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44.怖いんだ

 通知音は絵音さんからのメッセージで、


『夏祭り、私は浴衣で行くけど綾は?』


 そんな些細な質問だった。私はそれに安心して、思わず他の色々な所を見てしまう。友達の数や検索履歴、SNSなんかを……


 心の中では何をやっているんだろうと、やめないといけない事だと分かっているのに、指先はもっと、もっとと動いて、止まらない。


 やがて何十分も経ち、別に浮気されている訳でも、私の悪口を見つけるでもなく、私は雨宮さんのスマホを閉じて、安心しそんな安心した自分に人生で一番嫌気が差した。


 私はずるい人間で、せっかく雨宮さんは私に更に近付いてくれたのに、思わず拒否してしまって、なんだか今日一日距離が空いてしまった。


 雨宮さんと一緒に居たいくせに、言葉を伝えるのはど下手で、私はつくづく駄目な人間だと思う。


「絵音さんみたいにもっと喋れて……由依さんみたいにもっと軸があって……雨宮さんみたいに優しく気を遣えたら……良かったのにな……」


 一人は怖い。でも、雨宮さんに嫌われるのはもっと怖い。謝らないと……


 私はそう決心して、目の端に浮かんだ涙を拭って、ベットの上にも沢山並べられているぬいぐるみの中から、私とお揃いの色違いの熊のぬいぐるみの頭を撫でて、抱っこする。


 すると、一枚の紙切れがひらっと落ちて、


「これは……」


 拾ってみてみると、体育祭でやった借り物競走のお題の紙で心臓がドクンと跳ねる。


 雨宮さんは、秘密と言って教えてくれなかったから、ずっと気になっていた。


 私は迷いながらも好奇心に逆らえず紙を開いて、書かれている文字を見る。


『初恋の人』もしくは『親友』


 確か雨宮さんは、体育委員さんと最初か最後の話をしていて、雨宮さんは最初と言って……


「夢依ちゃん、お待た……せ……」


 扉がいきなり開いて慌てながら見ると、雨宮さんと目があって私を見たあと、私の持っている紙に視線を移して、感情が何も感じられない声のトーンで、首を傾げて聞いてくる。


「夢依ちゃん、見た?」


 私はそんな雨宮さんに終わったと思うと同時、怒られると思いとにかく勢い良く頭を下げて、


「ごっ、ごめんなさい!」


 必死に謝罪をすると、雨宮さんはこちらに近付き、


「別に怒ったりなんかしないよ。夢依ちゃん、お風呂に入っておいで。私、夜ご飯作ってるから」


 優しい言葉のはずなのに、声は低くて少し早口で怒っているような感じがして、私の手から雨宮さんは雑に紙を取る。


 そんな行動に私は涙がブワッと溢れて……でも、雨宮さんにはバレないように下を向いたままそそくさと着替えと下着を持って、階段を駆け上がり、涙が止まらないままお風呂場に入った。

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― 新着の感想 ―
[一言] そもそもの話、最初の告白は間違いだったから、それを受けて雨宮さんが付き合ってくれてるというのが自信のなさに繋がってるはず。 でも、雨宮さんはあの告白で惚れたにしてはべた惚れ過ぎるわけで、告白…
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