かなりのリッチマンだ。

 だが、オレが通う店では、ホステスたちの生活はシビアなようで、接客の笑顔の裏では[母の病気]や[弟の借金]など、毎夜、苦労続きで涙を流している。

 そんな彼女たちが、少しでも本当の笑顔を取り戻せるようにと、その都度援助を惜しまないが、なかなかトラブルは無くならず、次から次へと彼女たちが休まる様子がない。


 全く、、、みんなが幸せになれたら良いのに。


 おかげで、生活は困窮している。

 だが、後悔はない。

 援助の際にはハグしてくれるし、どさくさに紛れて乳に触れたこともある。

 ゆえに、オレは今日も頑張るのだっ。

 あれ?

 さっきの子猫ちゃん、確か今日お母さんの手術って言ってなかったっけ、、、

 ま、まぁ、いい・・・

 取り敢えず、頑張ろ。


 そんなことを考えながらギルドへと向かい、今日の仕事となる依頼書を確認する。


 「あ、同志ジュンペイ。ジークメガネ、、、最近頑張ってますね」


 同じ神を信仰する、ギルド職員のミッシェルだ。


 「よ、ジークメガネ。まぁな、オレが頑張んねぇと、弟さんが鉱山に売られそうなんだよ。それに今晩あたりいけそうな気がするんだ♪」


 「ちょっと、なに言ってんだか分かりませんが、それより、サブマスがお呼びです。くれぐれも暴走しないようにお願いしますね」


 ?

 ラキシスたんに会えるのは嬉しいが、なんだろ?

 早速、訪ねてみるか。



 「失礼しま~す」


 ギルド3階にあるサブマスターの執務室。

 ノックのあと入室すると、そこには我が最愛の人妻メガネ天使と、ナイスミドルなイケオジがいた。


 「あ、ちょうど良かった。ジュンペイさん、こちらこの最前線を統べるフェルディナンド伯爵です。あちらは先ほどお話したハンター、ジュンペイです。彼はまだこの街に来て一ヶ月くらいなのですが、その戦闘力と貢献度により先日ランクDのシルバープレートに格上げした新人です」


 ラキシスはオレ達の間に入り、お互いを引き合わせるよう紹介する。


 「はじめまして、噂は聞いているよ。フェルディナンドだ。伯爵とは言っても長年前線で泥を被った叩き上げだ。フランクでかまわない。宜しくなジュンペイくん」


 そう言って右手を差し出す。


 50歳くらいだろうか。

 口髭が似合う、爽やかイケオジだ。

 性格も良さそうだ。


 「あ、はじめまして。ジュンペイです。つか、これ、どういうこと?伯爵様と引き合わすなんて、派遣か?」


 オレは右手を握り返しながら、ラキシスへと状況の説明を求める。


 「ハッハハ。察しも良いようだ。その通り。近々、王都より大規模な視察があってな、」


 「卿っ、それはまだ、、、」


 「いいではないか。そのうち噂も広がるわ。でだ、その際、街の闘技場にて御前試合を企画しておるのだよ、それでハンターギルドにも協力を要請していたという訳だ」


 グハハハ、と豪快に笑う辺境伯爵。

 いや、アンタがその噂を広めてんだろ。


 「・・・そういうことよ。もう言いたいことは分かったと思うのだけど、ジュンペイさん、貴方にもその御前試合に出てもらいたいの」


 「ぁあ~、わりぃが柄じゃねぇよ。一応、誘ってもらって光栄だとは思うが無理です。オレは奇術師だ、ってのも変な言い方だが、剣術は出来ねぇし、試合向きじゃねぇんだよ、オレのスタイルは。スマンな」


 正直、全く興味もないし、面倒でしかない。

 だが、わざわざ一本釣りで誘ってもらったことには敬意を払う。


 「そう言うと思ったわ。まずは座りましょう。フェルディナンド卿も。お茶でいいかしら?」


 どうやら話は単純ではないらしい。

 冷静に話し合いましょうとばかりに、お茶と灰皿をテーブルに用意するラキシス。

 オレも伯爵も素直に従ってテーブルにつく。


 「ジュンペイさん、それ、私にも1つ頂けないかしら?」


 灰皿が用意されたので、遠慮なくタバコを準備していると、意外にもラキシスがオレのタバコを欲しがった。


 「かまわないが、意外だな。潔癖なイメージだったからタバコを吸うとは思わなかったよ」


 素直にラキシスへと進呈する。

 ついでに興味深そうに見ていたフェルディナンド伯爵にもお裾分け。


 「ふぅー、、、中間管理職なんて、清楚潔癖なんかでやってられないわ。以前見た時からこの綺麗なタバコには目を付けていたのよ。思った通り、雑味の無い上品な味わいね」


 「うむ。だが、ちょっと薄いな。私は普段葉巻を愛煙してるから物足りない感じだ。しかし非常に上質だ。献上品などに良いのかもしれんな」


 個室でタバコを吹かす三人。

 今の日本ではなかなか無い光景だろう。

 それにしても目にしてみれば、ラキシスの喫煙姿もこれまた良い!

