拾 天と超、刹那の戦 弐
ごめんね
「分かった。受けてたとう」
人間の瞬き程の時間、止まっていた。
次の瞬間、紅い火花がそこら中に散り始めていた。普通の者では見る事すら出来ない。
空技は多くの怪我を負いながらも、互角に戦っている。
ラジコンロボットの右ストレートがが空技の顔の右に少し逸れた。それも空技が右側に顔をずらしたから。
ラジコンロボットが腕を引っ込める瞬間に両腕切り裂き、頸を飛ばした。
感心したように超井信行は、
「刀法ってものを使わなくてもそれぐらいの速度は出せるのか…次」
頸を落とした瞬間には次のロボットが襲ってくる。これはロボットを超井信行の想定外の攻撃で潰さないと、隙は出来ない。
空技はロボットの猛攻を避けながら考えていた。
(コイツの別と違う点は自分が攻撃していない所。少し遠くにいるせいでロボットをいくら倒しても埒が明かない…)
超井信行はあえて自分のロボットを相手に攻撃させる事で、相手の攻め方を知る。ロボットの替えなどいくらでも有るのだから。
空技はまだ、刀法を使わずに刀でロボットを十体ほど倒した。
刀法の体力消費量は凄まじい。超井信行との戦いは長期戦になると予測し、出来るだけ使わないでいた。
別の手下との戦いは使わないと無理だった。
超井信行のロボットはそこまで強くない。というかあえて攻撃を受けているようにも感じられる。
そこまで強くないと言っても普通の者には目にも止まらぬ速さである。
(いくらそんな強くないっていっても体力はジワジワ減る…)
「あーもう大体わかった。殺しに行くから」
「!!」
超井信行は今までは、本気では無かった。
(本気じゃない!?そりゃそうか…こんなんだったら赤山も勝てる!)
今まで一体だったロボットが四体に増える。
常人であればラジコンを四体同時に動かせないだろう。
だが超井信行は一つ一つ両手両足で個人最高レベルのパフォーマンスができる、超人。
空技も今度は一旦見る事にした。
と、思った途端、もう腹は四つの腕に殴られていた。壁にぶつけられ、爆裂拳を叩きこまれた。そこで、何か異物を体内に入れられた気がした。
まだ、速さも全速力ではなかった!
(四つ全部を殴り合わせないでなんで動かせる?!)
殴り終わった瞬間空技は凄まじい量の血を吐く。
空技はでまかせの嘘で、
「お前の本気はその程度か?一発一発が軽いんだよ」
「そんな簡単な煽り乗らねえよ」
そんなことは百も承知、どうでもいい。
今の狙いはこれで一瞬でもロボットの動きを止める事。
狙いは成功した。その止まった一瞬で超井信行の元へと全力で走る。
(このまま、頸を斬る!)
超井信行との距離は十メートル。まだ後ろのロボットとは五メートル程差が有る。
空技は油断していた。そこまで強くないな、と。
「バカが」
超井信行はまだ手の内を隠していた。それもそのはず、戦いが始まってから数分で手の内を全て曝け出すバカがいるわけがない。
空技は気付いていなかった。最初のロボット達は何処から出していた?
「あ」
そう。一体一体のロボットは超井信行の後ろに有る、窓から取っていた。
超井信行に全速力で走っている空技はもう一つのロボットと正面からぶつかってしまった。
「うっ…」
狙ったかのようなタイミングで挟まれ、いくつもの腕が飛んでくる。
(五体か…!)
そこから数秒経ってもロボットが空技を殴った音は聞こえなかった。
「は?」
「天之流刀法」『弐』 八重斬
「全方位への斬撃か!赤山との戦いでそれを見せてたなあ」
赤山の言っていた事は正しく、やはり超井信行は今までの戦いをモニターで見ていた。
「そういや赤山裏切ったんだよなあ。アイツはそこそこ信用してたのに」
「そこそこかよ」
と、言い終わった瞬間にはもう戦いはもう一度始まった。
そこからロボットは動きを変えてきた。
(そうか…コイツが強い理由!無数の戦術か!)
今度のロボットは三体で腕で二体、足で一体操作していた。
動きは、簡単に言うと戦闘不可にさせるための物。
実際空技は三体のロボットに刀の側面を大量に狙われていた。
「ク、ソ、が!」
刀は側面からの衝撃に弱い。よく折れるのだ。
空技は今、超井信行に攻撃する事など考えている余裕なんて無かった。
(うっ…避けきれない…)
「天之流刀法」『参』 空裂
空裂は空気ごと斬るため、貫通して何体か巻き込みやすい。
そこで斬る事が出来なかった一体が蹴りを入れてきた。
空技はとっさに刀を守ろうとしたが、狙いは刀身ではなく、柄であった。
蹴りは刀に当たり、予想外の事で刀は手から離れた。
(これは…使うしかない!)
「手の内を明かしてないのはそっちだけだと思ってたのか!!」
空技はもう一撃を叩きこもうとするロボットに、拳で向かっていった。
眠いっす