フルーツポンチ
「ちょっと休憩ー。」
「やったー。フルーツポンチ〜♪」
勉強を始めて早一時間。やっと駿介からの休憩をもらった愛華はすぐにフルーツポンチに手を伸ばした。
「相変わらず、よくやるよな…」
「ほんとねー。でもあたしこれ好き」
駿介が言っているのは、フルーツポンチのフルーツのことである。ただ切ればいいものを、千代子や恭子は星やハート、花など、型でくり抜いて作っている。細かいことを面倒だと思ってしまう駿介は、いつもよくできるよな、と感心と少し呆れの感情が出る。
「まぁなぁ…。」
しかし、なにを言っても普通の切っただけのフルーツよりはこちらのほうが美味しそうに見えたり、よかったりする。さすがに弁当などににんじんが型抜きしてあるものは、同級生の友達に見られると恥ずかしいが。
「あ、そういえばしゅんちゃん、3組の子に告られたんだって?」
フルーツポンチをもぐもぐ食べながら、愛華は駿介を見た。すると駿介は少し眉間に眉を寄せた。
「んー。まぁ。なんで知ってんの」
「女子の噂なんてすぐ広まるんだよ。どこからともなく」
その子と全然関わりがなくても、その子と仲の良い友達から自分の友達、そして自分の友達から自分に流れてきたり。噂なんてあっという間に広がる。
「可愛い子なのにフったんだってねー。もったいない」
「…いいの。それに、好きでもないのに付き合うのも失礼だろ」
「んまぁ、確かにそうだけど」
「いいから、勉強再開!」
食べ終えた皿を机のはしに置いて、さっきの続きの問題集を開く。
考えたらしゅんちゃんって彼女いたことないんだっけ。わりと、かっこいいと思うけどあんまり告白もされないよねー。…あ、でもだからあたしってしゅんちゃんと一緒にいられるのか。彼女いたら、こんな風に一緒になんて、いられないよねー…。
「愛華聞いてる?」
「え?ごめん、聞いてない」
「…素直だな。ちゃんと聞けって。」
「ごめんごめん」
そっか。…そっかーーー。
そしたらこんな関係なんて、終わっちゃう。幼なじみなんて、脆いよな。…まぁでもそしたらあたしも作るしかないか。彼氏。って、簡単に出来たら苦労しないわな。
「…愛華」
「あ、ごめんごめん」
はぁ、と大きなため息をつきながらも、ちゃんと勉強を見てくれる駿介だった。
「じゃあねー、おやすみー」
勉強が終わって愛華が帰る頃には、千代子と聡はもう秋山家にはおらず、恭子と道将は眠りについていた。
「おう、じゃあなー」
もと来た道を駿介は戻っていく。距離という距離もないのに、駿介はいつも愛華を家まで送る。いい、と愛華がいっても、心配だからな、の一点張りである。もう愛華も送ってもらうことには慣れた。
…もう寝ちゃってるな。なんでうちの親と恭ちゃんたちってこんなに寝るの早いんだろ。ーーといっても、もう0時前だ。当たり前といえば当たり前。
「………」
告白されたの本当だったんだなー。なんで断ったんだろ。もったいないなー。
愛華はその告白の話を聞いた時に、3組の子を見に行った。小柄で華奢なその子は、ふわふわしたうさぎみたいですごくかわいかった。…あんな子に告白されたら、普通おちちゃう。そう思った。
「…なーんで断ったのかな、ほんと」
てか今日思ったけど、あたし…。
「恋愛とかって、あんまりしゅんちゃんと話したことないなー…」
そんなことを思いながら眠りについた。




