ナリス様のもとへ。
「わたくし、ナリス様のところに行かなくっちゃ!!」
いきなり立ち上がってそう叫ぶ。
「アナスターシャ!?」
ああ、お父様ごめん。
「どうしたんだ!? アナスターシャ! 私との話はまだ終わってないじゃないか!?」
目を見開きそうこちらを凝視するレムレス様。
でもごめんなさい。
ゆっくり説明している暇はないの!!
光の粒が湧き上がる。
わたくしの周りにギア・アウラが集まって、光と共に身体を包み込んでいった。
背中に四枚の天使の羽根が、ふわんと浮かび上がったのを感じる。
これで、きっと、どこまでも跳べる。
そう信じられた。
——うん。いけるよ! 今のアーシャなら、どこまでだって跳べる筈!
心の奥底にあるデウスの鍵、グラムスレイヤーを目の前に顕現させる。
ブン! と、浮き上がったそれを、両手で掴んで。
頭の上に持ち上げ振りかぶった。
「「「アナスターシア!!」」」
お父様、両殿下、三人の声が重なって。
驚愕の色をもって、わたくしを呼んだ。
ごめん、別にこの剣で誰かを切るわけじゃないから!!
目の前にいるレムレス殿下が、まるで怖いものでもみたかのように目を見開いている。
「ごめんなさい。レムレス殿下。わたくしは殿下の謝罪は理解しましたし、受け入れました。でも、元のように戻ることはもうできません。そんな気持ちにはどうしてもなれません!」
そこまで一気に捲し立ててお父様の方に振り返る。
「父様、母様、ごめんなさい。わたくし、急いでナリス様のところに行かなくっちゃならないの!」
「え? どういうこと? ナリス兄様に何かあった?」
「ええ、マギウス様。わたくしにはみえました。ナリス様が危ないの!」
いきなりこんな事を言ってもきっとみんな信じてはくれないだろう。
だけど、行かなくっちゃ。
部屋の中央で、ブワんっと床から浮き上がっていくわたくし。
——アーシャ、そのままデウスの鍵でナリスとの空間を繋ぐわよ!
うん。ファフナ。お願い!
「頑張って、アナスターシア。貴女ならできるわ」
「ありがとうお母様。行ってきます!!」
剣の先が空間に楔を入れる。
深淵の黒と深紅な赤が渦巻いて、そこに扉が開いた。
あの先にナリス様がいる!
背中の四枚の羽根が、ぶわんと羽ばたくと、わたくしは一気にその先に跳んだのだ。
♢ ♢ ♢
黒と赤の渦巻きを突き抜けると。
そこには。
目に前には。
白い、大きな竜の顔が、あった。
——白竜!!
知ってるの!? ファフナ!?
棘のようなツノがいっぱいに生えた大きな顔。
背後、背中には亀の甲羅のようなものも見える、巨大な怪獣がそこにいた。
全身は、全体的に白っぽく。
その鱗の一枚一枚が白く、薄く、透き通るように光っている。
「アーシャ!? どうしてここに!」
振り向くとそこには、満身創痍になりながらも無事に二本の足で立っていらっしゃる、そんなナリス様の姿があった。
ナリス様の手前にうずくまっているのはヴァレリウス。
ああ、きっと彼はずっとナリス様の盾であろうとしたのだろう。
その服も、顔も、ひどい傷がいっぱいに走っている。
「キュア、ヒーリング!!」
右手のひらを後ろに回し、キュアのヒールをかける。
金色の粒子が舞い、一瞬で彼を包み込んだ。
「無事で、よかった……。ナリス様……」
それだけ言って、また前に向き直る。
本当はナリス様に抱きついて無事を喜びたい。
だけど、今は。
まず、これをなんとかしなくっちゃ!
「アウラ、ウォール!!」
竜とナリス様の間に次元の壁をはる。
ここは、洞窟の中?
周りの壁が随分と脆い。
わたくしが生み出した壁がふれた土壁が、ぐずぐずと崩れる?
だめだ。
こんなところで暴れたら、みんな生き埋めになってしまう。
竜も、わかってる?
その気になればこんなところ、一瞬で崩壊させることができるだろうに。
きっと、今はまだそうならないようにと意識をしているの?
——白龍!! あんた、あたしのこと、わかる!!?
え? ファフナ?
わたくしの魂の中にいたファフナが、ヒョンと飛び出してその白銀の毛を逆立てて、そう叫んだ。




