マキナ。
ググルルルルル!!
そんな唸り声が響く中。
「うーん、これじゃわかんない? なら」
——ねえアーシャ。ちょっと身体、貸してくれない?
え? どういうこと? ファフナ、そのままでも天使の姿になれるでしょう?
以前はちゃんと天使な少女の姿に変身したもの。今回もそうしてくれるものだと思ってたのに。
——あたし、この猫のままだと半分だし、白竜と、もしも戦うことになったらちょっと敵わないもの。アーシャと合体したらグラムスレイヤーも使えるし。
そっか。じゃぁしょうがないですよね。いいですよ!
わたくしがそう心の中で答えるのが先かファフナが言い終わるのが先だったか。
ゲートからもう一度魂の中に潜り込んできたファフナ。
そのまま心の奥の一番中心にまでたどり着いて。
「マジカルレイヤー!!」
それは、ファフナの声だったのか、わたくしの声だったのか、もうわからなくて。
光の膜に、天使『マキナ』のその神々しい姿が映し出され、わたくしの身体に覆いかぶさりました。
っていうか、ファフナの真名?
マキナって。
——うん、実はそう。あたしは『マキナ』。デウス様の片腕、マキナ。でも、この世界の神とはちょっと違うの。あたしが居た世界はここと同じだけどこことは違う、そんな世界だったから。
わからない、けど。
今なら理解できる。
あたし(わたくし)は今、一つに融合しているから。
ファフナの、マキナの、そんな心がどんどん流れ込んでくる。
キュルキュルキュル!!
目の前の白竜の口がパッカリと開き、その中でエネルギーが凝縮してゆく。
もう、こちらを見てもいない白竜は、完全にブレスの発射態勢に入っている。
あ、だめ!
あれは白竜のブレス、真空相転移!!
あんなものを浴びたら一瞬でこの世界が吹き飛んじゃう!
あたし(わたくし)は、左手を白竜に向け、そこにグラムスレイヤーを変化させた魔ギア、ドラゴノバの砲塔を作り出し。
そこに真那を凝縮させる。
「やらせないから!!」
ブレスにはブレスを! そして、ディラックトランスを相殺させうるだけの力を!
「紫香蓬莱!!」
全てを包み込み、そしてそのマナまでもを崩壊させうるブレス。
そんな権能を解放して、白竜に向かって放った。
♢ ♢ ♢
左手でブレス。右手でアウラの加護を張り巡らせていた天使マキナ。
主神デウスの片腕。
全ての加護を司る、魔皇神、マキナ。
彼女に使えないスキルは無く。
彼女に出来ないことは無かった。
そう、半身でさえなかったら。
それでも。
光を押さえ込み、包み込むそのアウラの加護は。
この地下の空間を崩壊させることなく、その爆発的なエネルギーを抑え込んだ。
そして。
白竜ごとアウラの加護で包み込み、それをそのまま自身の魂に飲みこんだ天使マキナ。
その姿は、だんだんと変化して、元のアナスターシアの姿へと戻っていった。
マキナ(ファフナ)はその中で抑え込んだ白竜に相対するのだと、そう言い残して。
♢ ♢ ♢
空中でアナスターシアの姿に戻ったわたくし、もう完全に脱力し、そのまま地上へと落ちていった。
ああ、このまま落ちたら怪我をするなぁ。
そんなふうに思うものの、体がいうことを聞かなくて。
「アーシャ!!」
そんなわたくしを受け止めてくれたのはナリス様、だった。
「アーシャ、アーシャ、大丈夫かアーシャ!!」
わたくしの顔を覗き込み、そう心配そうなお顔をするナリス様に。
「ナリス様。大好きです……」
そう、それだけをなんとか口にした。
多分、きっと、このことを伝えたくて。
ここまで飛んできたのだ、と。
そう、感じて。
そのまま意識を失ったわたくし。
ナリス様の、「アーシャ!」とわたくしを呼ぶ声だけが、耳の奥に残っていた。
わたくしはこの時、きっと、笑顔を浮かべていたとそう思う。
だって、ナリス様に抱かれた身体がとても心地よくて、幸せな気分だったのだもの。
ごめんなさい。
ここでしばらくお休みします。




