10年後、
その幼なじみは、今や中学3年生。10年という月日はあっという間である。そして私、桜野 愛華も同じように受験生となっていた。
「愛華、高校どうすんの」
特に約束をしているわけではないが、たまたま帰りが同じタイミングだったので、ついでに一緒に帰る。
「うーん、春高くらいかなと思ってる」
成績はぼちぼち、いい方ではないけれど悪くもない。制服もそこそこ可愛いし、近場にあるからだ。
「しゅんちゃんは決めたの」
しゅんちゃんこと、秋山 駿介。愛華の幼なじみである。
「俺も春高くらいかなーと。親と話したけど、学力的に?」
「なるほどねー。でもしゅんちゃんならもう一個上いってもいけるんじゃない?」
頭はそこそこいいはずだ。私なんかよりずっと。
「上いって下にいるより、下いって上にいるほうがいいかなって思って。」
「そっかぁ」
上の学校いっても、ギリギリのところじゃあダメなのか。それならワンランク下でもトップに近いほうがいいってことね。確かにそうかもしれない。愛華は1人で納得していた。
「じゃあ高校入っても一緒に遊べるね〜」
「いい加減にしろって。俺も暇じゃねぇよそこまで」
「中学入るときも言ってたよそれ。結局遊ぶじゃん。ね、しゅんちゃんはお兄ちゃんだもん」
兄弟がいないから、昔から駿介が兄、愛華が妹のようにして育った。幼なじみとして、兄として、愛華は駿介が昔から大好きだ。
「いい加減兄離れしてくださーい」
「なにいってんのー。離れたら寂しくなっちゃうよ。私に彼氏ができないうちに遊んどかないとしゅんちゃん後悔するよ」
「大丈夫、お前に彼氏は当分できない」
「なにそれひどーい」
そんなことを言いつつも、駿介は少し不安があった。愛華は中学に入って可愛くなった。顔もだが、身体も色っぽくなっていって、学年の中では断トツ。それでも今まで彼氏ができなかったのは、駿介がそばにいたからだろう。愛華だけでなく駿介もまた成長して、整った顔立ちに細身だがほどよい筋力もついた。しかし、これもまた彼女がいなかったのは愛華がいたからだろう。こんな美男美女の2人だと、見ているほうも告白する気は無くなるらしい。
「ね、今日はごはん一緒だよね!何かな」
桜野家と秋山家は定期的に夜ご飯を一緒に食べる。親同士が学生時代から仲が良く、お互いの家も近いところに建てたことがきっかけになったらしい。
「だんだん夏の暑さも無くなってきたからなー。俺は肉食いてぇなー」
「夏はそーめんばっかだったもんねぇ」
そんな他愛もしない話をしながら、2人は同じ方向に向かって帰った。