18.止まらない
パン食い競走の事は、体育委員さんも由依さんも絵音さんも一位だった事以外、よく覚えていない。
「あーあ、もう終わりか。夢依ちゃん、全員リレー頑張ろうね!」
「あっ、えっーと……はい」
「ふふっ。ねぇ、夢依ちゃん……いや、ほら、行こ!」
雨宮さんが何かを言おうとして辞めた事なんかより、キスをされた事実に私は顔が熱すぎて頭も回らず、ただただ雨宮さんに付いて行く。
全員リレーは文字通り、クラス皆でリレーをして一位から八位までが決まる。
私は最初の方なので、雨宮さんとはまた離れて、順番が来るまで深呼吸を繰り返す。
「よーい……」
パンッ!
それぞれのクラスの最初の人が走り出し、一気に盛り上がり応援が飛び交う。
四組は黄色いバトンで今は三位と中々いい位置に付いている。それから少し順位は変わり、四位で私にバトンが。
「頑張れー!」
何処からか聞こえてくる雨宮さんの声に、私は必死に走る。
けれど運動神経が悪い私は、一人二人と追い抜かされて……六位で次の人に。
「はぁ……はぁ……」
「夢依ちゃん、お疲れ!」
雨宮さんの声が聞こえた方を向くと、目が合い微笑んでくれる。そんな顔に私は恥ずかしさですぐに視線を逸して、ペコリと頭を下げて、邪魔にならない場所に並び、四組の順位を見てみると私の次の人が丁度抜かされ最下位に。
その後、一人二人走る度に少しは追いつくけれど、ずっと最下位のまま絵音さんへ。
「絵音!」
「いけ絵音!」
「ファイト~!!」
所々から絵音さんを応援する声が聞こえる中、絵音さんは安定して走り二人を追い抜かし、六位に浮上。
それから四組は六位を維持したまま、雨宮さんとアンカーの由依さんを残すのみに。
「綾、がんば!」
「追い抜かせ!!」
黄色いバトンが雨宮さんの手に渡り、勢い良く走って行く。
髪を靡かせながら、一人、二人、三人とまたたく間に追い抜かし、歓声がひしめく中アンカーの由依さんへ。
「由依!いけるよ!」
「頑張れ、アンカー!!」
雨宮さんからバトンを受け取った由依さんの一歩は、今走っている人の誰よりも速くって、三位を軽々追い抜かし、二位と並んで一位を追いかけて行く。
七組、二組、四組それぞれのはちきれんばかりの応援が、声援が鳴り響く中、ゴール直前で、一位二位三位が一列に並ぶ大接戦を繰り広げて、瞬間物凄い応援が重なり合い……
「一位……四組!二位七組!三位二組です!!」
ゴールテープを最初に切ったのは由依さん。その瞬間わっと四組皆が立ち上がって、
「「うぉー!!!!」」
皆、物凄く嬉しそうな笑顔を浮かべながら、由依さんへと駆けて行った。
「はっはっはっ、私が由依を育てました、いたっ!」
「凄いよ、由依!一位!」
「めっちゃ速かった!!」
「絵音も由依もお疲れ!!」
なんだかんだで四組は快進撃を繰り広げて、綱引き、リレー共に一位を勝ち取った。
私も内心みんなと同じ様に喜び、由依さんの周りに集まっている四組を眺めていると、
「お疲れ」
「あ、あっ、雨宮さん!お、お疲れ、様です」
雨宮さんに声をかけられて、恥ずかしさの中それでも頑張って返事をすると、
「ふふっ、夢依ちゃん可愛い!」
可愛い笑みを浮かべた雨宮さんの胸の中へと、私の顔が優しく吸い込まれた。
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