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21:力と狡猾さだ、さすれば、勝つ!







 「ふぅー、、、、だからもういいって。礼はいらねぇっつってんだろ」


 いい加減イライラしてきた。


 人間の基準と違うオークの言葉に、勝手に踊ってしまったことには後悔していない。

 だって見過ごせねぇし。

 自分のせいだし。


 だが、その後がしつこかった。


 「いえ、受けたご恩は必ず返しますっ!せめてお名前をっ!」


 足早に街へと立ち去ろうとするオレに、必要に食い下がるオバチャン様?とその兵士たち。


 このままでは街まで付いて来そうな勢いだし、なによりギルドへ問い合わせるとかも面倒だ。


 仕方なく、足を止めてオバチャン等へと振り返る。


 「ふぅー、、、分かった。その感謝の気持ちだけは受け取ってやる。だが、これ以上の追従も詮索も迷惑でしかない。それとも恩を仇で返したいのかい?何度でも言うがこれ以上は関わるな。マジ迷惑だ」


 冷静にはっきりと言われたことに絶句するオバチャン。

 だが、そこに兵士の一人がしゃしゃり出た。


 「貴様っ!主に向かってなんたる態度っ!不敬であるぞっ!!」


 オレは静かに睨みつけた。


 その様子に流石のオバチャンにもオレの迷惑が伝わったのか、態度を改めて頭を下げた。


 「重ねて非礼、申し訳ございません。これ以上は仰る通り、仇となってしまいそうなので、ここで引かせていただきます。今はこちらも火急な密命のため、このような場所で事情を話すことは出来ませんが、助けていただき、本当に有り難うございました」


 再度、深々と頭を下げる貴族のオバチャン。


 なんか、悪いことした気分、、、

 けど、オレが悪いとも思っていない。

 ここにきて多くを語ると逆に失礼になるだろうから、返事だけしてその場を離れた。




 「それにしても、このレベルアップ回復ってスゲェーな」


 しばらく森を歩いたあと、気分転換にサポ助へと話しかけた。

 最近ゴブゴブプチプチでは、なかなかレベルが上がらなかったが、今回オークやトロールを殺ったことでレベルは上がっていた。

 それに伴い、疲労は消え去って元気いっぱいすこぶる調子が良い。


 <久しぶりに、ステータスチェックしとこか>


 サポ助の言葉に従い、大きな樹木の根っこに腰掛けながら、タバコをふかす。



=====================

LV23 ジュンペイ 32歳

クラス:[奇術師]C

職業: Fランク ハンター

フィジカル:E+

メンタル:C

称号:[魔導姫の救済]

固有仕様:[最適化][ストレージ]

     [マップレーダー]

    [サポートシステム(オリジナルモード)」

固有スキル:[リロード][アクセレーター]

ポイント:180P

カテゴリースキル:[奇術師C][商人C]

         [魔法使いF]

装備: デザートイーグル50AE

    黒鉄の短剣

    隠者のマント

    トレント樹脂の胸当て

    トレント樹脂の小手

    トレント樹脂の脛当て

    風魔の小盾 

=====================




 お、レベルが2つも上がってんじゃん。

 今までの経験値に、プラスオークで1つ、トロールで1つか。

 フィジカル・メンタルも順当に上がってるし、ポイントも手には入った♪

 ?

 ・・・おや?

 サポ助さん?

 なんか、新しい称号が増えているようですけど、、、


 <・・・いや、ボクも知らんよ。つか、それ、多分いまやで。しょっちゅうステータス管理はしてないけど、最近まで無かったもん。つまり、さっきのオバチャンを助けたことが原因やね>


=== 称号:[魔導姫の救済] ===


 「・・・・・」


 <ちなみにその称号、神格高いで。レアやレア。ランクで言ったらAくらいにはなる。スキル制作の素材としては一流やで>


 「・・・・・・ふぅー」

 

 どういうことだ?

 魔導姫の救済?

 オバチャンを助けたことが?

 つか、あんな成金ババァが魔導姫?

 

 ・・・なんか引っかかる。


 タバコをふかしながら、しばし考える。


 密命?火急的?このような森で、、、

 確か、オバチャンはそんなことを口にしていた。

 ここは[アシノミヤ王国]と、鬼族の国[アコウ]との国境付近。

 小競り合いの延長とはいえ、現在は公な戦時中だ。

 そんな中、護衛の兵士を連れているとはいえ、こんな所を、、、


 「サポ助、あのオバチャンを鑑定ステータスしたか?」


 <いや、特に覗いてはないよ。どないしたん?>


 立ち上がり、オバサンと別れた方向を見ながら考えをまとめる。


 「ふぅー、、、冷静になってみりゃ可笑しなとこだらけだ。こんな最前線で護衛が4人。しかも思い出してみれば屈強な兵士ってより、威厳だけの中年オヤジ。ん?そもそもどこに行くんだ?街道ではなくこんな森の中を、、、なんで死にかけてすぐなのに、街に帰るオレに同行を求めなかった?つか、お礼ばっかで、助力すら求められてねぇ・・・密命による極秘作戦、その割に貧弱なチーム、、、サポ助、まだレーダーに反応はあるか?」


