21.君じゃないと駄目なんだ
綱引き、リレーと続き、また雨宮さんの順番は後ろで私は前。
応援の声が響く中ピストルの音が着々と鳴り、自分の番がどんどん迫ってくる。
そしていよいよ自分の番になり、緊張しつつも深呼吸をして、
「よーい」
パンッ!
ピストルの音と共に走り出し、借り物競走なのでまずはお題の紙が入っている箱へ向かう。それからすぐに手を中に入れて、紙を一枚取り見ると、
『親友』
一言そう書かれており、私は絵音さんと由依さんの二人を必死に探す。すると、たまたま絵音さんと目が合い走って近付く。
「あ、あのっ、絵音さん。来て、くれませんか?」
手を恐る恐る差し出して精一杯の声をかけると、優しく笑ってくれると同時に、私の手をぎゅっと慣れたように握って、
「もちろん」
一言頷いて返してくれ、照れながらもちゃんと借りれたかどうか判断する人がいる、ゴールの手前まで一緒に走って行く。
「紙を下さい……はい、オッケーです」
そしてすぐにオッケーをもらい、何事もなくゴールした。
私は安心しきって、無意識に絵音さんの手を握ったまま、借り物競走の邪魔にならない所に二人で一緒に座ると、
「二位か。私の一番好きな数字だよ。あっ、夢依ちゃん。紙になんて書いてあったの?」
肩を叩かれ、そう絵音さんに聞かれたので、先程の紙を出して見せながら、
「し、親友って……い、嫌でしたか?」
私が恐る恐る聞くと、絵音さんは目を見開いたあと、飛びっきり優しい笑みを浮かべて、私の頭をいきなり撫で、
「うんん、すっごく嬉しいよ。ありがとう」
女神のような暖かい声でお礼を言われ、私はなんて返したらいいか分からずにいると、
「ずっと、親友でいようね、夢依ちゃん」
泣きそうになるぐらいの優しい言葉に、私はコクリと頷いた。
それから黙っていても居心地が良い雰囲気の中、最後に近付きより一層凄くなった体育祭の応援の声に圧倒されていると、どこからかこちらに人が走って来る音がして、
「夢依ちゃん!夢依ちゃんじゃないとだめなの当てちゃって、来てくれない?」
顔を上げると雨宮さんが手を差し出し、お願いするように私の名前を呼んできて、
「夢依ちゃん、彼女のお願い聞かないの?」
絵音さんの言葉に、顔を赤くしながらも立ち上がって、
「も、もちろん、行きます!」
今度は雨宮さんの手をぎゅっと握りしめて走り、二度目のゴール手前に。
「紙をもらいます。……最初ですか?最後ですか?」
「最初です」
「そうですか。本当にお似合いですね、雨宮さんと吉川さんは。オッケーです」
「ありがとう。体育委員さん」
何か私の時にはなかった会話をして、私達は二位でゴールすると同時に、雨宮さんの紙が気になって、
「あのっ、紙になんて、書かれてたんですか?」
思い切って聞いてみると、雨宮さんは少しだけ迷ったように視線を動かした後、口に指をしっーと当てて、
「秘密」
一言どこか妖艶に、耳元で囁かれた。
◆
三年生の全員リレーが体育祭の締めらしい物凄い接戦に次ぐ接戦を繰り広げて、今日一番の空にも届きそうな応援の声が響き渡る中、アンカーが全員ゴールして、閉会式となる。
「えっーと……今、ポイントが出揃いました。白組の優勝です。おめでとうございます」
担任の先生が、無理矢理振り絞った明るい声で言い終わり拍手の中、校長先生と入れ替わる。
「皆さん、お疲れ様でした!やっぱり若い力は凄いですね。今日の体育祭含めて、色々な事を経験してこれからも成長していって欲しいと私は願っています。以上!」
大きな拍手が鳴り止み閉会式は終わりを告げ、初めての体育祭は何事もなくそれどころか楽しさの中で幕を閉じた。
そして少し時間は経ち、お弁当を入れた鞄を持って、
「打ち上げじゃー!!いてっ!」
「いきなり叫ぶな」
「行こっか、夢依ちゃん」
今度は、打ち上げなんて言う一生縁がないと思っていたイベントが、四人で仲良く始まった。
「は、はいっ!」
次は、打ち上げ編。長くならないと思うので、幕間だと思って頂けたら幸いです。
では!
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