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11:憧れは理解から最も遠い感情だよ








 おじいさんとの馬車での道のりは、とても穏やかな時間だった。


 ささくれた心は平静を取り戻し、様々な疑問に答えてくれるおじいさんのおかげで、この世界の常識を随分と知ることが出来た。



 整理してみた。

 

クラスについて:

 クラスとは、街に存在する職業クランにて、洗礼を受けることで取得することができる。


 戦闘職クランでは戦士、格闘、魔法使いなど、

 商業クランでは商人、交渉人、料理人など

 生産者クランでは鍛冶、細工、農業など


 基本、成人すると自分の得意分野に合わせて洗礼を受ける。

 それにより身体能力が上がったり、様々な技能を取得したりするのだという。


 (パラメーター付加に、初期スキル取得ってことね)


 また、上位技能はギルドの高レベル取得者にお金を支払って教えを請うらしい。

 その際に習得出来るかどうかは、本人の技量次第なんだとか。


 (新たなスキルはレベルによる自動取得ではない。また上位スキルは一定の熟練に達していないと取得は無理ということかな)


 クラスの変更は自由だが、上書き洗礼には桁の違う大金が掛かることと、熟練度が初期化するので余り気軽に行うものではないらしい。


 ただし、一度身についた技能は引継出来るみたいだ。


 (スキルの引継はデカいな。いよいよ将来設計が楽しくなってくる)



ランクについて:

 成人の平均ランクは[E,D]で、訓練を受けた兵士などで[C]、その中でも一流と呼ばれるのが[B]、[A]ともなると国を代表する人材なんだそうだ。


職業について:

 職業はクラスの延長となることが一般的だが、自身がそれを名乗り、周りの人間がそれを認め始めると自然と記載されるらしい。


補足:

 やはり[LV][ポイント][称号]などのステータス情報の認識はないようだ。

 しかしクラスによる恩恵から察するに、ステータスとして視覚化、数値化出来ていないだけで、内容は存在していると推測できる。


現在の状況について:

 いま馬車で向かっている[コーヴァ]という街は、鬼族の国との防衛都市として有名で、国境付近の戦闘や討伐依頼が絶えず、一攫千金や功名心の高い若者が集まるのだという。


 その際、領主の軍に志願し安定の定額収入を求めるか、討伐ギルドに所属して不安定だが、実力に合った大きな収入を求めるかで別れるのだという。

 またギルドでは依頼や情報提供、素材や討伐IDの換金を行っている。

 基本パーティーを申請して活動するもので、ソロでの活動は性質上の危険性ゆえに、余り見かけることはないそうだ。


 その他、基本的に人族がこの地域には多いが、様々な種族が共存している。

 

 大体想像通りではあるがルールや状況を理解することで、方針や対策が組めるというものである。


 (昨晩とはエライ違いだ!おじいさん有意義な時間をありがとう)




 そんな自分勝手なことを考えながら後方の荷台へと移動し、ステータスをオープンする。

 他人に見えないのは確認済みだが、落ち着いて後回しにしていた[最適化]の結果でも検証してみよう。




===============

アップデート完了のお知らせ

バージョンアップによる新機能により、簡易知能を取得。



我が名は、ステーシア・・・


我は汝、汝は我・・・・・

貴殿の情報を司る神にして、悪魔のごとく操、、、

、、、、、、、、、、、、、、、

、、、、、、、、、、、、

、、、、、、、、、、

===============




 オレは、ステータス画面を閉じた。




 「・・・・・」

 タバコに火をつけ、空を見上げる。




 気を取り直し、もう一度ステータスを表示する。



================

我が名は、ステーシア・・・


我は汝、汝は、、、、、、

、、、、、、、、、、

、、、、、、、、

================




 再度、ステータス画面を閉じる。




 「・・・・・・ふぅー・・・」


 ・・・ツッコむ、タイミングを逃した。

 いろいろと言いたいことはあるが、ここは敢えてなにも言うまい。



 ステータス画面を表示する。


==================

・・・我が名は、ステーシア

我は汝、、汝は、、、って、


・・・なぁ?

その、毛虫見るみたいな目線、やめてくれます?

めっちゃ、やりにくいんやけど

==================



 「ふぅー・・・意志疎通まで出来るのか」



==================

当たり前やっ!

オレ様を誰や思っとるんや!

ステーシア様やぞ

オレ様に出来ひんことは、、、って

待てっ!

待て待て、殴っても割れへんよ

無理ね、無理やから、、、ゴメン、無理やからっ!

ええ加減、殴るのやめよ、なっ?

==================


 「フゥー・・おい?スペーシア・・・お前、なに?」


 デンプシーロールばりの拳を止め、当然の疑問を投げかける。



==================

それ、車なってもぉてるな・・・

スペーシアちゃうよ、ステーシア、な。


まぁけど、初登場でテンションあがったんは認めるわ。

けど、基本人格はジブンやからな?ジュンペイはん。

その辺ちゃんと自覚しても、、、って

待てっ!

