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主人を見つけた子犬のように。

「アナスターシア!!」


 わたくしを見て、満面の笑みを放ちながら飛びついてくるレムレス殿下!


 え? どういうこと!?


 まるで主人を見つけた子犬のように駆け寄ってくるその殿下に唖然として。

 あまりにもその行動が意外すぎて、思考が停止して立ち尽くしてしまったところで。

 わたくしに抱きついてこようとしたレムレス殿下を背後から殴って気絶させたもう一人の男の子。


「まさかこんなところでアナスターシアさんに会えるとは思っても見なかったから、兄さんタガが外れてしまったみたいで、驚かせてごめんね」


 そういう彼。まだほんの少年にしか見えない彼は、その亜麻色の髪をフワッとかき上げてウインクする。


「えー!!? あなた、マギウスさま? ですか?」


 間違いない。

 ナリスさまと同腹の弟君。

 魔道士の塔でナンバーツーの地位に上り詰めているとナリスさまがおっしゃってた、マギウス殿下その人。


 まだ十二歳、この春に貴族院初等科を卒業なさったばかりのお年のはずなのに、何だかすごく大人に見える。


「ふふ、再会できたのは嬉しいけれど、そろそろここを出ようか? 赤髪狐たちは退治してくれたんでしょう? 反応が消えたからわかるよ。それに、この少年を早く治療してあげたいしね」


 そういうマギウスさまの背後には、一人の少年が寝かされていた。


「ナクル!」

 後ろからそうカイトさんの声。


 はっと振り向くと、にいさまに指示されたのか皆跪いている。

 にいさま、この方が王子殿下だって気が付いたのね。


「わたくしがナクル少年を治療します!」

「ああ、そっか、アナスターシアは聖女だったね。じゃぁ任せるよ」


 そう言って、場所を開けてくれるマギウス殿下。

 わたくしはその横を通ってナクル君のそばに寄ると、彼の手をそっと取って容態を見て。

 うん。脈はしっかりしてる。

 傷も、そんなになさそう。

 疲れと疲労、それと少しの打撲、かな。

「キュア! ヒール!」

 そこまでのキュアはいらなさそう。わたくしの周囲にふんわりと顕現した金色のキュアたちが、ナクル君の体に降り注ぎ潜り込んで。


 ボワっと彼の体が金色に光り、おさまった。


「うう……」

「ナクルさん? 意識が戻りました? ミラさんが街で待ってます。帰りましょう?」

「ああ、天使さま、ありがとうございます……」


 まだ意識がはっきりしないのか、わたくしのことを天使と誤認したナクル君。

 少し体を起こして周囲を見渡して。


「大丈夫かい? この人たちが助けてくれたんだよ」

「ああ、マギ君、ありがとう助かったよ。レム君は?」

「はは、兄さんはちょっとここで気絶してる。命に別状ないから大丈夫だよ。赤髪狐はここにいる屈強なお兄さんたちが倒してくれたみたいだから、もう大丈夫。外に出られるよ」


 はう。

 どうしてレムレスさまとマギウスさまがナクルくんと一緒にいるのかはわからないけど、よく見たら殿下たちったら冒険者ふうな旅装束をしていますし、身分を内緒にしているみたい?


 なら。


「ジャフさんたち、ごめんなさい。そこで気絶している男の子って持てますか?」


「お嬢様?」


「にいさまごめん、レムさんとマギさんをお屋敷まで案内したいの。いい?」


「ああ、わかった」


 にいさまはそれ以上何も言わず、ナクル君の手をとって起こしてあげて。

 ダンさんがレムレスさまを担いで、何とかみんなで坑道を後にした。

 丘を降りたところでレムレスさまが気がついたけど、マギウス様に何かを言い含められ、その後は大人しくついてきて。


 もう日が暮れてしまったけれど何とか街に帰り着いたわたくしたち。

 泣いてナクルくんに抱きつくミラくん。

 神妙な顔でこちらを見るジャフさんたちにお礼を言って彼らと別れると、きた時の馬車に乗り込んでお屋敷まで帰ったのでした。


 ああ、目の前に、レムレスさまとマギウスさまがいるのだけは、きた時とちょっと違ってましたけど。

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