104.我慢の限界
二日目は一日目と違いお客さんの勢いがとにかく凄くて、休まず接客を続けていたせいかふと時計を見るともう少しで交代の時間になっており、ちょくちょく午後から接客を担当する同じクラスの子がメイド服を取りに教室に入ってきていた。
それを見て、あっという間だったなと思っていると、由依さんが一人でやって来て、音々さんと少し会話をする。
「お疲れ。音々は相変わらず、ずっと会計か」
「そうだよ〜。絵音は〜?」
「トイレに行ったぞ。もう少ししたら来るだろ」
「そうなんだ〜。午後頑張ってね〜」
「音々もな。じゃ」
何気ないなり取りを聞いて、やっと綾さんと二人っきりで文化祭を回れるなと思い、時間まで接客を続けていく。
それから徐々にメイドが変わっていき、
「綾、お疲れ。交代の時間だぞ」
「うん。分かった。えっーと……夢依、先に理科室行ってるね」
「分かりました!」
綾さんも由依さんと変わり、残るは私だけに。そして十二時半になり、完全に交代の時間になったのだけど……
「まだ絵音が来てないの〜?」
「そうみたいです。どうします?」
絵音さんが姿を現さず、音々さんと体育委員さんが少し困ったように頭を悩ませ、私に手招きしてきたので向かうと、
「ん〜、取り敢えず交代してないのは〜、夢依ちゃんだけだよね〜。悪いけど〜、もうちょっとお願い出来る〜?」
「はい!」
音々さんに申し訳ない顔で言われたので私は頷き、綾さんにスマホで大体の事を伝えると、
『着替えて教室の外で待ってるね』
すぐに返信が来て、私は安心しながら接客に戻り続けていく。
「ごめんな、夢依」
「いえ、気にしないで下さい。きっと絵音さんも、わざとじゃないと思いますから」
「ちょっと変わったな、夢依。絵音には私が怒っとくよ」
「控え目にしてあげて下さいね」
「……分かったよ」
私の返事に由依さんは驚きながらもどこか笑って頷き、すぐに指名が入って行ってしまったので私は気を取り直して注文を取る。
それから数分で、
「ごめん!遅れた!」
絵音さんが焦ったように教室に入ってきて、
「絵音、早く着替えておいで〜」
すぐに音々さんにメイド服を渡されて、大急ぎで教室を出て行く。それを見て、本当に接客は最後だなと思いながらついさっき入った指名を終わらせて、また注文を取っていると、
「交代するのは誰?」
メイドの絵音さんが戻ってきて、
「夢依ちゃんとだよ〜」
「夢依ちゃんと?ごめんね!夢依ちゃん!」
絵音さんに手を繋がれて謝られたので私は笑って、
「気にしないで下さい。頑張って下さいね」
首を横に振って言うと、絵音さんも由依さんと同じ様に目を見開いて驚いたあと、
「うん!文化祭終わった何でも奢ってあげるね!お疲れ様、夢依ちゃん」
そう言って私の頭を撫でてくれ、私は絵音さんと交代して着替えを持って教室の外へ。
仕事が終わったなと思うと少し疲れが出てくるけど気にせずに綾さんを探す。
けれど居なくって……私は少し迷った後、メイド服のまま人混みの中を歩いて探すのは恥ずかしいので、着替えてきますねとスマホで綾さんにメッセージを打ち、着替えてから探そうと取り敢えず理科室へ。
結構混んでいる中、私は隅っこで素早く着替えを済まして教室に戻るけど、綾さんは相変わらず居なくって、でもスマホの方は既読が付いているので、
「あの、綾見ませんでしたか?」
私はメイド服を返すついでに音々さんにそう聞くと、
「チラッと見たよ〜。絵音に夢依ちゃんが頭撫でられてる時に〜、丁度綾が教室を覗いて〜、ちょっと悲しそうにあっちに歩いて言ってたよ〜」
「そうなんですか……ありがとございます。音々さん」
「綾をよろしくね〜。夢依ちゃん」
切実にそうお願いしてきた音々さんに私は頷いて、綾さんが歩いてったという方向に歩きながら電話をかけてみる。すると長いコールの後で、電話が繋がって、
「綾、今どこにいるんですか?」
聞いてみると、
「……いつもの、場所だよ」
切羽詰まった今にも泣きそうな綾さんからの返事があって、すぐに電話が切れてしまう。
私はそれに一気に襲ってきた不安や恐怖や心配や……色々とごちゃ混ぜになった感情を抱きながらも、いつもの場所……きっと旧校舎の裏だなと確信して走り出した。
この作品を投稿し始めてもう三ヶ月です。季節が春から夏に完全に変わって、そんな中で今この物語の季節は真逆の冬ですから時々、頭がバグりそうになります。
ということで、こっからの綾と夢依を見守っててください。
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