表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/47

20:Zの鼓動







 「やっぱ、もっとカッコいいところ見せとくべきだったかな」


 時刻は昼前。

 近接戦闘初級訓練を早退して、すぐに街の外の狩り場へと向かっている。


 サポ助との連動実験を、もっと実践的に試してみたいからだ。

 近接技術を習う予定も、AR表示とサポ助のアシストにより緊急性はなくなった。

 あそこではデザートイーグルは使えないし、なにより観察されている状況ではやり辛くて仕方がない。

 ラキシスが訓練場にいたことには、実は最初から気付いていた。

 マップレーダーには、マークした人物は色違いで表示される。

 決して、自宅の場所を探ろうとか、プライベートの動向をチェックするためとかではない。

 断じてない。


 「興味ないとか言ってたのに隠れて見に来るとか、どんだけ愛されてるんだよ、オレは。ムフフ」


 ポジティブに考えたいところだが、そんなことでは無いのは分かっている。

 オレはまだ、信用を得てはいないのだ。

 ただ、それだけのことだ。


 <さあ、ぺーはん。そろそろええんちゃうか?早速やけど[合体モード]入るよ。あの小鳥、狙ってみよか>


 合体っ言うな!


 狩り場の森へと到着していた。

 シンクロ?モードに入った瞬間、視界にARが出現して情報量が増える。

 この状態の名前、考えねぇとな。


 サポ助が言う小鳥は、二時の方角の枝にとまっていた。

 スズメくらいの大きさで、AR表示がなければ気付きもしなかった。


 オレは言われた通り、デザートイーグルをストレージより取り出して銃口を向ける。

 距離にして30m。

 これまでのレベルアップにより、当初よりは射撃に安定感を感じるが、こんな小さな小鳥に当てることなど不可能だ。

 精度の研究くらいかなと、軽く考えながら照準を小鳥へと向けると、射撃ラインが赤くAR表示されるので、レーザーポインターのようで非常に狙いがつけやすい。

 また、銃身は揺れることはなく磁石が物にくっつくように、ピタッと照準が吸い寄せられて固定される。


 「すげぇぇ!ナイスゥアシストじゃねぇかっ!!これなら外す気がしねぇ!」


 自分の腕なのに、いい感じにサポートが入ってFPSのようにブレることなくピタッとなる、ピタッと。


 <流石にこの距離の精密射撃は厳しいな。取り敢えず、小鳥が留まってる枝を狙って。ほんですぐに飛び立った小鳥を追撃するつもりでお願い>


 了解、、、


===バッァンッ!===


 銃声が響く。

 銃弾は数cmズレたが枝を揺らすぐらいには命中した。


 驚いて飛び立つ小鳥。

 すぐに追撃するつもりで、飛び立つ小鳥へと照準を向ける。


 このアクセレーターが起動している緩やかな時間の中で感心する。


 ARターゲットが小鳥の進行方向前方にズレて表示されるのだ。

 着弾時間と対象物の移動スピードを演算表示しているようだ。

 さらに、ARターゲットは命中率により色や形が変化する仕様だ。

 芸が細かい、、、


 オレは吸い付くように合わせられた照準から、数ミリ意識的にズラして発砲する。


===バッァンッ!!===


 弾丸は飛び回る小鳥より数センチ横を通過したようだ。

 たぶん、そのまま撃っていれば命中かそれに近い精度だったことだろう。


 「、、、すげぇ。自分が人間じゃねぇみたいだ」


 思わずそんな感想をもらしてしまった。

 だが、そう思っても仕方がない。

 これでは完全にアンドロイドだ。


 <ゴメン、ぺーはん。ちょっとやり過ぎてもたかも、、、流石に気持ち悪いかな?>


 しゅんとするサポ助。


 「オレがぁ、ガ○ダムだぁっ!!」


 <へ?>


 「ぐははは、なにヌルイィィこと言ってやがんだっ!自身のモ○ルスーツ化っ!!全然OKだ!むしろもっと逝こう!青く眠る水の星にもっとですぅ!変形もファンネルも標準装備しようぜっ、ぐへへへ」


