3.よろしくね
「やった、夢依ちゃん。これから、よろしくねっ!」
「えっ……」
すごく嬉しそうな声を発した雨宮綾、もといい雨宮さんは、いきなり私の頭を抱きかかえて、程よい大きさの胸に私を押し付けてくる。
私は訳が分からず困惑するけど、いい匂いと柔らかさに頭がクラクラして、何もできないまま数分抱きしめられ、頭を撫でられ続けていた。
◆
「はぁ……はぁ……」
授業が始まるギリギリまで抱かれていた私は、雨宮さんと一緒に走って教室に戻り、なんとか時間に間に合う。
「次の、授業は……」
「数学だよ」
「えっ?」
小さくぼそっと言葉を呟くと隣の席から雨宮さんの声が聞こえて、思わず顔を向ける。
すると、ニコニコした雨宮さんが隣りに座っていて……
「あ、あの……」
「ん?どうしたの?教科書忘れた?見せてあげるよ」
「あっ、いえ……その、どうして隣に……」
「どうしてって、そんなのここが私の席だからに決まってるじゃん。入学した時からずっと、隣にいたでしょ?」
不思議そうに聞いてくる雨宮さんに、私はど下手な作り笑顔を浮かべながら、いつも下ばっかり向いていて、周りの人の顔なんてろくに覚えていないけど、
「そ、そうでしたよね……」
嘘をついて頷くと、
「そうだよ。夢依ちゃん、酷い」
少し拗ねたように言って、頬を膨らます雨宮さん。
そんな姿に、私は何を言ったら良いのか分からず、
「あ、あはは……」
ただ愛想笑いを浮かべていた。
それから雨宮さんに度々話しかけられては、言葉に詰まったり迷ったりするけれど、返事をしたり笑ったりとなんとか反応を返して、帰る時間に。
ホームルームが終わると同時に教室は一気に騒がしくなり、各々部活に行ったり帰ったりと忙しなく人が動く。
私も鞄にお弁当を入れて帰ろうとすると、
「夢依ちゃん、一緒に帰ろう」
雨宮さんが手招きをしながら言ってきたので、
「あっ、はっ、はい」
私は頷いてなんとか返事をし、高校生活で初めて誰かと一緒に家へと帰る。
「夢依ちゃんって歩き?自転車?それともバス?」
「あ、歩き、です」
「なら、一緒だね。意外と家近かったりして」
靴箱で上靴を履き替えて、校舎を出る。そこそこの日差しに私が少し暑いなと思っていると、
「えいっ!」
「ひゃっ!」
後ろから突然誰かに手を握られて、私は体を震わす。暖かくて大きい手。
私は恐る恐る振り返ってみると、犯人は雨宮さんで私と笑いながら目を合わし、
「手、繋いで帰ろっか!」
優しくぎゅっと握られた。
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