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へっぽこ聖女の魔物討伐  作者: 滝皐
王都招集令状
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~旅立ち~

短編のお試し小説として投稿した、「へっぽこ聖女の魔物討伐」を連載用に書き直した作品になります。可愛い聖女様の姿を書こうという気概でやって行こうと思いますので、皆さん気長に付き合ってください!


※更新は不定期です。一気に更新するかもしれませんし、一か月放置するかもしれません。ご了承ください。

 世界には魔物が溢れかえっていた。それによってなんか村とか街に被害がでていた。

 そんな現状をどうにかしようと立ち上がったのは、辺境の村に生まれた一人の少女だ。

 彼女は生まれた時から神様に祝福され、特別な力を持ってた。それゆえ彼女は聖女と呼ばれ、世界のために魔物を討伐するための旅に出るのです。


 ♢♢♢


「嫌です!」

「そこをなんとか!」


 辺境の村、アレンジア。そこの教会に一人の少女は居た。彼女の名前はルミア・アストレア。この村の修道女であり、神の使いである聖女だ。


「絶対に嫌です!」


 今彼女は物凄い剣幕で村長のお願いを拒否している。本来聖女であるなら、村人たちの願いを聞き入れるのが普通である。しかし彼女は固くなに首を縦には振らなかった。


「私は外になんて絶対出ません! 外には魔物がうじゃうじゃいるんでしょ!? そしたら私殺されちゃいます!!」

「大丈夫です。腕利きの戦士を連れてきています。どうか王都の招集にご参加ください」

「お断りです!!」


 そっぽを向く彼女に、さすがも村長も心底困ったような顔をする。


 王都の招集。これは世界にいる勇者、聖女といった。魔物に対抗しうる力を備えた人をまず一同に集める令状だ。これに選ばれた者は、何においてもこれを優先する義務があるゆえ、王都に行かなければならない。

 しかしここは辺境も辺境。王都に行くまでにかなりの距離がある。険しい道のりはないにしろ、馬車でも丸一日はかかる。その道中、強くはないものの魔物も出る。

 その程度の雑魚、とは言ってはいけないのだが。その程度のクラス下位の魔物は聖女の敵ではない。なのに何故ここまで魔物に恐怖しているかいうと、聖女は魔物という存在が未知過ぎるため、「これは悪魔の所業だ、きっと呪われる!」と本気で思っているのだ。


 それゆえ彼女は、この16年間一歩も村の外に出たことはない。


「そもそも私が行ってしまったら、誰がこの村で神に声を届ければいいのですか!? 私が居なくなれば、ミサだって開けませんよ! それでいいんですか!?」

「それはそれ、これはこれです。それに正直申し上げますと、聖女様がいらっしゃらなくてもミサぐらいならシスターにも開けます」

「それを言われると辛いのですが……」


 この教会には、聖女を除き二人の修道女が存在する。一人が齢60は越えるであろうベテランで、聖女を育てた張本人でもある。神の教えは全てその人に教わっているので、聖女にとっては大先輩だ。


「話は聞かせて頂きましたよ? ミスター・グラン」


 教会の入り口から、一人の女性が中に入ってきた。彼女はこの教会の二人目の修道女。シスター・メリア。聖女の姉弟子に当たる人だ。


「これはこれはシスター・メリア。今日も相変わらずお美しいですな」

「グランさんもお元気そうで良かったです。もう腰の調子はよろしいのですか?」

「この通りピンピンしておりますよ。それもこれもシスター・メリアの薬のお陰ですな~」


 そんな日常会話を挟みつつあるシスター・メリアに、聖女は嫌な顔をしながら尋ねる。


「それで、どうしてシスター・メリアが来るのですか?」

「あら、ミス・ルミア。困っている信徒がいらっしゃるのに、手を差し伸べないシスターは居なくってよ? ミサなどのもろもろの件、既にシスター・アルケミアに通してあります。これ以上駄々を捏ねたって無駄ですよ? ミス・ルミア」

「……オババ様の回し者め」

「何か仰りましたか? 年中引きこもり」


 聖女と修道女らしからなぬ険悪な雰囲気に、さすがの村長もたじたじである。だかこれで聖女がここに留まる理由はなくなったに等しい。


「取りあえず行って見ればよろしいじゃないですか。そのための防具もこちらで揃えたのですから」

「すでにそこまで進んでいるんですか!?」


 驚愕の声をあげる聖女に、シスター・メリアと村長は首を縦に振る。


「儂が直々に王都に出向いて、一級品防具と魔道具を買え揃えてきました。儂の家に来ていただければ、直ぐにでもお見せしましょう」


 さすがにここまでされてごねるのは品位が下がる。そう思った聖女は、渋々と言ったように村長の家に行くのだった。


 ♢♢♢


「どうですか~?」


 村長に呼ばれ、着替え終えた姿をお披露目する。アーマーの類はさすが一級品ということもあり軽く。このまま野山を駆け巡れるくらいだ。服もわざわざ拵え、破れにくく汚れにくい作りになっているらしい。

 まさに戦乙女といった出で立ちに、聖女は照れて俯いた。


「似合っておいでですよ、聖女」

「ありがとうございます」

「それとこちらが……粛魔の剣でございます」


 渡されたのは細身の剣だった。


「私、剣なんて握ったことありませんよ!?」


 渡され戸惑う聖女に、村長は「大丈夫ですよ」と優しく落ち着かせてくれる。


「これはもしもの時の自衛ようです。あなたは普段通りしていればいいのです。魔物のことは戦士に任せてしまいましょう」

「……そういえば、腕利きの戦士が居ると聞きましたが、どちらにいらっしゃるのですか?」


 村長は忘れてたと言わんばかりに、慌てて二階に上がって行く。降りて来ると、一人の男性と一緒にいた。


「彼がこの度、聖女様の護衛をすることになりました」

「戦士です。よろしくお願いいします」


 ぼさっとした髪に整った顔立ち。防具という防具は付けておらず、簡素は服装で背中に大剣を背負っているだけだった。


「この村の聖女である、ルミア・アストレアです」


 聖女は手を差し出し、戦士はそれに握手をする。


「さっそくですが聖女」


 手を握りながら、戦士は切り出した。


「王都の召集までもう時間がないのでさっさと出ましょう」

「えっ?」


 そう言い終わると、戦士は聖女を肩に担ぎ村長の家を出ようとする。


「ひゃあ!! ちょっと、どこ触っているんですか!! それと心の準備が!!」

「そんな準備してたら三日はかかりますよ。それじゃあ村長。行ってきますね」

「はい行ってらっしゃい」


 村長に挨拶を済ませた戦士は、そのまま家を後にする。泣きながら手を伸ばす聖女と共に。 


「待って! お願い、助けてーーーー!!!!」


 かくして聖女の旅は、戦士に担がれて始まったのだった。

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