 錯乱した。


 <アホか、変形したらバッキバキになるわ。けど、ありがと。ぺーはんがそう言ってくれたらボクも助かるわ。うっしゃ!ドンドンいこか>


 オレはタバコを抜き出し、火をつける


 「ふぅー、、、、」


 コクピット画面のような視界には、AR表示されたナビが近くの獲物の場所を教えてくれる。


 「マジで最高だ」


 そんな呟きをもらして、森の奥へと進んでいった。




 数時間後



 「そこっ!、、、三つ、、グハハハ。当たれっ!弾幕薄いよっ、なにやってんのっ!ギャハハハ」



 完全に遊んでいた。


 ARナビとマップレーダーによる周辺完全把握。

 射撃の破壊力に加えられた精密な先制攻撃。

 そして自身の運動制御により、回避行動の最適化。


 ゴブゴブ相手にいろいろと実験をしてみたが、これはもう本物だ。

 全く、危なげを感じない。

 調子に乗ってグイグイ進んでいると、木の根に足を引っかけて転けてしまった。


 「痛ってぇ~、、、サポ助、こんなんは助けたり出来ねぇのか?」


 <出来るよ。けどな、もうそろそろ気引き締めた方がええかと思て。それにぺーはん明日のこと考えてる?スペック上がっても、体力やフィジカルが向上した訳やないんやで。恐ろしい筋肉痛が待ってるよ>


 そりゃそうだ・・・

 確かにそんなこと考えもしなかった。


 「ふぅー、、、そだね、はい慢心してました。反省。初心大切。オレ昨日殺されかけた」


 その場に座りながら、タバコを吸って反省する。


 <うん、それくらい臆病な方が長生きするよ。でや、そんなぺーはんに報告や。まだだいぶ遠いから詳しくは分からんけど、11時の方角に人が数名とそれ以外の反応が多数あるんよ。状況からして多分パーティーが敵に囲まれてると推測出来るけど、どうする?>


 これまでハンター達が戦っている様子は何度か見てきた。

 ゴブゴブ相手では流石に危険だとは思わなかったが、複数を相手取る時にはダメージを受けている程度だ。


 別に英雄願望や功名心でここにいる訳ではない。


 ハンターは自己責任。

 力量を弁えずに奥まで進んだ結果、囲まれてしまっても自業自得だ。


 だが、知ってしまっては寝覚めが悪い。


 「ふぅー、、、、誘導した癖に。取り敢えず様子だけは見に行こうか。それからどうするかは決めるということで」


 <ゴメンね。そう言うと思たわ>


 ヨッコイショと立ち上がりながら、視覚に現れたナビに従い、現場へと急ぐ。




 「はぁ、はぁ、、、っ!、マジでっ」


 出来る限り急いで現場へと駆けつけてみると、崖を背にしてオークの集団に囲まれた兵士達がいた。


 傷つきボロボロの兵士が4人、固まって中央の人物を護っている。

 それを取り囲むオークは3匹、ゴブリンが5匹。あと一際巨大な怪物がその背後に備えていた。


 駆けつけるまでの間、距離が近くなったことでこの状況までは掴んでいた。

 だが、未確認反応が多く、実際に視認したことで驚愕する。


 オークは身長2mのプロレスラーのようなガタイだ。

 イノシシのような顔に、決して立派ではないが、鉄製の鎧や槍を装備している。


 そして巨大な怪物を鑑定ステータスで覗いてみれば、種族はトロールのようで5mはありそうな巨体だ。

 樹木のような棍棒と、皮や木製の装備で身を固めている。


 ぇぇぇ、、、怖いんですけど。


 オレは集団の斜め後方に現れたことで、まだ誰にも気付かれていない。

 以前オーガを殺れたことから、デザートイーグルは奴らにも通用するだろう。

 だが、あのデッカイ人達に立ち向かうには、結構勇気がいる。

 どうしよっかなぁって躊躇していると、一匹のオークが叫んだ。


 「グハハハ、いい胸してやがるブ。メスの臭いがキツくなったブッ。犯されるの想像してオメェも興奮してやがるブか!?ギュハハハ」



 ・・・GOっ!