 <、、、驚いた、無いね。レーダーを薄ぅぅく伸ばして1kmくらい探ってみても反応が消えてる。とてもあんなオバチャンが森の中を歩く速度やないで>


 その通りだ。

 50代くらいの華美な格好の成金ババァ。

 とても森の中を歩く格好じゃない。

 まして極秘作戦中だというのなら目立たない格好をしているはずだろう。

 コーヴァの街を過ぎたこの森の先には、鬼族の前線基地である小城があるだけで、他に街などはない。

 仮に鬼族との密会などが目的だとするのなら、襲われていた状況も不自然だし、なによりあんなオバチャンが使者というのも違和感でしかない。


 「ふぅー、、、あれ?オレ、騙された?」


 つまり、あの姿形も極秘作戦とやらもフェイクなのだ。


 考えてみれば[火急の密命のため]などと、口にするのは変である。

 出来るだけ、違和感なく別れるために、それっぽいことを言って先手を打った?


 たぶん、襲われていたのはマジなのだろう。

 本気で死にかけているところに、偶然オレが現れたのも計算とは思えない。


 しかし、これ以上関わられることを、彼方こそが望んではいなかった。

 そんな折り、オレはなにも聞かずにいち早く立ち去ろうとした。


 そこで欲が出た。


 利用するにしても、自分たちの秘密の出所を抑えるにしても、オレの名前を聞き出して、保険を掛けておきたかった。

 だが、あれ以上食い下がるとオレの関心が強まってしまうと判断して、オレの印象を操作するように、兵士は逆ギレのように怒ってみせた。


 「ふぅー、、、実際、称号発見するまで、オレの印象は奴らの動向より、貴族に対する嫌悪感でしかなかったしな。にしても、なに者だ?あのオバチャン」


 今から追いかけるのは難しいだろう。

 それに自ら危険に身を晒すつもりもない。


 <怖い世界やね、なにがホンマかわからん。これからは問題なさそうな人でも、基本鑑定ステータス掛ける癖つけとくわ>


 「そだね、状況からすると姿を変える術があるみたいだしな。ふぅー、、、ま、向こうもこれっきりって感じだったし、称号貰えてラッキーってことにしとこうか」


 さて、次はこの称号を使ってどんな能力を作ってやろうか?


 そんなことをサポ助と相談しながら、街へと歩き出した。




=============




 「して、あの者の解析は出来たのかえ?」


 天空を漂う巨大な島。

 円形状に続く城下町の中心には、純白の美しい城が天高くそびえ立っている。

 その左翼の塔の最上階。

 絢爛ながらもシックで落ち着いた部屋の中で、先ほどの成金オバサンは、部下の兵士に向かって心底疲れた表情で質問をしていた。


 「はっ。アナライズストーンの情報によりますと、ただのヒューマンに間違いはございません。身体能力は平均値よりむしろ低いくらいです。ただ、気になる点は保有スキルが解析不能となっていることなのですが、、。ステージ4以下で、まして地上民族では初めてのケースかと。あの状況では、その戦闘スタイルを視認することも出来ていませんので、これ以上のことはなんとも、、、」


 平らな石版に映し出された情報を見ながら、威厳たっぷりな兵士がそれに答える。


 「ふむ。まぁそれだけ分かれば十分と言えよう。それにしても、アシノミヤ王都で暮らす、お爺様の邸宅へと転送したはずなのに、どことも分からぬ森の中。さらには、まさか、あのような化け物どもが待ち受けていようとは。[天橋越]の座標設定を何者かに改竄されたとしか思えんのぅ」


 オバサンは立ち上がり腕輪を操作すると、その姿を20歳前後の美しい女性へと変貌させた。

 それに合わせ、4人のオジサン兵士たちも若いイケメン兵士へと姿を変える。


 「それは間違いないでしょう。戦闘レベルを著しく落としてしまう[現し身化粧]を必要とする太上皇様宅への訪問。さらに[天橋越]の連続使用制限を利用して、事故に見せかけた殺害・・・これはもう、偶然の事故と捉えることの方が不自然です。現在、レベル5へのアクセス履歴を捜査中です。正直、痕跡が残っているとは思えませんが」


 「姫。これはもう完全な協定違反です。我々も打って出ましょう!」


 4人の兵士たちは覚悟を決めた目で返事を待つ。


 「それこそ思う壷よ、、、何度でも言うが妾は為政に顔を出す気などない。この大魔導国家、浮遊都市[マジョリカマジョルテ]を治めるのは弟でよい。妾にはそんな資格などないのだよ」


 ふぅ、っとため息をはき、紅く長い髪の毛をかき上げながらテラスへと向かう。

 その様子に、兵士たちも一礼をして自分の仕事へと戻っていく。



 「化け物どもを軽く葬ったあの男・・・もう一度、会いたいものじゃな」



 呟いたその顔は、素直な情念とはほど遠い、計略に満ちた笑顔だった。







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