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やっぱりネコさんも若い男の方がイイの? ~運命のカルカン~

作者: イマエサン

5年くらい前に書いたものなので、なか卯の情報は現行のものではありません。

 毎朝、なか卯で朝食を食べていたのだが、最近、そのスタイルに変化が生じた。

 かつての私と同様に、のんきに「納豆定食」のボタンに手を伸ばしている人がいたとしたら、この情報は有用なものになるだろう。


 さて、その情報を披露する前に、スタイルを変えたきっかけを語らねばなるまい。

 そこには深く悲しい出来事があった。

 ネコさんとの別れである。


 ネコさんは、私の住んでいるアパートの近辺に住み着いている猫で、疲れて帰ったときには、「おかえりなさい」と言いながらすり寄ってくる可愛い存在だった。

 そんなネコさんに、私は感謝の意味を込めて、海苔を与えていた。この海苔というのが、なか卯の納豆定食に付いている海苔である。

 首を傾げながら、海苔にむしゃぶりつくネコさんを眺めていると、自然と笑みがこぼれてくる。心の疲れが癒される数少ない日常の光景だった。

 これまで、私の心の安らぎといえば、自宅でテレビドラマを観ながら、「ありえんわー」とツッコミを入れていることくらいだったので、温もりのある安らぎは、比較にならないほど心に染み入った。


 しかし、2か月くらい前から、ネコさんを見掛ける機会がぐんと減った。

 たまに会っても一瞥をしただけで塀を駆け上がっていったり、海苔を与えようとしても顔を背けたり…。


(なにか、気に障ることでもしただろうか。)


 私は、浮気の事実がバレたかも知れないとハラハラとケータイの履歴を確認する中年男性のように青ざめながら、ネコさんの態度の変化の理由を知りたいと思った。

 だが、その理由は呆気なく判明することになる。出勤する際に玄関のドアを開けると、向かいのマンションのベランダにネコさんがいた。隣には若い男がしゃがみ込んで、嬉しそうにネコさんに何かを与えている。


(あれは……カルカン!)


 紫色の缶が印象的な高級感溢れる猫専用の食べ物(※注釈)である。

 なんだかいろんな意味で負けたような気がして切なくなった。


(ネコさん……アンタも金持ちで若い男が好きなんやな。)


 心を委ねていた唯一の存在に見放された絶望感から叫びたくなったが、自宅玄関前でそんなことをすれば住んでいられなくなるので、センターに向かうまでのヘルメットの中で、清水某太郎の失恋レストランを絶唱することでなんとか堪えた。


 かくして海苔はいらなくなった。

 なか卯における納豆定食は、「ごはん、漬け物、卵、納豆、味噌汁、海苔」で三九〇円だが、豚汁定食は、「ごはん、漬け物、卵、豚汁」で二九〇円だ。

 サイドメニューで納豆が百円で販売されているので、海苔が必要なければ、豚汁定食に納豆をプラスすることで「ごはん、漬け物、卵、豚汁、納豆」で三九〇円で食べることができる。

 豚汁は味噌汁と違ってボリュームたっぷりなので、お得感がある。海苔がどうしても必要だったら、家から味付け海苔を持って行けばいい。

 じゃあ、納豆を持ち込めばいいではないか、という至極真っ当な意見も出てこよう。なるほど、そちらの方がたしかに経済的だ。


「申し訳ありません。持ち込みは勘弁してください。」


と言われていなかったら、今でも実践していただけに残念だ。隣の大学生風のチャラ男から失笑されて恥ずかしい思いをしたくなければ、自重した方が良い行為の一つであることは言うまでもない。


[注釈]~カルカンは猫だけのものじゃない~

 随分昔、マイケルJフォックスが車のCMで「カッコインテグラ」というダジャレを口走ってひんしゅくを買っていたが、一方でカルカンは「ネコマッシグラ」というCMで「猫にエサを与えていないんじゃないの?」という疑いを持たれた。


 実際にカルカンを猫に与えてみると、野獣のようにガッツリと食いついたので、逆に引いた。


 そんなに旨いのかと口にしてみたところ、一般的なまぐろの缶詰よりも味が薄く甘くない。

 むしろ、こちらの方が酒の肴にするにはちょうど良い味付けだ。

 いくつか種類があるが、初心者はオリジナルではなく、味わいセレクトから始めた方が抵抗がない。

 味わいセレクトは出汁で煮込んでいるため、非常に食べやすいが、カロリーが100g当たり100。オリジナルはその半分程度。

 酒を飲んで太ってしまうのは、肴のカロリーが高いゆえであるという説も有力である中、このカロリー設定は嬉しい。

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