<四>華絵の成長
<四>華絵の成長
華絵は小学校の六年間、厳しい苛めを受け続けた。極端に貧乏な家庭の子である上に、親は毎日共働きで担任の教師が呆れるほど子供のことは放ったらかしだったので、苛めは年を追う毎にエスカレートしていった。
華絵はいわゆる『天然』であり、小柄で見た目も比較的可愛らしいので男子生徒からは好まれていたが、女子生徒からするとそのことが最も気に食わないことであり、六年生の時には遂にクラスの女子生徒全員が、華絵に対して暴力を振るうか無視するかのいずれかになった。普通の生徒ならば『自殺』の二文字を考えるようなところまで追い込まれても、華絵はこれに耐え、対抗し続けた。筋の通らないことの嫌いな華絵はある日、苛めをしている女子生徒の家まで押しかけ、家に入れてもらえないと分かると玄関先で大声を上げて生徒の親に抗議した。
「あたしがお腹すいてるから自分の鼻くそを食べたですって。知恵さんは私が食べてるところを実際に見たってみんなに言っています。本当に知恵さんは私が鼻くそ食べてるところを見たのか、見ていないで嘘を言い廻っているのか。お母さん、お願いです。それを言った本人の知恵さんに聞いてみて下さい! いえ、お母さんも大人なら、嘘か本当かくらい分かるでしょう!? お母さん。あなたは自分の娘が平気で多くの人に嘘をついて廻っているのを許すのですか!? どうするのですか? どうか今の考えを聞かせて下さい。私にはさっぱり分かりません。私にも分かるように考えを聞かせて下さい! お願いです」
大きな声をはっきりと聞いた相手の母親が驚いたのは言うまでもない。娘の『嘘』に驚いたのではなく、小学生が理路整然と、しかも堂々と相手の親に対して抗議する華絵の姿に驚いたのだ。
その後華絵は中学・高校と進学し、この春、都内の地元の高校を無事に卒業した。