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騒乱の月夜(1)

時は初冬、昼間ならともかく夜になると吐く息も白くなるような寒さの中、城門の守護を任された騎士は辺りを照らす松明へとかじかむ手をかざしていた。



「ふぅ…寒くなって来たな……交代のやつらはまだか?」


「まだ交代したばかりだろう?そう嘆くな、確かに寒いだろうがこれも俺たちの大事な仕事なのだ。」

片や真面目な男だがもう一人はあまり積極的では無いようだ。仕切りに手を擦っては寒いと零していた。


「うぅ…分かるけどよう、こんな時間に通る奴らなんて普通いねぇぜ?偶に街商人が通るくらいだ」


「馬鹿者!火急の伝令が来るやもしれぬだろうが!黙って周囲を警戒せんか!」


「ヘーイ…ん?」

お叱りを受けて少し拗ねながら周りをふと見渡した男は遠くから近づいて来る明かりに気がついた。

(こんな時間に門に来るものがいるとは…しかもあの速さ…馬車か?)



見る間に到着したのはやはり馬車であったがこれもただの馬車で無く煌びやかな彩色がなされており、明らかに街商人などが乗れるはずもなかろう豪奢な物であった。

乗っているのは下位か上位かは知らないが貴族に違いなかった。


だが相手がどのような相手であろうとこんな時間に門からでる輩がまともな筈が無い。

貴族の相手は嫌であるがこれも仕事、と二人は来たる馬車を止めに掛かった。



「止まれ!このような時間に何用で都外へ参られる?」

そう声を掛けた門番に帰って来たのは求める返答ではなく、何処より放たれた矢であった。


闇夜より放たれた矢は更に黒く塗られておりまともな目の持ち主では気づくことはできないであろうものだった。


「!?」

喉へと吸い込まれた矢は門番に助けを呼ばせることなく絶命させた。



更に続けて放たれた矢がもう一人の門番を射殺ろした事を確認すると、御者はそのまま馬を走らせ城外へと消えていった。





「情報通りか……ザブ、ゴブ、馬の準備はいいか?」

駆けていく馬車を城門の外、城壁の影から見送った結城は背後に迫る影に問いかけた。

「バッチリです姉貴!」「バッチリです姉貴!」


「今は姉貴じゃねえんだがなぁ……」

影から出た結城は全身黒い服に身を包み腰に長剣を刺しており、その顔は何時もの可愛らしい少女のそれではなく中性的な男性の顔である。

何故かは分からないが結城は月光の下では姿が元の男に戻るのだ。

事実、遮るもののない空から白い月光が城外の平野を薄らと照らしていた。

動体視力だけでなく夜目もきくようになった結城には、昼と変わらなくさえ感じられるほどである。


「おい……何頭用意した?」


「大丈夫です兄貴!ちゃんと兄貴と姉貴の分の二頭用意しやした!」「しやした!」

そう言って不安そうに問い掛けるエヴァンに胸を張ったのは、エヴァンの部下である双子のザブとゴブであった。


「おい!お前らの分はどうした!?」


「「あっ!?」」


「……仕方ない、俺とエヴァンで後を追う、お前達は守衛を呼んでこい」


「アイアイサー!」「アイサー!」

駆けていく二人を見送りながら結城とエヴァンはため息をついた。

結城は近くに用意された馬の頭を一撫でするとその背にまたがり、同様に乗馬したエヴァンを一見して馬車を追った。


今回の目的は一つ、全戦役の裏切り者にして処罰を待たずして逃げ出したタリス公の抹殺である。









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