<七>同窓会でのこと
<七>同窓会でのこと
久子は娘の華絵を伴って札幌での同窓会に出席した。そこには数々懐かしい面々があった。しかし最も会いたかった琉依はいない。当然のこと、娘、華絵と同じ年になっている筈の『百合』さんもいない。
「中川さん。中川琉依さん。今の吉池琉依さん。誰か知りませんか?」
尋ねるたびに同窓生は顔を曇らせた。あまりにもしつこく久子が聞くので当時学級委員長だった人が彼女の様子を伝えてくれた。
琉依さんの夫は事業に失敗して多額の借金を作ったらしい。おまけに高級ブランド品はもともと中国からのコピー品を輸入した偽物品で、全て関税局に没収され、夫は関税法違反の『犯罪』にも手を染めることになった。悪質な金融業者からも警察からも追われる身となった夫は母子を捨て、その姿を消した。
母の琉依も娘の百合も今はどこにいるか分からない。
その話を聞いて、久子は東京に帰る予定を変更した。久子は華絵に伝えた。
「お母さんは明日、昔の友達を捜しに小樽に行ってくるからね。泊まりになるかもしれないけれど、そのときはあなたは続けてホテルに泊まりなさい。昼間は札幌市内で好きに過ごしていいよ。札幌へ戻る前には必ず電話かメールするからね。フロントには連泊するって言っておくから」
華絵はきょとんとしながらも、掌を差し出した。久子が取りあえず一万円札を二枚渡すと華絵の目はきらきらと輝いた。万札を手にしたのはもちろん生まれて初めてだ。
「札幌ラーメン食べに行っていい?」
「いいよ。好きなもの食べなさい。でも、朝食はお食事券があるからホテル内のレストランでね」
「映画とかも見ていい? ブーツとか買ってもいい? スニーカーの先が破れて寒いの。それからセカンドポーチも……」
「だからいいわよ。好きにしなさい。でもお金足りなくなってもお母さん知らないからね。あなたの責任よ。あと、知らない人に騙されてお金渡したりしないようにね」