プロローグ
かつて、一人の英雄がいた。
その名は、ゼロ・インフィニティ。
彼の英雄伝は『ゼロ物語』と言われ、彼が死んだ後も千年に渡り語り継がれている。
しかし、この物語は作者不詳である。千年経てば中身は多少変わるが、いつもこの一言で終わる。ーーーそして彼は英雄になった。どこかの誰かがそんな一言で終わらせた。
一様、戦いの記録なんかもわずかながら残されているので皆、彼が英雄であることを信じている。
だがオレはそうは思えない。
ゼロは英雄である前に一人の騎士であり、∞一族という変わった血筋を持つ者である。
彼の時代、∞一族は存続の危機にあったらしいが、彼ともう一人の人物によって一族復興の土台を築き上げ、千年経った今では世界人口の三割に一族の血が通っている。
そして彼は騎士として市民を守るための自警団を作った。
名を『零の騎士団』。現在は自警団ではなく、ギルドとなっている。
つまり市民様から報酬を貰っているわけだが、それ以外にも様々なVIPの護衛やらなんやらの依頼も受けており、世界人口三割になるほどには栄えている。
ギルドには一人のマスター、零の騎士団としては団長がいる。零の騎士団では、それは正当なる血統を持つ者にのみ代々与えられており、現在十九代目である。
全く余計なことしてくれたよな。
昔は一つのでかい大陸のみだったみたいだが、ゼロの一つの戦いによって大陸分裂を起こし、それぞれの大陸や島に文化があり、それぞれの国として発展している。
本によると、手を使わずに物を動かすことが当たり前になるほど科学が発展している国や千年以上生きる炎人がいる世界一の大陸を持つ国、戦いが最高の娯楽となっている四つの島を持つ国。
一度だけ『和国』という国に訪れたことがある。そこには『城』というどの建物よりも高い、『殿様』という一番偉い人が暮らす家があり、『侍』や『忍』という戦士が守っているのを見た。それ以外にも『着物』、『寿司』、『髷』等々挙げたらきりがない程、ファーストカルチャーコンタクトがあった。親父なんか騎士のくせに侍にジョブチェンジするって言って家ごと和国風に変えてしまったことがある。
あ、いや、親父の話なんかどうでもいいんだ。
つまり、オレが言いたいことはーーー。
「零の騎士団二十代目団長なんか継ぎたくねえってことだよ」