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仕事

作者: アシコ

「お母さん!あの人達は誰?」

「あの人達はね、いらなくなった人なのよ」

「いらなくなった?」

「そうよ。悪いことをしたり、必要じゃなくなった人達が工場にいれられるの」

「そのあとはどうなっちゃうの?」

「それはねーーー」


ピピピピッ

目覚まし時計が鳴った

子供の頃の夢をみていた気がする

はぁ、いつもの癖でこの時間に起きてしまった

俺は昨日会社をクビになってしまった

目も覚めたし、これからまた寝ようなんて気にもなれない

何をするでもなく、ただのんびりと1日を過ごすか

これからこんな日常が毎日続いていくのか

そんなことを思っていたら、チャイムが鳴った

誰だ?またセールスマンかなんかだろ、面倒だなぁ

「おはようございます。私は人材リサイクルのものです」

「人材リサイクル…ってあの工場の!?」

「はい、そうです。あなたは昨日、会社をクビになったとか」

「えっ!あぁそうですけど…」

「次のお仕事は決まっていますか?」

「いや、まだですけど…」

「それは良かった!では、早速工場に向かいましょう!」

「えっ…ちょっと待っ…」

俺は無理矢理トラックの荷台に乗せられた。中には何人か乗っていたが、誰もこの状況を理解している人はいなかった。

そして、なんの説明もなく俺達は工場に連れてこられた。


工場に着き、荷台から降ろされた俺達は真っ白な作業服を渡され着替えるよう指示された。

1人1人に部屋が用意されていたが、机と椅子とベッドだけの独房のような部屋だった。

作業服に着替えた俺は、ベッドに座りながら部屋の中を見回していると、どこからかさっきの人の声が聞こえた。

「え~、あなた方は少しの間ここで働いてもらいます。お食事もこちらでご用意させていただきますので心配はいりません。では、しっかりと人のために最後まで頑張ってください」

これはいい、仕事もできて食事もついてくる。ウキウキとした気分で部屋を出て仕事場へ向かった。

仕事の内容はとても簡単なものだった。流れてくるプラスチックの中に混ざっている白い布のようなものを取り除くというだけの仕事だった。

このプラスチックは服や食器、磨けば鏡にもなるという日常生活には欠かせないものらしい。

単純な仕事をしているだけなのに、人の役に立っているようでとても充実した気持ちになっていた。

食事もとても美味しく、1人暮らしの俺では食べられないものばかりだった。

初めはいろいろと心配だったけど、こんなにも至れり尽くせりでいいところに呼ばれたもんだ。


何ヵ月経った頃だろうか、あの人が声をかけてきた

「あなたは一生懸命働いていますね」

「ありがとうございます。こんなにも人のために働いているということを実感できる仕事はないですよ!」

「そうですか。あなたはもっと人のために働いてみたいとは思いませんか?」

「もっとですか?」

「はい、今以上に人の役に立つ仕事ですよ。あなたの働きで市民の生活が充実したものになるのです」

「そんな仕事を俺が…お願いです!是非やらせてください!」

「わかりました。では、指示があるまで部屋で待っていてください。」

俺は、今まで以上に人の役に立つ仕事ができることにワクワクしていた。

人のためにと思い頑張っていけど、正直あの作業に飽きていた。だが、前の会社よりはマンネリではなかった。


ついに、新しい仕事をする日が来た。あれから、3日ほど部屋で待っていた。

俺のように人の役に立ちたいという人が大勢いて、その人達が適任かどうかを調べる検査に時間がかかっていたそうだ。

検査は、今までの仕事に取り組む態度や、前科があるかないかを調べるというものだった。

何故そんなことを調べるのかと聞いたら、

「これは、心の綺麗な人しかできないものだから」

ということだった。

検査に合格した俺は、大きな部屋に連れてこられた。中には何人かいて、みんな新しい仕事に胸を弾ませていた。

10人ほど集まったところで、部屋にあの人が入ってきた。

「みなさん、合格おめでとうございます。これからは、市民の一番近くで役に立ってもらいます。しかし、今から行う作業は危険を伴いますので、そちらの椅子に拘束させていただきます。ご了承ください。」

拘束すると言われ初めは驚いたが、人の役に立つ仕事なのだからと一列に並んだ椅子に座り手足を縛った。

「みなさんありがとうございます。それでは、お仕事頑張ってください。」

その人の話が終わると椅子が動き始めた。床がベルトコンベヤーになっていて、どんどんと前に進んでいった。

しばらくして、大きな筒の前で止まった。すると、あの人の声が聞こえてきた

「みなさんはこの筒を通って生まれ変わるのです。あなた方は悪事を働いたり、社会から必要とされなくなった人なのです。なのでここで働き、最後に少しでも人の役に立つことができたのだから喜びなさい」

1番前に座っていた人の椅子動きだしが筒の中に入っていった。すると、筒の中からあのプラスチックと少しの白い布が出てきた。

「あの作業服も全部プラスチックに変わらないものかな」

あいつがそんなことを言った。

取り除いていたあの布は俺達が着ていた作業服の破片で、あのプラスチックは人だったっていうのか…

そのとたんに吐き気がしてきた。今まで俺達はこのために働かされて、食べさせられていたということに気づいた。

早くこの拘束されてるやつをなんとか外して逃げなくては!

しかし、どう足掻いても拘束は外れず、とうとう俺の番になってしまった。

「君は今までよく働いてくれました。これからも人の役に立ってくださいね。」

最後その言葉を聞いて俺は消えていった…

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