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<十五>衝撃の手紙

<十五>衝撃の手紙

 

 久子は華絵と帰宅すると、たまった郵便物の整理を始めた。結果的に四泊五日の旅行であったが、不要なチラシやお知らせも含み郵便物は結構な量だった。夫の陽平はいつも新聞を取り出すだけで郵便は久子にお任せである。

「あっ!」 

 その中には驚きの手紙が含まれていた。

 差出人は吉池琉依。琉依からの手紙である。住所は書かれていない。しかし、間違いなく本人の筆跡だと思われた。捜し回ってとうとう諦めて帰ってきたのに、本当に皮肉なものである。

 手紙が来たことも驚きであったが、その内容は衝撃的なものだった。

※※※※※

 久子。

 琉依です。

 同窓会に行けなくてごめんね。私達のこと、誰かに聞いたかも知れないから詳しくは書かないけれど、ともかく人目をはばかる身となってしまいました。

 大事な話をします。落ち着いて読んでね。

 少し前の話だけど、私たちが子供を産んだ小樽の産院で看護士をしていた田所君から話が有りました。

 彼、一ヶ月程前に病院を辞めたらしいのだけれど、辞めた理由が『良心の呵責に耐えかねて』ということでした。

 どういうこと? って聞くと、驚かないでね。

 私達の子供、逆になっていた、と言うのです。華絵さんが私の子で、百合があなたの本当の子ですって。

 俄かには信じられなくて、私、理由を何度も何度も問い質しました。

 鑑定をするまでもないの。言われるまで全く気が付かなかったけれど、私の血液型はO型、私の夫はA型で百合は有り得ないAB型だったの。子供を取り違えたことに病院はいつ気付いたか聞いてみたら、私と百合が転院して行ってすぐのことらしいの。転院先の市立病院で検査したら、血液型が合わないから夫婦の子ではないって産院に連絡があって気が付いたらしい。でも、産院では取り違えたなどと言うと、相手は公立の病院だから、そのことが万一公に出たりすると、産院の評判に影響があるから、そのままで行こうってことになったらしい。市立病院の方へは、『母親は夫の子でないことは既に自覚していて、夫には隠したいと言っている。母親は自分の血液型をB型と父子に偽ってさえいればばれることはないって言っているから、二人の子供でないことはどうか表沙汰にしないであげて欲しい』なんてデタラメ連絡したって言うの。

※※※※※


――何て酷い話だ。

 途中まで読んで愕然とする久子。華絵を見る。久子はA型で夫の陽平はB型だ。そして華絵はA型だ。華絵の方は久子と陽平の子であることは十分有りうる。しかし、その日生まれた子が二人だけで、他に産院にいた赤ん坊がなく、『百合が琉依の子でない』という事実からは華絵が琉依の子であることは確定していた。百合が言う通りAB型であるとすると、互いに子供を取り違えていたことで矛盾なく全ての説明がつく。もはやこのことに疑う余地はなかった。

 手紙はさらに核心へと続いていた。

※※※※※

 驚いたでしょ。でも真実よ。それ以上のことは、田所君が男泣きをしてしまって聞けなかったけれど、私にはもう、その涙で説明は充分だった。

 夫の会社が倒産した後も、金融業者からの激しい脅迫まがいの督促が続いて、とうとう百合は一人で家出をしたのよ。そして私たち夫婦も家を出て逃げた。夫婦別々に……。百合の所在は分からないし、一家離散よ。

 ところが、最近になって、家出したあの子から、『まとまったお金が入ったから取りに来て欲しい』とメールがあったの。そこで指定された場所に会いに行ったら、百合は三千万円を手にしていたの。そんな大金どうやって、と驚いたけど、その先は聞かなかったわ。

 その時、彼女には私から出生の秘密を話した。私、そのことをどうしても胸に抱え切れなかったのよ。

 久子。

 あなたの本当の子、百合はもうこの世には居ません。自ら命を絶つことになったの。私を死に場所まで連れて行って。私の目の前で……。

 久子。本当にごめんなさい。すべて私が悪いの。ごめんなさい。

※※※※※


 書き手の自分の名前も書き忘れたのか、文章はそこで終わっていた。


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