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<六>飛行機

<六>飛行機


 久子は飛行機がとてつもなく苦手である。華絵を出産する時も親の援助で盛岡に一泊して陸路で北海道に渡った程である。しかし、今回ばかりは飛行機で行くことになった。羽田空港から新千歳空港まで僅か一時間半程度であるが、彼女は羽田空港で手荷物検査を終え飛行機を見ながら目の前の航空機を見て手に汗を握った。

 娘の華絵は『ウキウキ』である。初めて乗る飛行機に期待と感動が入り混じっていた。母の久子は青ざめながら娘に言った。

「華絵。どれがウチらが乗る飛行機?」

「あれじゃない? あの可愛いミッキーマウスの絵の描かれた」と華絵。

 彼女の指した飛行機は国内で間もなくその姿を消すB747機だ。

「違うよ。目の前のあれでしょ。B767」

――あれ? やけに詳しい。やだぁ知ってるじゃん。だったら聞くなよ。

「ん? 何? お母さん」

「今ね。整備してる人ね。整備終わって階段降りながらこっそり首かしげてたよ。私見てしまったの。危ないんじゃない?」

 華絵にも母、久子の様子がおかしいことはわかった。

「お母さん大丈夫?」

「何のこと? 大丈夫よ」

 乾燥している冬の時期なのに、久子の手は汗でびっしょりだ。余程飛行機が苦手らしい。客席に乗り込むと、早速久子は言った。座席は主翼の真横である。

「主翼にリベット打ってる跡がある。ひょっとして一度剥がれたんじゃないかしらほらあそこ」

 久子はオタクのようにやけに詳しい。華絵には意味が分からない。

「今、ガタンて変な音したよぅ。まさかかつて尻もち事故があった機じゃないわよね」

 華絵は母の顔を見た。正面を向いたまま必死で自分を落ち着かせているようだ。

――お母さん。怖いのね。私、初めてだけどお母さん。大丈夫よ。

 飛行機は、娘の華絵が母の久子の手をしっかり握りながら離陸した。


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