製粉統制国家ウドン大帝国
製粉統制国家ウドン帝国、それは人が決められた階級ごとに食べるものが決まっている国。
上層階級はジョウシツなユキのように白いコムギを使ったウドン、中流階級はカンスイを混ぜられた黄色いウドン、下層階級は臭い花を咲かせるソバコを混ぜられた薄汚れた色をしているウドンしか食べてはいけない。
もし、このトリキメを破ったモノには厳しいバツが与えられる。
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『幸福な食卓、心あたたまる素晴らしいウドンをあなたに』
『ウドンを食することは幸福であり、ウドンを食す事のできる人は例外なく幸福なのである』
街中では常にウドンを称える放送が流れている。
「あぁ、トンコツチャーシューカンスイウドンは美味しいな」
私はいつも仕事帰りに食べているショウユカンスイウドンではなく少し奮発して買ったトンコツチャーシューカンスイウドンをすすりながらつぶやく。
「そういえば聞いたか強力、この前ハクマイ派の過激派が一斉検挙されて全員裁判なしに処刑されたそうだ。これでまた平和が戻るな」
同僚の稲葉がウドンの美味しくなるような話をした。
「稲葉、それは本当か!」
私が聞き返すと稲葉は得意げな顔をして答えた。
「あぁ、本当だ。さっきウドン委員会に行った弟から連絡があった。全くウドンを拒否して別のものを主食にしようとするなんて理解できないよ」
「あぁ、全くだ。こんな幸福なウドンを拒否するなんて脳天に何が詰まってるんだよ」
私は呆れたような顔をした。
「何だ、稲葉。お前風邪でも引いたのか?」
私は稲葉の頼んだウドンのドンブリを見るとブヨブヨのイセカンスイウドンが入っているのに気がついた。
「そうなんだよ。最近カラダがだるくてあちこちむくむんだ。だから今日はヤクミの効いたイセカンスイウドンにしたんだ」
稲葉の話を聞いて私はあることを思い出す。
「そういえばお前のおやじさんウドンの食べ過ぎで死んでたよな?」
「そうだぜ。体中がシビれるだなんだ言ってたな。全くうちの親父みたいな幸せな死に方してみたいぜ」
「お前もそれと同じでウドンの食べ過ぎ病何じゃないか?」
私が心配して言うと稲葉は嬉しそうに答えた。
「それだといいな。ウドンの食べ過ぎで死ぬなんて最高じゃないか」
「たしかに」
私は稲葉の言葉に同意する。
それから私は稲葉と話しながらトンコツチャーシューカンスイウドンを食べ進めていく。
「ふー。さすがにこってりのトンコツチャーシューカンスイウドンはキツイな。もう若くないってことかな」
私はだるまのように膨れた腹をさすりながらつぶやく。
「お前はまだ20後半だろ?さてと、お互い食べ終えたことだし行きますか。ウドンマスターお勘定ここ置いておきます」
「また来てくんな!」
ウドンマスターの威勢のいい声を聞きながら私達は店を出る。
そして私と稲葉は店の前で別れた。
「私も健康に気をつけないとな。しかし最近良く喉が渇く」
私はひとりごとをつぶやきら自動販売機でウドンスカッシュを買い、飲みながら家路についた。
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その1年後稲葉はウドンの食べ過ぎで死んでしまった。
死ぬ直前までウドンを食べ続けて本当に幸せそうにしていた。
そして私も最近稲葉のおやじさんのように手足がしびれ始めた。
私もウドンの食べ過ぎで死ぬなんて幸せな死に方をする時が近づいているのかもしれない。