第1話 プロローグ
*荒屋幸四郎はフィクションです。実際にはこんな人物はいません。
忍者とは忍ぶ者と書いて忍者と読む。だからこそ言えることがある。歴史に名を遺すほどに有名な服部半蔵など表の忍者は一流の忍びにあらず。真の一流とは裏に潜み決して誰にも知られずどのような難関な任務でさえもいともたやすく遂行する者のこと。その忍びの名を荒屋幸四郎という。
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「おぎゃあ!?おぎゃあ!?おぎゃあ!?(なんだこれは?)」
私は病にて死んだはず。という事はこれは輪廻転生という事だろうか?確かに赤子の泣き声が聞こえる。他人事のように聞こえるがもしや自分で発している?しかし私には意識があり前世の荒屋幸四郎だったころの記憶がしっかりとある。記憶を持ったまま輪廻転生を果たしたという事だろうか?そんなことがあり得るのか?
「それで?我が子のスキルはどうなのだ?」
「私たちの子供ですからよほどに優秀なスキルでしょうね」
すきる?なんだそれは?聞いたことが無い。そもそもがここが日の本の先の世界なのか別の世界なのか。それすらも現状では分からん。
私の視界には3人の姿が映る。この男女が両親と仮定すると私をじっと覗き込むこの男は誰だ?"すきる"というものが先程の会話から人に宿るものであると仮定した場合、この男がその"すきる"なるものを知ることが出来るという事か。
「ああ~……残念ですが……お子さんにはスキルは宿っておりません」
「なんだと?」
「そんなわけないでしょう!?この子はアークロア帝国シルヴィック公爵家という由緒正しき家に生まれた子なのよ!?それなのにスキルが無いだなんて!?もう一度鑑定しなさい!!」
母親と思われる女が声を荒げる。どうやらこの世界では"すきる"というものが無いというのは地位のある家としては許されないらしい。
覚悟はしておいた方がいいかもしれんな。第二の人生が終わる覚悟を。
私は死というものにそこまでの恐怖は無い。人はいずれは死ぬ。それが早いか遅いかに過ぎない。特に一度死んだからかその考えはより一層と高くなった。しかし口惜しいのは前世のように大義のために戦えないことだろうか。
前世では家康公の考える日の本の平和と発展のために様々な苦難困難を乗り越えてきた。大変であったし幾度も死ぬ思いをした。しかし振り返っても有意義な一生だったと思えるほどに胸を張れる人生だった。
しかし今は赤子であり無抵抗な存在。生きるか死ぬかは天に身を任せるしかないだろう。
「やはり結果は変わりません」
「そんな……あなた……どうしましょう……」
「……おい鑑定士。このゴミを捨ててこい……我がシルヴィック公爵家に能無しは必要ない」
「か、かしこまりました」
そう言って私は鑑定士なる男の腕に抱えられながら屋敷を出た。
「(こんなに早く死ぬのなら私の生まれた意味とは一体なんなのだろうか)」
私はもはや死ぬ運命なのだと理解してその覚悟を固めていた。しかし結果的に私は死ぬことは無かった。
「捨てて来いって言われてもな~……さすがに赤ちゃんは捨てれないだろ。それにしてもスキルが無いだけで捨てて来いって。 さすがスキル至上主義のアークロア帝国って感じだな…………国……変えようかな……」
男はぶつぶつと悩みながらも歩き続ける。そしてある地点で足を止めた。
「……捨てるぐらいだったら……」
そして私は生まれた瞬間に奴隷商に売られた。どうやら即座に死ぬ運命からは逃れられたらしい。しかしこの世界は前世の日の本以上に危うい世界だった。
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--3年後--
転生を果たしてすぐに奴隷商に売られた私はいつも通りに掃除を行っていた。
「 (ここから脱出するにせよ最低でもあと2年ほどは様子を見たい。さすがにこの幼い身体では出来ることは限られてくる)」
脱出するのは5歳を目安に考えている。もちろん危機に瀕すればその限りではないが。しかしその考えはどうやら甘かったらしい。私は現在奴隷なのだから。
タンタンタンタン
こちらに歩いてくる足音が聞こえてくる。さらには話し声も。
「こちらでございます。いつも通り手頃な子供たちが揃っていますよ。へい」
「それでいい……もし我々に逆らおうものなら……どこに逃げようとも見つけ出し生きていることを後悔することになるだろう」
「へ!?へい!!もちろんです!!承知しておりますとも!!」
どうやら話し声から察するにこの奴隷商の店主と客が話しているらしい。
「(手頃な子供たちか……どうやら予定の変更が必要らしい)」
そうして私が掃除をしている部屋の扉が開き現れたのは店主と30代ほどの男だった。
「ん?この子供だけが外に出ているようだが?」
目が合う男と私。この部屋には8つほどの檻が存在しその中に子供たちが収容されている。その中で私が一人だけ檻の外で掃除をしているために男は不審に思っているのだろう。
「ああ!こいつは名前はシロウって言うんですが掃除がしたいとか言うからさせてるんですよ!」
ちなみに名付けられた名がなぜかシロウという前世と同じ名であるのは不思議でしょうがない。
「ふん。まあいい。 それで?子供たちはここで全部か?」
「へい!その通りです!全員で15人ほどです!」
「そうか。ではもらっていくぞ」
「へい!どうぞどうぞ!おい!お前らさっさと出ろ!」
そう言って多くの子供たちが男に買われた。当然その中には私もおり私は初めて奴隷商から外に出て道を歩いている。
「(逃げるべきかどうか……しかし相手は奴隷商の店主がおびえていたほど。ただの脅し文句かもしれないがどこにいても見つけるような言葉も発していた……様子を見るべきか)」
そもそもが子供と大人で身体能力も段違いであり雰囲気からして裏の人間というのはすぐに理解る。だから私はここで逃げるのは得策ではないと判断した。
そうして裏路地を歩いていると壊された外壁が存在しそこから外へ。そこには三台の馬車が止まっていた。子供たちは5人ずつで馬車に乗せられ目隠しをされる。
「いつも通りで?」
「ああ、眠らせろ」
その言葉のあとに甘い香りが漂ってくる。
「(この感じ……眠り薬か)」
私の身体に発生した突然の睡魔。それにより瞬時に事態を把握し眠ったふりをする。あいにくと私には前世の影響からかこの身体でも薬の類は効果がない。
「(これはありがたい。とりあえず道を覚えておこう)」
私は眠ったふりをしながら体感で馬車が行く道を覚える。そして大体一刻ほど経過して馬車は止まった。
「ほら!起きろお前ら!」
そうしてたたき起こされ目隠しを外されるとそこは森の中。目の前には石造りの二階建ての建物が存在する。
「喜べ!貴様らはこれより我らウロボロスの末端に加わる資格を得た!これは光栄なことであると心得よ!」
突如始まった演説。今までの流れからのその言葉によって私が売られた先がよからぬ組織ということは理解できた。
「(家康公が掲げた平和への大義……どうやらこの世界でも果たせそうです)」
私の今世での役割が理解できた気がした。
「(そのためにもまずは理解しなくては……この世界を……ウロボロスという組織を)」
ウロボロスは組織の人材育成のためにいつものように子供の奴隷を買ったに過ぎない。しかしそれによって世界を裏で牛耳る『ウロボロス』は壊滅することになる。元荒屋幸四郎=シロウ・ヴィックの手によって。
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