拾壱 天と超、刹那の戦 参
あ
空技は追撃にあえて向かい、口を開いた。
「天之流拳法」『壱』 支釣込足
空技はロボットを横に飛ばす。
その内に半回転し、背面にある刀の方向へ向いた瞬間には、もう一体のロボットが迫っていた。
そのまま走り、相手の左腕が飛んできた。空技は腕を掴み、そのまま背負投で壊した。
超井信行はこのまま行かせても全て破壊されることに気付き、一旦攻撃をやめた。
「刀に比べて素手は一対多が強い。それでも赤山戦でその拳法とやらを使わなかったのは凄いな。」
素直に賞賛、分析結果を述べる。
「アンタにそんな興味を持ってもらって嬉しいよ」
空技はすかさず皮肉交じりに返す。
「それは賞賛?それとも皮肉か?」
「どちらでもどうぞ」
と、言った瞬間に謎の破片が飛んできた。
(…!鉄かよ!)
空技は刀では間に合わないと悟り、全力で身体を逸らす。
「それ、赤山の破片だ」
超井信行が半笑いで言う。
「舐めてるのか?」
空技の怒声での質問に、
「ああ、そうだが何か?」
超井信行は全力で煽り返す。
「そうか」
空技は右足踏切で一気に距離を詰める。ロボットの頸を狙った蹴りに、姿勢を低くし避け、足を斬って無力化する。
「本当に面白くないなお前は」
「何が言いたい?」
「消耗戦なんて面白くないと言っている。」
空技には実際この状況を打破できるだけの力が無い。
「もう、終わらせるか」
と言った次の瞬間、空技の左腹から出血する。
(は?何が起こった…)
今、空技にも見えない速度での攻撃であった。
(なんか超井信行が振りかぶったと思ったら攻撃されていた…)
ロボットに何か刃物を持った者がいるのかと見回すが血が付いた物を持っているのはいなかった。ロボットには。
そこで超井信行の方向に空技が視線を向けると…
そこには血の付いたナイフを持った超井信行が元の場所に座っていた。
(俺を斬ったロボットからナイフを取った?いやそんなことする意味が…)
「お前、自分で…」
空技のセリフに、
「よく気付いたな。気づいた所で何もならんが」
今度は左足首が切れた。肉だけを斬られ、骨までは行かなかった。
(やっぱり、速さ重視にしているからそこまで深くは斬れない!)
だがそれでも骨が傷ついていないだけ、肉を斬られている。脚は軽傷だが、腹の傷は浅くはない。このままでいると数十分で失血死するだろう。
(行けるか…戦いながら身体を縫う事…)
今の攻撃で空技の動きは遅くなっている。また、一歩一歩で傷が開き始める。
(これは縫わないと、死ぬ!)
だが、縫う事を出来る暇はない。
(ロボットの攻撃に加えて超井まで見なければ…)
次の瞬間、左肩が一センチほど斬れた。もう、全力で刀は振れない。
(右腕は折れたし、左腕は肩が斬れた…どうすりゃいい!)
またロボットが来た。背中を全力で殴られ一瞬膝立ちの姿勢になる。
その時、顔を上げると頭上に三つの斬撃が見える。速すぎた故の残像。
もう、空技には避ける手段は残されていない。
(マジかよ…)
「もう終わりか?お前には俺達に勝つ力は無かったようだな。」
(ここまで、差があるのかよお…)
その攻撃はほぼ全身に当たった。
だが腕は斬れず、空技はまだ、立っていた。
「ハア―――ハア―――」
少しでも動いたら身体が壊れそうだった。
その姿に超井信行は
「この攻撃を受けてまで生き残った者は今までいなかったな」
空技は血が大量に入ってほぼ回らない口で、
「俺の…父さんも…この攻撃で?」
一つの質問をした。
「そうだ。お前の父はこの攻撃を喰らって四肢が千切れて泣いていたがな」
空技は目を見開く。なぜなら空技の前で父は強い所しか見せていなかったからだ。
「そう…かよ」
空技は今、出血が多すぎる。もう数十秒で動けなくなる。
特に酷いのは腹。先刻に受けた傷の上に斬られたせいだ。
「その身体でどこまで動けるかな?」
超井信行は空技を試すように煽る。
「多分もうすぐ死ぬけどよ。お前だけは殺す。」
とだけ言い、左手で刀を胸の前に持ってきて、超井信行に向けるのであた…
超井死ぬかもね