 なんとも色っぽい感じが大爆発だ!!

 はいっ、好きです!

 大好きですっ!!


 「気に入ったのなら遠慮なく言ってくれ。箱はやれないが、タバコの百本や二百本、いつでも進呈するよ。あ、いえ、ラキシスにです。伯爵にはちょっと、、、」


 オレにはリロードがある。

 タバコを無限増殖など容易い。

 けど、金儲けや贈り物などの下心丸出しで身を乗り出す伯爵には、面倒臭いので遠慮していただきたい。


 「あら、悪いわね。遠慮なく頂戴するわ、、、さて、そろそろ本題に戻るのだけれど、ジュンペイさんにお願いしたい内容は、内偵調査なの」


 「ふぅー、、、試合に出るんじゃないのか?」


 雲行きが怪しくなってきた。

 考えてみりゃ、領主様自ら護衛もお連れもなく、ギルドでの会談、いや、密会か?

 裏があって同然という訳だ。


 「ふぅー、、、別に答えなくても良いのだけれど、ジュンペイさん。私がこの一ヶ月アナタをマークしていたのは気付いていたわよね?それにソロで毎日10万イェンを越える量を討伐するというのは、戦闘力より、その索敵能力の高さに関心が集まるの。そして、ここからは推測の域を出ないのだけれど、、、アナタ、偽装や隠蔽も見破れるのではないかしら?」


 ラキシスがぶっ込んで来た。

 視線を強くし、フェルディナンド卿も睨むようにこちらへと注目する。


 場に緊張がはしる、、、


 が、


 「その通りだよ。よくオレを見てくれてるねぇ~、ラキシスたん。嬉しいよ♪」


 あっさりゲロした。


 「・・・ずいぶんあっさり認めるのね。想定外で少し怖いわ」


 「裏なんかねぇさ。言ったろ?オレは奇術師。そこにトリックがあれば暴いてやるさ。で、また本題に戻すけど、オレに試合へ参加させ、その出場者の誰かを探れ、って感じなのかな?」


 オレは両手を広げ、なにもないことをアピールした後に、両手にトランプを出現させて床へとばらまく。


 「驚いた、凄いものだな、それは、、、正確には疑いを晴らして欲しいというのが本音だ。詳しくは言えないが、鬼族との内通者を見つけたい。状況だけを見ると容疑者は絞られている。だが、私にはどうしても彼が暗躍しているなどとは思えないのだ、、、何者かの策略にしろ、彼の乱心にしろ裏があるのは間違いない。そこで、奴らに参加が自由な御前試合という隙を与える」


 オレの手品に驚きつつも、核心へと触れだすフェルディナンド卿。

 言っちゃって大丈夫なの?

 つか、オレ、まだ仕事受けるなんて言ってないよ?


 「はぁ~、、、卿。確かに彼を推薦したのは私ですが、ぶっちゃけ過ぎですっ!まだ、彼が協力してくれるとは、」


 「いや、受けるよ、この依頼。ありがと。正直面倒臭いことこの上ないが、ラキシスたんが推薦、いや、信じてくれたってだけで空だって飛べるさぁ♪。大丈夫、口は堅いよ♪」


 <安請け合いちゃうか?目立っても旨味はないで>


 いや、試合は早々に負けて大丈夫だろ?

 目的は鑑定ステータス乱発しての内偵調査なんだし。


 「はぁぁ~、、、お願いだからそんな態度で逆に不安にさせないで。まぁいいわ。卿が言うように参加者を自由に募ることで、必ず鬼族側との接触があるはず。そこを押さえたいのよ」


 なに?

 このバカな二人は?

 って、顔を隠そうともせず、心底呆れた表情でため息を連発するラキシス。

 う~ん、マイナスイオン♪

 深呼吸してラキシス成分を吸収する。


 「オケ。たぶん大丈夫。得意分野さぁ。ほら、それより下、見てみ♪」


 軽薄に返事した後、両手をテーブルの下へと指さして覗くよう指示する。

 それに釣られ、面倒臭そうにテーブルの下を覗く、ラキシスと伯爵。


 「っ!、、、カードが、いつのまにっ!!」


 驚いた様子で顔を上げるラキシス。

 フェルディナンド卿も目を白黒させている。


 そう

 オレがさっきばらまいたカードは、キレイさっぱり消えているのだ。


 へへへ、

 オレの新しい力さぁ

 詳しくは今度ね♪


 「ま、だから?って感じだけど、やるときゃやるぜ。特にラキシスたんのためとあらば」


 ドヤ顔でアピールする。


 「そうね、、、アナタの変な力を信じるとするわ」


 「変って言うなっ!」


 「まぁまぁ、君の変な力は置いといて「だから変って言うな」、容疑者は御前試合での主役、アシノミヤ王国4人の勇者[キングスナイト]の一人、聖騎士アズベル。そして、ここにいるラキシス嬢の旦那だ」







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