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レティシア様。

「まあまあアーシャ。大きくなったわね」


 そう出迎えてくれたお婆さま、レティシア様。

 夜色の綺麗な髪、お父様とよく似た顔立ちの美しいお婆さまは、まだまだお婆さまと呼ぶには申し訳ないくらいにはお若く見える。

 だからわたくしも小さい頃からお婆さまの事をレティシア様って呼んでいるのだけど。


 大きくなったって、わたくしってそんなに変わったのかしら?

 そういえば前にお婆さまにお会いしたのは聖女に選ばれる前だから、そう考えるとわたくしも少しは成長しているのかしら? と、そう嬉しくなる。


「お久しぶりですレティシア様。お会いできて嬉しいです」


 わたくしはそう淑女の礼をとる。

 わたくしだって3年も聖女の職を勤め上げた立派なレディなのですもの。

 いつまでもお子様にはみられたく無いってそんな思いが先に来て。


 前にお婆さまにお会いした時はそういえば会うなり思いっきり抱きついてしまっていたかしら?

 とか。

 いっぱい甘えてしまってたかしら?

 とか。

 少し恥ずかしい思い出が頭をよぎって。


「ふふ。もうすっかり大人の女性に見えますね。さあアナスターシア。まず旅の疲れを落としに温泉に入りましょうか? 入浴の準備は整っていますよ。その後で晩餐にいたしましょう」


 そう手招きするレティシア様。


「ああ、猫ちゃんも一緒に入ります?」


 と、最後にそうわたくしの胸につかまって丸くなっているファフナにもそう笑顔を見せる。


 にゃっとびっくりしたようにわたくしの顔を見つめるファフナ。

 あー。

 このお顔は、お風呂入りたくないってお顔です。


「ありがとうございます。ファフナはお部屋で休ませますわ。長旅で疲れているみたいです」


 と、侍女のアンミラにファフナを預け。


 ——お風呂に入ったら寝ちゃいそう。だからあたしはお部屋でゆっくりしてるわね。


(ええ、そういうことにしておきますね。ファフナ。ゆっくり寝てて)


 そう心の中で会話をし、わたくしはお婆さまについて浴場へと向かいました。




 白亜の壁の綺麗な浴場は、帰省した時の楽しみの一つです。

 ぽっかりと口を開けた大きな猫の顔の彫像から、こんこんと沸き出すように注がれる手触りのいいサラサラとしたお湯。

 大きな湯船は子供の頃にはそこで泳ぐ真似をしてはしゃいだものですが、今はわたくしももう大人ですもの、足元から優雅に浸かり、はふうと声を漏らします。


「アナスターシアももうすっかり大人になったわね、月日の経つのは早いわ」


「ありがとうございますレティシア様。わたくしももう十五ですもの。いつまでも子供ではありませんわ」


 と、そう言ってはみたものの。


 こうしてお風呂に一緒に入るとどうしても意識してしまいます。


 お婆さまは本当にまだまだ若々しくて、お胸もこんなにも豊満なのに。

 わたくしの胸はどうしてこんなにもスレンダーなのだろうか、と。


 そんな事を考えたら、気分もシュンと落ちてしまいました。


「大丈夫よアーシャ。あなたはまだまだ成長期なのですもの。これからよ?」


 わたくしのそんな顔を見て察したのでしょうか。お婆さまにそう慰められて。



 最後に、専用湯船で侍女さんに髪をゆったりと洗ってもらったわたくしたち。

 体も気分もほかほかになってお風呂から上がったのでした。

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