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パッスパ  作者: MIKU
7/13

屈辱のぼろ負け【先攻戦】④

パス受け取り回数


勇士7回

隼平6回

須藤先輩 5回

俺 陽斗 2回

昊 2回

卓也 1回

晃平 0回

0周✕3点=0点


吹山高校

カット✕2回=2点


タイム後は又もや、卓也のボールでスタートする。

なんかデジャウを感じる。

スピードをつけてパスを投げるか?

そんなんで、あのネズミのジャンプを交わせるか?

またカットされるのでは?

あーー、でも聡士が策があるって言っていたし……

考えてもしょーがないのに、疑心暗鬼になる。


卓也はというと、先ほどと同様、晃平と向き合った。

先程とは違い、目に闘志をみなぎらせている。

点を確実にとれるという慢心は一切感じられない。

卓也と晃平は目配せし、同時に頷きあった。


その瞬間、2人は腰を落とし、しゃがみ込む。

しゃがむやいなや、卓也がボールをパスする。

ネズミは慌ててジャンプするが、まさか低い位置でパスされるとは思ってもおらず、ボールよりも高い位置に飛び跳ねてしまった。

ボールはネズミの真下を通って、晃平の腕に収まった。


「よっしゃ~」と勇士

「ナイスパス!」と先輩

「おおお!」と俺

「やったじゃん!」と隼平

「やったぁ〜」と卓也

「ホッ」と晃平

が各々に雄叫びを上げる。

一人だけは得点とは別のことを叫んだ。


「晃平先輩、ボール下さい!」

昊が、走りながらボールの催促をする。

晃平は慌てて、昊にボールを託した。

昊がすぐに動いたお陰で、ジャンプから着地したばかりのネズミはカットに間に合わなかった。


昊は自慢のドリブルでコートを駆け抜ける。

昊についているブロッカーは、ドリブルカットができないまま、追いかけるしかない。

なぜなら、ドリブルのカットはペナルティとなり、相手のチームの得点となるからだ。


「陽斗先輩!」

名前を呼ばれるや否や、目の前にボールがあった。


ボフッ


大きく変な音を立てて、ボールが跳ねる。

目の前がチカチカして何が起きたのか分からない。

痛みと……動揺と……それから……

理解が追いつかない。

一体全体、なにが起こったんだ!!


「「「クスクスクスクス」」」


俺はそんな笑い声で我に返ることになる。

発信源は体育館の2階バルコニーからだった。

いつの間にか、午前の練習を終えた水泳部員たちが集まり、試合を見学していたようだ。

もちろん、幼馴染の咲良もいる。


水泳部員以外には、山岳部員を紹介してくれた一年生の女子生徒もいた。

ポニーテールの女子は必死に顔を真っ赤にし、耐えているようにみえる。

セミロングの小動物系女子は、ハンカチを口に当てて笑っていた。

夏休みなのに関わらず、試合を見に来たのか?

完全に隼平の追っかけではないか?


