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俺の新たな第一章


俺の名前は塚本優一(つかもと ゆういち)

身長178cm 体重120kg

デブでブサイクで小学校の頃から散々なイジメを受けてきた。いない者扱いされたり暴力、俺の私物を隠されたりした。クラスの隅にいて存在感が薄い奴で、友達もいない日々が続いていた。早く卒業したい...こんな生活イヤだ...


そして時は2019年3月1日、今日は中学校の卒業式。この日どんなに待ち侘びただろうか、俺の事をイジめきた奴らとついにおさらばできる!周囲は寂しい気持ちになり、涙を流す生徒が多くいるが、俺は違った。表面上は真顔だか内心は飛び跳ねる程大喜びをしている。


そして朗報が一つ、実は県外へ引っ越すことになっている。引っ越しは明日、他県で清々しい高校生活を俺は送りたい。しかし、中学校の様なイジメを俺は二度と受けたくない。どうすればいいのかと卒業式中ずっと考えていた。

卒業式が終わり、すぐ家に帰宅しWouTubeを開いた。


優一「イジメられないためには...っと、検索」


正直検索したくなかった。なぜならイジメを受けていることを100%認識したくなかったからだ。その他にも、こんなことをWouTubeで検索して動画を見ようとしている自分が恥ずかしかった。検索をかけた時、とてつもないサムネイルが俺の目に飛び込んできた。


『イジメられてる奴が悪い』


このサムネイルを見た瞬間、心臓がキュッとなり、全て自分が「悪」と思い込むまで時間は0.1秒もかからず、ネガティブな思考に陥ってしまった。見たくない...見たくない...と思ってしまう。だが、このままでは何も変わらないままになってしまう、それだけはイヤだ!

俺は意を決して、動画を視聴した。


WouTuber「イジメを受ける原因となるのは、自自分の意見を発信していないからです!

ただ、傲慢なプライドを持ってはいけません!

おどおどせず堂々と人と接してください!」


納得した。たしかに俺はみんなよりも活発に人と接せず、自己主張などしていなかったと思う。それに人の目に恐れを抱いていた、視線を気にしてどこかでクスクスと笑っているクラスメイトが、俺のことで笑っているんじゃないかと恐れていた。


優一「これだ!」


思わず大きな声をあげてしまった。


ドタドタドタ!! ガチャ!


???「うるさい!ってか引っ越しの準備もしないでなにやってんの!」


優一「姉貴!?」


これは俺の姉貴、塚本慧茉(つかもと えま)

今年から大学生になるうるさい姉貴だ。高校はバスケ部の部長を努めていてエースでもある、それに成績も優秀だ。性格は俺と真逆で美人で高校ではかなりモテていた。高校では頼れる姐さん的な存在として友達やクラスメイトから慕われていたらしく、実に羨ましくて悲しくなる。


姉貴は俺のスマホに目を向けた瞬間、俺は咄嗟にスマホを隠した。一番見られたくない人に見られてしまった...俺は恥ずかしくて赤面した顔を姉貴に向けないよう、この動画をどう誤魔化そうか必死に考えた。考えていたのも束の間、先に姉貴の口が開いた。


慧茉「へぇ〜そんなもの見てたんだ、あんた」

慧茉「なにぃ?自分を変えたくて見てんの?」


クソっ最悪だ...俺は黙ることしかできなかった、俺は変わりたいんだ。だけど姉貴に見られてしまった。どうする...その時俺はさっき見たWouTuberのことを思い出した。

「おどおどせず堂々と人と接してください!」

今、この瞬間から始めなければ何も変わらないことに気づいた、自分の意見を発信することが大事なのだから。


優一「そうだよ、なにがいけないんだよ!高校ではイジメられたくないからな!」


慧茉「へぇ〜言うようになったね〜」

慧茉「そんなに変わりたいなら私がプロデュースしてやるよ」


!?

俺は驚いた、姉貴がこんな事を言うなんて予想もしていなかった。姉貴は俺をこき使うクソ野郎で俺に対するあたりも強い、なのに今日は優しい。何か企んでいるのか、イヤなことが起こりそうで少し怖かった。


優一「変なこと企んでないよな?」


慧茉「はぁ?、お前をもっとモンスターにしようってか?もう十分モンスターだろwww」


ゲラゲラ笑う姉貴を見てとても腹が立つ、だが俺は確かにモンスターみたいな奴だ、それは認めよう。しかし、姉貴がプロデュースをするとなると、とてもキツそうだ。鬼のようになるだろう、だが姉貴はやると決めた以上やると突き通す性格だ。俺は覚悟を決めて姉貴に頼むことに決めた、ここで弱腰になってしまっては変われないと。


