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第7章 ダーク・ディモンの使い魔は問題児?

"シルフ教授が願いの杯に言及すると、平静を装っていた貴族院の新入生も、声のデカい騎士院の新入生も、思わずざわざわと議論を始めた。

さっき大恥をかいたばかりのロバートは全く懲りておらず、その声量は騎士院随一で、興奮のあまりまた首を赤くしている!

「ヴィット、ヴィット、聞いたかよ、シルフ教授の話! 願いの杯を手に入れれば、俺たち一人一人の願いが叶うんだって!」

「落ち着けって、赤首のロバート。教授は『願いを叶える機会を与える』って言っただけで、『願いが叶う』とは言ってないだろ」

ヴィットもかなり興奮してはいるが、明らかにロバートより冷静だ。


一方、ディアナは貴族院の声量担当といったところか。ローズに向かって興奮気味にまくし立てていたが、それだけでは物足りなかったのか、ぴょんぴょん跳ねながらダークに話しかけてきた。

「もし私たちが願いの杯を手に入れたらね! ディアナは絶対に、チョコレートの壁、キャンディのランプ、グミのベッド、ケーキの天井、クッキーの絨毯、プリンのクッションでできた、ちょーおっきなお菓子の家をお願いするんだ! こーんなに大きいの!」

嬉しそうにお菓子の家の様子を身振り手振りで説明するディアナを見て、ダークも危うくそのハイテンションに引きずり込まれそうになる……。

視界に【強欲+1】が浮かんでこないのを確認し、ダークはそっと安堵の息をつく。それから苦笑まじりに忠告した。

「ディアナ、『貪欲なる者、すべてを失う』、だぞ」

もし願いの杯が本当にどんな願いも叶えるチートアイテムなら、聖マリアン学院で生徒に奪い合わせるような真似はしないだろう。

聖杯の銘文から察するに、叶えられるのはせいぜい些細なこと、おまけ程度のものだろうな。

そうでなければ、ダークはとっくに「魔神の除去!」と願っている。

それから、あのクソシステムにもさっさとお引き取り願いたい! ちくしょう!


……


今回、シルフ教授は【禁言カード】を使わなかった。新入生たちのざわめきが自然と収まるのを待ってから、軽く教卓を叩き、言った。

「学院杯の行方を決める以外にも、単位は聖マリアンの学園生活における必須通貨となります。単位を使えば、旅人街(で欲しいものが何でも手に入りますし、聖マリアンのどの生徒や教師とも取引が可能です。もちろん、あなたたちの取引はすべて組分けカードに記録され、正当な取引で得た単位のみが学院に認められます。では最後に、単位はどうすれば獲得できるか、知っている者はいますか?」


シルフ教授は両手を教卓につき、厳しい視線で教室を見渡す。

ハーフエルフである彼女は、エルフの神秘的な美貌と長い寿命を受け継いでおり、外見からは年齢の痕跡がまったく窺えない。

いつも厳しい表情をしているが、プライベートでは時折、か弱い表情を見せることもあるらしい。

――それが逆に彼女のチャームポイントになっている、とかなんとか。

原作ゲーム『デュエル! 聖マリアン超XX学院』では、シルフ教授はプレイヤーから最も人気のある教授キャラだ。

もちろん、攻略対象でもある。

もし彼女が登場していきなり、あのクソ真面目で堅物なイメージを振りまかなければ、ダークの中のナニかが目覚めていたかもしれない。そうなったら、授業に出る出ないの問題ではなく、社会的に死ぬかどうかの問題になっていただろう =.=!


シルフ教授の質問に対し、両院の新入生は意外にも無反応だった。どうやらダークと同じく、校則をちゃんと読んでいないらしい。

しばらくして、ようやく一人の生徒がおずおずと手を挙げた。

シルフ教授は視線を向け、すぐに名前を呼んだ。

「エマ・モーティス。答えてみなさい」

エマ・モーティスは茶色い髪の小柄な少女だ。顔立ちはまだ丸みを帯びて幼く、同年代の子より少し発育が遅れているように見えるが、ディアナよりは背が高い。

立ち上がる時に少し緊張して、うっかり舌を噛んでしまったようだが、なんとかスムーズに答えた。

「単位を一番簡単に手に入れる方法は、真面目に授業を受けることです。どの授業でも10ポイントの単位がもらえます。もし教授の質問に正しく答えられたり、教授を満足させられたりすれば、追加でポイントがもらえます。それから、期末試験の成績も単位に換算されます。あと……えっと、魔導決闘です!」