顔がカァーと赤くなる。

俺はやっと何が起こったのか理解した。

ボールが俺の顔面に当たり跳ね返ったんだ。

ボールをキャッチしようと手を上げたのだが、それよりもボールの速度の方が早かった。

一瞬だけ、俺の左手の手のひらに当たりはしたが受け止めきれずに、顔面キャッチしてしまったわけである。


「プッ」

隼平が吹き出した。

我慢しようと必死に試みたのだろう。

顔を真っ赤にしている。


「……ブハッ。ナイスキャッチっっ!」

釣られて勇士も笑い出す。

笑いながら、声を震わせ、『ナイスキャッチ』と言ったのは、左手の掌に当たったことで、パスが成立したと見做されたからである。


俺は恥ずかして恥ずかして穴があれが入りたい気分だった。


そうこうしている間にもボールはまだ生きていた。

俺の顔面に直撃したボールは、コートに一度だけバウンドして、昊に戻ったらしい。

昊はボールをキャッチして、ドリブルで素早く移動し、卓也の元に戻った。

卓也の周りにいた敵チームのブロッカーは、昊を追いかけ、卓也の周りから少し離れていた。

そこを昊は狙った。

ジャンプ力のあるネズミも、顔を赤くさせて腹を抑えて笑っていた為に対応が遅れる。

他の敵チームメンバーも同様に、俺の顔面キャッチに視線を奪われていた。

その僅か数秒のを昊は見逃さなかった。

ボールは素早く卓也の元にたどり着いた。


「卓也、高めのパスくれっ」

須藤先輩が卓也にパスを催促する。

昊の勢いに、須藤先輩が素早く対応したのだ。

ネズミはまだ対応出来ていない。

どうやら、笑いのツボに入ってしまっていたようだ。

ネズミが我に返って、ディフェンスに戻った時には既に遅し。

ボールは須藤先輩に渡された後だった。

ネズミは悔しそうな顔をする。

それをもろともせずに、須藤先輩は勇士にパスをする。

先輩のよく鍛えられた筋肉の腕で投げるボールは、勢いもある。さすが、マッチョな体格なだけはある。

そのボールは真っ直ぐ正確に勇士の元へ。


勇士も元砲丸選手なだけあり、腕力はお墨付きだ。

勇士も、持てる最大限の腕力を使い、ボールを投げる。ロングパスをになってしまったが、昊の元へ戻った。


そこからは昊の独壇場だった。右へ左へ、前へ後ろへ、コートの端から端まで、ドリブルで駆け抜ける。

一方、昊のディフェンスの4番のゼッケンの選手は、体力が尽きてきたのだろう。先程からディフェンスのキレがなくなっている。

何回も昊へのパスが通るのはそのお陰であろう。

俺達のチームにとっては、それが天の救いだった。


同じく、昊の体力はもっとヤバそうだ。

コートの端から端まで、ドリブルしながら敵チームを奔走する。

ほぼ立ち止まらずに、ドリブルをし続けている。

ボールを持っていないときも常にディフェンスから抜けようと走り続けていたはずだ。

体力はそろそろ限界に近い。


俺の前をドリブルで昊が通ろうとした。

「パスくれっ」

俺は右手を上げて昊にアピールする。

ちょうど、ノッポを撒いたところだった。

まあ、ノッポならボールを避ける可能性もあるのだが……

本当にノッポの行動原理は分からなすぎる。


昊は横目で俺を見たが、そのままスルーする。


こんにゃろー


俺はイラッとする。

今がパスできるチャンスやったやろが!


次に、隼平が声をかける。

「パスもらうよ〜」

昊はそれさえもスルーする。


ボールを一人で持ったまま、離さない。

目線は晃平の方を向いている。

明らかに晃平にパスを渡すのを狙っているのが丸わかりだ。

晃平以外の味方の姿は眼中にもない。

もう、昊の頭の中には、得点のことしかない。

得点を入れるには、晃平にパスを渡すしか道は残っていないのだ。

結局、晃平にパスを渡せるかがネックになってしまった。

晃平は全然、ディフェンスのから抜け出せそうにない。

試合が始まってからずっと、身体を包み込むディフェンスにオロオロするばかりだ。

全然動けていないし、今後ディフェンスから抜け出せるかも謎である。


昊もそのことに気付いたのだろう。

チッと舌打ちをして立ち止まり、目を瞑った。手はドリブルをし続けている。


昊にはイラッとしているが、ドリブルの巧さは俺達の右にでる者はいない。

俺は舌を巻いた。


やがて、昊が目を見開いた。

目がギラギラしている。何か思い付いたらしい。

昊は再びドリブルで走り出すと、素早くパスを投げた。


誰にって?

そんなの俺の方が聞きたいよ。


ノッポにも一度したのだが、敵チームの5番ゼッケンに向かって、パスをしたのだ。

そう眼鏡の坊主の2年生にだ。


信じられるか?

敵チームに塩ではなく、あまーいアメを送るんだぞ。

そんなスポーツがどこにある?

チーム戦だそ?

まさか、自チームがどちらか分からなくなったわけではなかろうに。


「ふざけるなっっ」

俺は感情的に怒鳴る。


ボールは敵の5番の選手がキャッチした。

人間、ボールがいきなり胸辺りに飛んできたら、本能的にキャッチしてしまうもんだ。

敵とか味方とか関係なく。

坊主の5番の選手も受け取ってしまってから、『あっっ』という表情になった。


坊主の5番のカット成立という、俺にとっては最悪の結果でタイムは止まる。

カット成立ということで、敵チームに1点加算され、昊にボールが戻される。

俺の見間違いかもしれないが、昊はカットされた瞬間、口角が少し上がったように見えた。

多分気のせいだろう。


昊はボールを坊主から受け取る直前、晃平の耳元で何か囁いた。


ホイッスルが鳴り響き、タイムが再開されるな否や、晃平と昊がコートの左側へ全力で走り出す。

昊に至っては、ドリブルしながらだ。

カットされた後の最初のボールであるがゆえに、昊↔晃平↔2番の選手の距離はそれぞれ1mずつの間隔がある。

10センチほどの接近ギリギリのディフェンスをされていた晃平にとっては、1m離れてくれたことで、好きな方向へ走ることができるようになった。


二人が同じ方向へと走り、ディフェンスを振り切りフリーとなる。

まさか、ホイッスルと同時に全力で走るとは思わなかったのだろう。

2番と4番の選手の不意をつくことに成功した。

ボールは見事に晃平へと届けられたのだ。


偶然の産物とはいえ、カットのお陰で、晃平がディフェンスから抜け出せるチャンスが生まれた。

なんとラッキーなことだろうか。

グッジョブと言わざるを得ない。

カット分として、1点を敵に与える形となってしまったが、3点が加算される運びとなった。


自チームの選手たちの顔に少し明るさが戻ったように見えた。


しばらくして場外から歓声があがる。

主に、見学している水泳部員だ。

「わぁ〜」という歓声やら、パチパチという断片的な拍手が聞こえる。

2〜3人の生徒が拍手をしてくれたらしい。

そのうちの一人が咲良だった。


そこで、タイムがかかる。

今回タイムを請求したのは、敵チームの顧問だった。























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