慧茉「ごめんごめん」

慧茉「で、やるの?やらないの?」


優一「やるよ!だからお願い...します」


慧茉「まっすぐな目してんじゃん、私に任せな!、引っ越しが終わってからすぐやるからな?覚悟しろよ優一」


優一「あぁ、こいよクソ姉貴」


そして、引っ越しが完了した。京都府→宮城県

宮城は京都に比べて寒い。ここで俺は変わるんだと、そのためにも姉貴の指導をみっちり受けなければ意味がないと感じた。


優一「姉貴、俺は何をすればいいんだ?」


慧茉「まずはその脂肪を落として筋肉をつけることだな、あとは髪型、それからスキンケアとか、まぁこれをやればなんとかなるだろ」


優一「やることが多いな、俺は一ヶ月しか時間がないんだ」


慧茉「だからその一ヶ月間、徹底的にやってやるよ、丸一日ずっとな」


優一「たとえ身だしなみが良くなっても俺は姉貴のように顔良くないし...」


慧茉「姉の私が美人なんだから、当然弟のお前もカッコよくなるに決まってんだろ」


自分で美人って言うのかよ。しかし、こんな顔が果たしてカッコよくなるのだろうか、疑問に思うが、まずはやるだけやってみよう。



そして一ヶ月間、俺は姉貴の地獄のような指導を受けた。

まずは毎日ランニング10km朝と夕方。雨の日だろうと関係なく走った。ランニングの時、姉貴は自転車で並走し、ランニングのペースが遅くなるとムチのようなもので俺を叩くしまつ。まさにスパルタ、今の時代学校でこんな指導は体罰に値するだろう、俺の精神を破壊させるまで姉貴は何度も何度も追い込ませた。だけど、このおかげでメンタルが強くなった気がする。


優一「ハァハァハァ 姉貴ッ、ちょっと休憩しt」


バチッ!


優一「イッテェッ!!」


慧茉「遅い遅い!そんなんじゃ変われねぇぞ!ペース遅くしたら1km追加するぞ!」


次に筋トレ、姉貴について来いと言われ向かった先はジムだった。入り口で入会受付を済ませ、さっそく筋トレが始まった。しかし、俺は朝ランニングしたおかげで体は疲れて、とても筋トレができる状態ではなかった。だが、姉貴は俺の体調を無視してトレーナーとして俺に指導を施してきた。これから高校生になる人にやっていい指導ではない。


慧茉「あと10回!」


優一「もう...上がらなッ」


慧茉「限界を超えろ!ソマブラのフラウドもおんなじこと言ってんじゃねぇか!」


優一「あれはッ、ゲームのはなしッ! 腕が壊れるってッ」


慧茉「いいから上げろー!」


人生で最も死にそうになった日々がたくさん続いた。俺の身体はボロボロでも姉貴はしっかりと施す日々、そんな姉貴を見て俺はしっかりと応援に応えなければ全て無駄になると感じていた。

姉貴も本気で俺も本気にならなくてどうする、俺は前に進むと決めたのだから、後退せずに辛い一歩を踏むことで心も体も鍛えられる。それが俺が変われる唯一の方法だ。


そして姉貴の鬼指導を受けて一ヶ月が経とうとしていた。明日には入学式を控えている。

体は絞れてきたし、筋肉は一ヶ月しか筋トレしていないが驚く程だいぶ身についた。肌も姉貴の美容知識で肌艶が良くなった気がする。それになにより、一ヶ月前までの俺のメンタルと比べるとだいぶ強い、芯が太くなったのかもしれない。


まだ最後に一つ、姉貴がやり残しているものがある。


慧茉「明日入学式だろ?美容室行くぞ」


優一「美容室か、初めて行くからなんか緊張する」


慧茉「優一に似合う髪型は...これかな、あと流行りの髪型はしっかりと認知しとけよ」


優一「姉貴も明日大学の入学式だろ?髪切るのか?」


慧茉「当然」


そして2019年4月1日、高校入学式当日


優一「忘れ物なしっと」


俺の高校の入学式は午前、姉貴の大学の入学式は午後から、家族揃って2つの入学式に赴くことになった。


慧茉「私もなしっと」


優一「父さんと母さんは?」


母「準備OKよ」

父「父さんもだ」


父親が車を走らせ、ついに入学する高校に到着した。『宮城県宮城高校』

受付を済ませたのち。


父「それじゃ父さんたちは保護者席の方に行ってるから、頑張れよ優一」


母「しっかり胸を張ってね」


慧茉「しかし、ここまでよく耐えたな!流石私の弟」


珍しい。あんな鬼みたいな姉貴が絶対に言わなそうな言葉ランキング1位のセリフを言うなんて驚きだ。まぁでも、姉貴のおかげでここまでこれたことに感謝しよう、死にそうな程キツかった一ヶ月だったが、姉貴がいなければ俺は諦めていたかもしれない。姉貴もこの一ヶ月間相当疲れただろう、寝る間を惜しんで勉強や自重をしていた姿を俺は見ていた。


性格は少し難だが俺のためにここまで真剣になってくれてちょっと見直した。もしかしたら、以前からずっと「変われ」と伝えていたのかもしれない。そうなのであれば申し訳ないことをした。次は姉貴に何かあったら俺が姉貴に恩を返そう。


慧茉「行ってこい!」


優一「あぁ」


姉貴たちを背に向け、前に歩き出し、俺はあのWouTuberが言っていた事を思い出した。

「堂々と人と接してください!」これはつまり、自信を持てということ。気持ちを沈めず人と接する事で相手にネガティブな印象を与えずに済むからだと俺は思う。


一度足を止め、目を閉じて深呼吸をし再び目を開ける、心の中で「よしっ!」と言うかけ声の元、足を一歩また一歩と入学式を行う会場のホールへと足を運ぶ。緊張はしているがそんなものはこの扉の向こう側にいるみんなも同じであることを。


ここから俺の新しい一章が始まる。


優一「いくぞ」





























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