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22.可愛い

 

「学校から街までって……電車でもバスでも、一本で行けるみたいだけど、どっちにする?」


「安い方は?」


「電車!」


「なら、そっちだろ。綾は?」


「私も電車で良いと思うよ。夢依ちゃんもそれで良い?」


「は、はい!」


「それじゃ、取り敢えず駅に行かないとだね!レッツゴー!!」


 ◆


 電車を降りて少し歩くと、目の前には初めて見る街が広がっていた。


 大きな建物が沢山並び、一人だったら確実に瞬殺される程、数え切れない人々が行き交っていて、雨宮さんの手を握っていても少し足がすくむ。


 けれど、私以外の三人は平然としていて、


「まずはどうしよっか?適当に回ってみる?」


「うん、そうしよ。夢依ちゃん、何か欲しい物があったら言ってね」


「あっ、は、はい」


 大勢の人の中を慣れたように由依さんと絵音さんが先頭になってくれながら歩き、私と雨宮さんがその後ろを手を繋いで付いていく。


「あっ、可愛い雑貨屋ー」


「勝手にはぐれるな」


「ごめんごめん、つい。みんな、一緒に行こ!」


 人混みに若干慣れた頃、由依さんに首根っこを掴まれたままの絵音さんに頷いて、導かれるまま雑貨屋の中へと入る。


「ねぇ、由依。可愛いものがいっぱいあるね!」


「そーだな」


「こんなお店あったんだ。夢依ちゃん、なんかお揃いの物買おうよ」


「も、もちろん、喜んで」


「えー、綾と夢依ちゃんだけずるい。私と由依も混ぜてよー」


「いいよ。可愛いキーホルダーとかどう?」


 絵音さんへ即答した雨宮さんの言葉に、私は雨宮さんと二人だけのお揃いの物が欲しかったなと、少しだけがっかりというか残念に思ってしまう。


 そんな感情に私は驚きながらも、最近変な欲が溢れ出てきているような気がして、気持ちを切り替えて出来るだけ気にすることなく、ぬいぐるみや食器類、小物なんかを見ていく。


「綾ー、これとかどう?」


「絵音って、可愛い物を見つけるの上手いよね」


「えへへ、褒めても何も出ないよ?」


「……可愛い」


「えっ、もしかして私の事?」


 思わず口から漏れた小さな声に絵音さんは反応して、自分の事を指で指す。


 私はそんな絵音さんを否定すると可哀想だと思い、少し恥ずかしがりながらも、


「ま、まあ……その、どっちも、可愛いです」


 誰も傷付く事がないはずの回答を言うと、


「えっ……ねぇ、夢依ちゃん。私は?」


 一瞬、重い驚いた声をあげた後、今度は雨宮さんが私に聞いてくる。


「あっ……その……」


 聞かれた瞬間答えは思い浮かんだけど、絵音さんの時とは違って物凄く恥ずかしくって、私は顔を赤くしながら視線を彷徨わせ、蚊の鳴くような声で精一杯答える。


「とっ……とっても、か、可愛い、です」


 すると、その言葉に雨宮さんは笑って、


「夢依ちゃんに免じて、殴るのはやめるよ、絵音」


 冗談なのかマジなのか分からない声で、絵音さんの顔を引き攣らせた。

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