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<十三>林の中で

<十三>林の中で


 久子は、そのまま札幌へ戻ってもよかったが、納得がいかずもう一度彼女の居た西積丹へ行ってみることにした。そこには確かに久子が彼女に出逢い、一泊した民宿は有った。しかし、それは久子が二日前に見た小奇麗な建屋ではなく完全に朽ち果てた廃屋だった。

 久子は訳が分からなくなり、これ以上の思考を停止することにした。何も無かったのだ、夢を見ていたのだ、そう思うことにした。そして急ぎ華絵の待つ札幌へ向かった。

 久子は行きも帰りもレンタカーのカーナビに従って車を走らせていたが、帰りの道が初めて通る道のような気がして違和感を覚えた。カーナビ通りにさらに三十分程走っているうち、車は二台すれ違えないほどの狭い道に入ってしまい、久子はその時になってようやく来た道と違うことを確信した。しかし目的地は合っている。札幌市内のホテルの住所が表示されているのだ。この後に及んでも、方向音痴の久子はもはやカーナビに従わざるを得なかった。

 ふと見ると林の木々の中に1軒の小屋が見える。久子は誰か人がいるかもしれないと思い、藁にもすがる思いで車を停め、小屋の扉を叩いた。

「すいません。道に迷ってしまって。誰かいらっしゃいますか?」

 返事がない。久子がドアの取っ手を引くと扉は簡単に開いた。

 床には五~六歳位の男の子が横向きに倒れていた。他には誰もいない。久子が駆け寄って男の子の肩を揺すると、その子はうっすらと目を開けた。生きている。しかし、何日間か食事を撮っていないようで、お腹が極端にくぼみ、衰弱し切っている様子だった。男の子を抱き上げようとすると、細いロープがピンと張った。片方の足首が硬く結ばれ、反対側の端が柱に硬く繋がれているのだ。

――いったい誰が、こんな酷いことを……。

 久子は散々苦労をしてロープの結び目をほどいた。幼児の指の力ではとてもほどくことは無理だ。虐待か、誘拐か。それとも……。

 周りには民家はない。久子は警察へ通報しようと思ったが、「知らない男の子が居ました」、とか言うと、さっきの人が電話に出て、『今度は男の子か! 逮捕するぞ!』とか言われるような気がして、取り敢えず子供を車の後部座席へ乗せ発進した。カーナビはまだ道を表示し動いている。少し広めの道に出てカーナビの示す通りに走っていると来た時に見た「Y町」の文字が見えた。「Y警察署」もカーナビの地図に表示されてあったので、ほどなくして車は警察署前に着いた。

 警察署で久子は、今度こそ落ち着いてこれまでの状況と発見したときの様子を説明し、男の子を引き渡した。但し、消えた彼女の話と靴の話だけは避けて……。

 運転免許証の番号を控えられ、写真を三枚撮られて久子は放免となった。第一発見者とはいえ、警察にもそれ以上引き留めておく理由はない。それから久子は一路札幌へ向かい、日没寸前にホテルへ到着した。


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