同情。
とはいえ。
レムレスがもう足が痛いだの歩けないだのと言い出すものだから、旅は遅々として進まなかった。
予定では今日中に次の町まで行きたかった所。
このままではまた野宿になるかと諦めかけたところで。
「野宿は嫌だ。もうあんな虫がいる地面で寝るのは」
と、そう喚くレムレス。
「にいさんがもう少し頑張って歩けば次の町に着けますよ。さあ急ぎましょう」
「なあ、馬車も馬も使えないのはわかった。でもどうしてこんな歩きにくい舗装もされていない道を行くんだ? 紅い街道を通ればいいじゃないか。あちらだったらもう少しは歩きやすいはずだろう?」
「にいさん、あなた、ご自分のお顔が民衆に知られている可能性をお考えになったら、そんなことは言えないと思うのですけどね? トラブルになる危険はなるべく避けるべきですし、そのためにこうして裏道を歩いているんじゃないですか。最初に説明しましたよね?」
「ここを歩いていたって賊に襲われる危険はあるじゃないか」
「賊にだって襲うメリットデメリットがあるわけです。真っ当な道を歩いているお金持ちそうな人間は襲っても、こんな裏道をコソコソ歩いている新人冒険者を襲っても何のメリットもないでしょう?」
それに。
実は周囲には影が数人常に付かず離れず護衛としてついてきている。
当然魔道士としても相当の実力者を選んできているし、剣士としての腕前もそこいらの騎士よりも上の人間が数名だ。
戦力的には、破壊力だけなら通常兵力一個師団に相当する。
だから賊に襲われる心配はほぼないのだけど。そう思いつつレムレスにはそのことを伝えないマギウス。
伝えてしまえば甘えるに決まっている。
それは避けたい。
それだけの理由ではあったけれど。
何とか頑張って足を早めるレムレスに、
(ほら、やればできるじゃないか)
とそう微笑ましく見守るマギウス。
先はまだ長い。
このペースであればサイラスの帰郷に間に合わないかも知れないと焦りもあるけれど。
そこはそれ、マギウスにとってみればそれはどちらだって構わない。
レムレスがもう少しだけでもマシな兄貴になってくれさえすればそれでいいのだ。
でなければ、本当にナリスに切られてしまう。
ナリスが国のためには時として非情な決断をするところを、マギウスは幼い頃よりよく見ていた。
今回の事であっても、実は既に証拠も固めていた。マギウスが魔道士の影を使いカナリヤを捕らえる事も可能だったはず。
だから、本当だったらもっと穏便に解決する手段はあったのではないか?
そう疑問に思って。
もしかしたら、レムレスを、王太子としての器ではないと排除する為に機が熟すのを待っていたのではないか?
そんな可能性は十分考えられた。
(ナリス兄様だったらそこまで考えていたかも知れない)
だからこそ、逆にマギウスはこうしてレムレスに同情してしまうのかもしれないな。
そうも思うのだ。