「素晴らしいわ、モーティス。5ポイント加点!」

シルフ教授は軽く拍手を送り、彼女に座るよう促すと、続けて説明した。

「授業中に質問に正しく答えれば追加ポイントが得られますが、授業態度が悪ければ、担当教授はその分の単位を差し引く権利も持っています。また、魔導決闘の試合は聖マリアンでは非常に重視されており、各寮に大量の単位をもたらします! 決闘試合への参加方法は、決闘術の先生が教えてくれるでしょう。では、正式に授業を始めます。皆さんの『初級召喚ガイド』を開いてください」


……


「……ふぅん、物知りちゃん、ってわけか」

ダークは再びエマの後ろ姿に目をやった。彼女が原作ゲームの主人公トリオの最後の一人であることは分かった。

だが、エマのもっさりした茶髪や、まだあどけなさの残るふっくらした頬は、どうにも彼の食指を動かさなかった。

ダークは彼らと関わりたくもないが、かといってわざわざ避ける必要も感じていない。

特に、このヒロインのルックスは彼のストライクゾーンど真ん中、というわけでもなかったしな。


続いて、シルフ教授は最も基本的な召喚術の講義を始めた。

召喚術は魔導カードを基盤とする技術で、魔導カードに封じられた精霊、道具、魔薬など、様々なものを召喚できる。

さらに高度なものには、贄召喚術、融合召喚術、儀式召喚術、逆転召喚術など、様々な種類があるという。

一部の魔導カードには、特殊な召喚呪文が設定されていることもある!

召喚術の習熟度は、決闘者が同じ時間内にどれだけ多くの魔導カードを使用できるかを決定する。

簡単に言えば、もし君が召喚術の発動に5秒かかり、相手が3秒で済むなら、相手は君より2秒早く行動できるということだ。

もし君の召喚術のクールダウンが30秒なら、1分間に3枚目の魔導カードすら使えないことになる。

かの有名な決闘マスター、スイスのルーシュンは言った。「召喚術は決闘者の上限と下限を決める」とかなんとか。


そして、この授業の課題は、召喚術を使って組分けカードに封印されている使い魔を召喚することだ。

シルフ教授は校則の説明に30分、召喚術の基礎理論の講義に30分を費やし、残りの30分を生徒たちの実践練習に充てた。


ダークは【強欲】のパラメータが増加していないことを確認した後、教科書のステップに従って召喚を試みた。

朝、談話室で予習していたおかげで、彼の進行速度はほぼすべての新入生よりも速い。

また、組分けカード自体が初心者向けの道具であるため、召喚の起動設定も通常の魔導カードより簡単になっている。

そのため、ダークは9時過ぎには、組分けカード内の使い魔の召喚に成功した!


組分けカードは非常に特殊な複合魔導カードであり、内蔵された機能は非常に強力だ。

そして、組分けカードの製作は生徒自身が最後のステップを完成させるため、各生徒が組分けカードで召喚する使い魔はそれぞれ異なる。


「ダーク・ディモンが名において命ずる――使い魔召喚!」


組分けカードは特殊な召喚呪文によって召喚の難易度が下げられている。

ダークが正しく呪文を唱えると、体内の魔力が指先から組分けカードへと流れ込んだ。

カードはそれに応えて、真昼のように眩い光を放ち、教室中の注目を集めた。

同じく予習はしていたものの、何度試しても召喚に失敗していたエマは、思わずダークの方を見た。

白い光の中で輝く、ダークの白い肌、整った顔立ち、そしてどこか穏やかな眼差しが、エマに強い印象を残した。

彼女はぐっと唇を噛み締め、ダークが何を召喚したかを見ることもなく、素早く教科書をめくり、自分の間違いを探して再び召喚を試みる!

その姿には、隠しようもない負けん気の強さが窺えた。


……


だが、その時のダークは、決して余裕綽々ではなかった。

彼は突然、魔力の流出速度がどんどん速くなっていることに気づいたのだ。まるで組分けカードが自ら彼の魔力を、それこそ根こそぎ吸い取ろうとしているかのようだ!

魔神の血脈が覚醒段階に入ったことで多少増えたはずの魔力が、ほとんど底をつきかけている。

その時、ようやく六芒星の魔法陣が組分けカードの上にカッと現れた!


「こ、これは……」


自分が組分けカードで召喚した使い魔を見て、ダークは、これはかなり、いや、とんでもなくマズいことになった、と直感した。

それはコウモリのような姿をした、小悪魔だった。

しかも、どう見ても、ただの小悪魔じゃない……!"


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