待て待って、銃口向けるなっ!

これはしゃーない、事実やもん!

すぐキレんなや、ちょっと怖すぎるでアンタ・・・


そんなことより、ボクのことやったね。

固有仕様[最適化]さんがな、あの神格の高いスキルを廃棄すんのはもったいないから、[アカシックレコード][万物創造][森羅万象]あたりをベースに、ナビゲーション知能を作ろう思いはぁってん。それがボク。ステーシア。分かりやすいやろ?

==================


 「ふぅー・・・もとが劣化版だったからか」


=================

ちょっと、ボクを残念な子みたいに言うの止めてくれる?

何度もいうけど、ボクはジュンペイはんの人格から派生してるの。

言うたやろ?

我は汝、汝は、、、って

待てっ!

待て待て、

だから、閉じようとするな!

それ、

そういうとこっ!

悪い癖やで、それ!

臭いモンに蓋しても、なんも解決しぃひんよ

向かい合お

ちゃんと、向かい合お

な?

=================



 「ふぅー・・・バージョンは戻せないのか?」



==================

シレっと全否定せんといてくれる?

言うなれば、相棒・・・

相棒のそれよ

仲良うしようや

な?

==================



 なにやら面倒臭い展開になってきた。


 「ふぅー・・・相棒ナビなら萌えキャラが良かった・・・それはそうと、前のようにステータス画面は出せないのか?」



==================

もちろん、出せるですです♪

自己紹介にチャットしてただけだもん

せっかちさんだなぁ、マスターは。プンプン

ではぁ~、マスターがこちらを希望するのでしたらぁ、ステちんもぉ~こっちの口調で合わせるねぇ~。

あっ、ところで文面を読むのが面倒でしたら、脳内会話が可能だよ☆

べ、別にアンタの為じゃないんだからねっ!

ちゃんとオンオフできますから、安心していいニャ。

==================



 「なんかキャラが定まってない感はするが、関西弁のオッサンよりは良いな・・・確かに読むの面倒だし、その脳内会話モード始めてくれ」


 <了解ですです♪ではマスター、改めましてヨロシ、、、>


 「待てぇぇっ!声、オッサンじゃねぇかっ!!」


 思わず荷台の上で叫び、立ち上がる。

 それに合わせ、馬車を運転しているおじいさんがビクッとする。


 <そらそうや、口調は変えられても声色まで変えれる訳ないやん>


 シレっと開き直るステーシア。


 「ぁああ、殴りたい・・・実体だせぇ!ボコボコにしてやんよ」


 <ボクは君の中さ、ずっと一緒だぞ♪>


 「殺すっ!ゼッテェいつか殺す」


 <あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ・・・フフフ>


 「ぐぅぐぐぐ・・・なんで、よりによって、こんなオッサンキャラ・・・」


 OTZのように、打ちひしがれ膝をつく。


 <まぁまぁ、そう悪いことばっかりちゃうで。なんつってもボクはアンタのサポートやねんから。これでもユニーク機能やで。取り敢えずステータス見てみ>


 脳内にステーシアの声が響くと同時に、目の前には見慣れたステータス画面が現れた。



============

LV21 ジュンペイ 32歳

クラス:なし

職業: 無職

フィジカル:E

メンタル:D

称号:[招かれざる者][ジャイアントキリング]

   [対集団×20]

固有仕様:[最適化]

     [サポートシステム(劣化版)」

固有スキル:[リロード]

ポイント:590P

スキル:

装備:デザートイーグル50AE

   ボロボロのYシャツ

   ビリビリのスラックス

   殺傷能力のある革靴

============



 「劣っ化版じゃねぇぇかぁっ!!」


 形振りかまわず、全力でツッコミを入れる。

 また、おじいさんがビクッとする。


 <あれ?マジで!?知らんかった・・・これ以上進化する余地があるとは、末恐ろしい子、ボク・・・>


 かなりのポジティブ思考のようだ・・・

 こういう手合いには、勝てそうにない。


 「ふぅー・・・分かったよ。これから出しゃばらん限り、オレはお前を認めることにするよ。まぁ、こちらこそ宜しくな・・・ところで、そのステーシアって名前は確定なのか?呼び辛いうえに、イメージが違い過ぎんだよ」


 <ええぇ~、昨晩めちゃめちゃ考えたのに!カッコええやん!ピッタリやんっ>


 オレはタバコを投げ捨て、少しだけ考えて言い放つ。


 「ステーシアにピッタリなのは女神さま。お前は[サポ助]な。サポートと助っ人から取ってピッタリだろ?」


 <ええっ!イヤや、そんな(笑、みたいな名前っ!もっとこ~、あるやん?本田センシングとか格好いいサポート的なんあるやん>


 「うっせぇ、サポ助で十分だ。そんなことより、どんなサポートが出来るのかとか、お前の能力を詳しく説明しろ」


 <撤回を要求する~>




 それから、防衛都市[コーヴァ]までの時間の大半を、このやり取りだけで無駄にすることとなってしまった・・・







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