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4話

第1章:忍びの恋は修羅の道


ブロンクスの地下道場。張り詰めた空気の中、ジェニファーは一心不乱に木人を打ち据えていた。


「ジェニファーよ、拳に迷いがあるぞ」 グランドマスター・ヒロが、サングラス越しに鋭い視線を送る。


「申し訳ありません、祖父様。最近、胸のチャクラが騒いで集中できないのです」 彼女の脳裏に浮かぶのは、学校のカフェテリアで爽やかに笑うブラッドの姿だった。


ヒロは厳かに頷き、今日の金言を授けた。 「心して聞け。『アブハチ・トラズ』」


「その意味はこうだ。『二つの愛を同時に追う者は、アブハチの両方から刺されてアナフィラキシーショックで死ぬ。ゆえに、忍びの恋は命がけの修羅道と知れ』」 「なんと恐ろしい……! 恋とは、毒虫との戦いなのですね」


ジェニファーは戦慄した。ブラッドへの想いは、死に至る猛毒なのだ。


一方、その頃。マンハッタンの高級ペントハウス。 アメフト部のスター、ブラッドは鏡の前で苦悩していた。彼の爽やかな笑顔の下には、誰にも言えない闇が渦巻いていた。


「くそっ、またあのニンジャガールの夢を見た……」 彼もまた、夜の街で出会ったあの強くて美しい戦士に、心を奪われていたのだ。しかし、彼にはもう一つの顔があった。


ブラッドは隠し部屋に入り、星条旗柄のスーツを手に取った。 「昼の僕は、みんなの期待に応える完璧なクォーターバック。だが夜は……この腐った街を浄化する、真の愛国者パトリオットにならねばならない!」


彼は顔に白塗りのメイクを施した。鏡に映るのは、狂気のアメリカン・ヒーロー、ジャスティススターの姿だった。


第2章:復活の星条旗


その夜、サウス・ブロンクスの倉庫街で爆発が起きた。 「ヒャッハー! 宇宙から帰還したぞ! リブート(再起動)完了だ!」


復活したジャスティススターが、密輸業者の倉庫を「自由の松明(火炎放射器)」で焼き払っていた。


「前回の敗北で学んだ! 今度の俺は、対ニンジャ用OSにアップデートされている!」 彼のスーツは、以前よりも分厚い装甲で覆われていた。


「そこまでよ! 宇宙の塵となったはずの狂人が、性懲りもなく!」 桜色の煙と共に、ミラクルニンジャガールが現れる。


二人は対峙した。互いのマスクの下の素顔が、昼間は想いを寄せる相手だとは、知る由もない。


「貴様か、ピンクの猿め! 今日こそは星条旗のキルトにしてやる!」 「黙りなさい! その歪んだ正義、私が叩き直してあげるわ!」


戦闘開始。ジャスティススターの動きは、以前とは比べ物にならないほど洗練されていた。それはまるで、一流のアスリートのような……そう、アメフトのトッププレイヤーのような動きだった。


「くっ、速い! まるでタックルを避けるクォーターバックのようね!」 ジェニファーは防戦一方となる。ショーグンソードの斬撃も、強化された装甲に弾かれてしまう。


第3章:大地の友と魂の叫び


「ハハハ! どうしたニンジャガール! 貴様の『和の心』は錆びついたか!?」 ジャスティススターが、とどめの「独立記念日ミサイル(小型ロケット弾)」を構えたその時。


ヒュンッ! ドスッ!


一振りのトマホークが飛来し、ミサイルの発射口に突き刺さった。 「なんだと!?」


倉庫の屋根に、誇り高き戦士の姿があった。 「大地の精霊が泣いているぞ、星条旗の男よ!」 イーグルだ。彼は友達のピンチを察知し、駆けつけたのだ。


「イーグル! 来てくれたのね!」 「ああ。精霊の導き(という名の警察無線傍受)でな。ジェニー、奴の動きは直線的だ。大地の呼吸を読め!」


イーグルは懐から、乾燥させた特殊なハーブを取り出し、火をつけた。 「ネイティブ奥義! スモーク・シグナル・オブ・コンフュージョン(大いなる幻覚の煙)!!」


もくもくと広がる独特な甘い香りの煙が、ジャスティススターを包み込む。 「ええい、なんだこの煙は! 視界が……バッファローの大群が見える!?」 ジャスティススターが幻覚に惑わされ、動きが止まる。


「今よ、ジェニファー! 日本の魂を見せてやれ!」


第4章:新奥義、彼岸への舞


ジェニファーは刀を納め、両手を広げた。チャクラを丹田に集中させる。 祖父が言っていた。「忍びの恋は修羅の道」。ならば、この恋心も、修羅の炎に変えて敵を討つ力とする!


彼女はゆっくりと、しかし力強くステップを踏み始めた。 「日本の夏……それは死者の魂が帰る季節。そして、生者が踊り狂う宴の刻!」


彼女の動きに合わせて、周囲の空気が熱を帯び、赤く発光し始める。


「新必殺技! ボン・フェスティバル・ダンス・オブ・デス(地獄の盆踊り)!!」


ジェニファーは高速で回転しながら、独特なリズムで手足を打ち鳴らした。 「ハァ~、オドリ・オドレ・バ、ミナ・ホトケ~(踊り踊れば皆仏)!」


その回転が生み出したのは、超高熱のプラズマ竜巻だった。それは、迷える魂を強制的に成仏させる、鎮魂と破壊の嵐だ。


「グオオオ! 熱い! 俺の装甲が溶けていく! これが……東洋の神秘的リズム(グルーヴ)だというのかあああ!」


プラズマの渦に飲み込まれたジャスティススターは、星条旗のスーツを焦がしながら、夜空の彼方へと吹き飛ばされた。 「覚えていろ! 次回作で必ずリベンジしてやるー!」


二度目の星となった狂人を見上げ、ジェニファーは静かに残心した。


第5章:すれ違う傷跡


翌日のハイスクール。 ジェニファーは左腕に包帯を巻いて登校した。昨夜の戦闘で負った火傷だ。 「痛っ……。でも、街の平和は守ったわ」


廊下の角を曲がると、そこにはブラッドがいた。彼もまた、右肩を痛そうに押さえていた。昨夜の盆踊りプラズマで負った傷だ。


二人は顔を見合わせ、同時に声を上げた。 「「あ、その怪我……」」


ジェニファーが先に口を開く。 「料理の授業で、テンプラ油が跳ねてしまって……ホホホ」 嘘だ。ニンジャの修行の傷だ。


ブラッドもぎこちなく笑う。 「僕もさ。アメフトの練習中に、タックルを受けてね」 嘘だ。ニンジャガールとの死闘の傷だ。


「「大変だったね(ですね)……」」


二人は互いの傷を気遣いながらも、その原因が昨夜の自分たちによるものだとは、夢にも思わない。 見つめ合う瞳の奥にあるのは、昼の顔への淡い恋心と、夜の顔への激しい敵対心。


「それじゃ、また後で」 ブラッドが去っていく背中を見つめながら、ジェニファーは胸の痛み(チャクラの乱れ)を感じていた。


(なぜかしら……ブラッド様の近くにいると、昨夜のあの狂人と同じような、チリチリとした気配を感じるの……)


風が吹き抜け、二人の間の見えない壁を揺らす。 1980年、ニューヨーク。最も近くにいる二人が、最も遠い存在であるという残酷な運命が、今動き出した。

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