 オレは集団の背後より、トロールの膝裏を狙って乱射した。


 「ギャアアアアアアッッッ!!!!」


 大音量の悲鳴と巨体が倒れる震動が響く。


 「どうしたブッッ!!」


 突然トロール倒れたことで場は混乱する。

 さらにトロールは痛さのあまり、のたうち回りながら味方を巻き込み暴れている。

 その舞い上がった砂埃で視界の悪いなか、オレはゆっくりと集団へと近付いて一匹ずつ確実に射殺していく。


 銃声と絶叫が響く。

 冷静に、慎重に、確実に、と自分に言い聞かせながら作業として進めていると、視界の端にアラートがとんだ。

 オークによる投げ槍だ。

 しかし全方位サポ助がマップレーダーを使用しながら監視しているので、オークがその動作に移った瞬間、予測攻撃軌道がAR表示される。

 アクセレーターが働く緩やかな時間のなか、まだオークは槍を構えてスローバックに入ったばかりの段階だ。

 オレの動きが速ければ、未然に撃ち抜くことも出来るのだろうが、ここは無難にかわしておく。


 タバコを抜き出して火をつける。


 「そんな、すり抜けたブッ!?、、、オ、オメェっ!なにモンだっ!?なにしやがったブっ!」


 投擲したオークは狼狽え、鉄の盾を全面に構えて怯えながら問いかけてきた。


 オレは投擲ラインを最小限で避けて、特に慌てた素振りもしなかったので、オレがかわしたようには見えなかったようだ。


 「フゥー、、、そんなことより、オマエ等って、そのぅ、、、やっぱ、人間のオッパイに興奮したりすんの?」


 大切なことだ。

 ここは紳士として確認しなければならない。


 「ブッ!?・・・なに言ってんだ?んなの大好物に決まってるブッ!噛み千切るとモキュモキュして美味しっ、なッ!」


 オレはデザートイーグルを発砲した。

 しかし、ワザと前面に構えられた鉄の盾へと撃ち込んでみた。


 最悪だ

 聞くんじゃなかった。

 コイツ等、やっぱ別種族だわ。

 敵ね

 家畜、兼、オナホールくらいにしか見てねぇな、コリャ。

 

 「なんだブ?驚かせやがって、だが、これでオメェの攻撃は効かな、ブゥッッ!!」


 オレは僅かに見えていた右耳を撃ち抜いた。


 やっぱり鉄製の防具などは、弾いてしまって貫通しない。

 これは弱点だな、オレの。


 汚い絶叫が響くなか、さらに太股、二の腕、足の甲、わき腹などを撃ち抜いていく。


 けどまぁ、これだけ正確に撃てれば弱点にもならないけどね。


 「オメェッ!オメェェ、止めろっ!!オレ様は[アコウ軍]五氏族が一人、ヨシツナ様の直轄部隊だブゥ!!こんなことしてタダで済むと、」


 眉間を撃ち抜いた。

 そんなダルマ状態で凄まれても、どうやって死体が喋るんだって話しさぁ。


 「それに、オメェって連呼すんなよ。ちょっとビックリすんだよ、それ」


 ふぅー、と一息つきながら周囲を確認する。


 オレが射殺した、オーク2匹にゴブリンが3匹。

 トロールに潰されたゴブリンが2匹。

 どさくさに紛れて、護衛兵士がオークを1匹、背後よりしとめていた。


 後は駄々をこねた子供のように仰向けで暴れるトロールと、それを警戒して取り囲む護衛兵士たちだ。


 ゆっくりと近付いてみると、トロールの顔は小屋くらいの大きさがあり、流す涙もバケツくらいの水量だ。

 どうやらトロールは余り知能が高くないのか、幼児のような痛がりかたで少しだけ罪悪感を感じた。

 しかしよく見ると、首にぶら下げられたネックレスには、人の生首や足などが飾られており、結局オークと同じなんだと銃弾を何発も撃ち込んで射殺した。




 「ふぅーー、、、」


 タバコをふかしながら、安堵しつつもまだ警戒を崩さない兵士達へと向き直る。


 さて、いい乳しているのは誰かなぁ~

 女性の兵士さんかなぁ~

 あれ?

 全員男じゃん。

 では、その護衛対象の方かぁ

 あ、やべ

 これってテンプレじゃね?

 ヒロイン候補じゃね?

 やっぱ、異世界美女とシッポリお近付きに・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・普通に、おばちゃんじゃん


 50代くらいの小太りな成金ババァじゃんっ

 確かに、、、巨乳ではあるけれど


 放心状態でいると、成金ババァはお礼を言いに歩み寄って来た。


 「この度は危ないところを助けていただき有り難うございます。妾は、」


 「・・・オオォークゥのバカヤロウッッッ!!」



 我慢は出来なかった、、、








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