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勝負の駆け引き

 世の中にはルールがあるからこそ、楽しめるものもある。

 たとえ刀を手にしていようが、人を殺せる威力の技が使えようが、これは試合だ。

 

「あのテーブルを割った術みたいなのは、本来人間相手に使う技じゃないから、よっぽどのことがない限りは使わないから安心していいよ。

 対人戦闘にビ●・ザムを投入するようなものだからね。

 さすがにそれは無粋でしょ」

 

「たとえの意味がよく分からんが……そうしてもらいたいな。

 俺もあれだけは本気でどうしようもない。

 未だに何をやられたのか、よく分からんからな」

 

(しかし……人間相手に使う技じゃないって……。

 一体何に対して使う技なんだか……)

 

 大江は頭の隅で、それが引っかかった。

 この勝負が終わって、ちゃんと生きていたら、彼女に聞いてみることにしよう。

 もしかしたらもっと面白そうなことに、出会えるかもしれない。

 そんな期待を感じながら、大江は沙羅との間合いを詰めていった。

 

 それに対して沙羅は、刀の切っ先を動かして大江の動きを牽制する。

 刀は手首の微妙な動きだけで、かなり大きな動きをすることが可能だ。

 勿論、如何に刀とはいえ、手首はおろか腕の力だけでは、さほど大きな威力は発揮できないので、これはあくまで牽制である。


 しかしそれでも刃物は刃物。

 下手に手を出せば、思わぬ大怪我を負いかねない。

 大江は慎重に間合いを探る。

 

 一方の沙羅も、下手に動けない状態にいた。

 大江の動きを見る限り、彼は打撃主体での戦いを得意としているように見える。

 だが彼は間違いなく、打撃技での勝利は考えていないだろう。


 確かに大江の巨躯から繰り出される打撃をまともに受ければ、それだけで華奢(きゃしゃ)な沙羅の生命は危ういかもしれない。

 しかしそれなりの技術と、反射神経と動体視力を持つ者にとっては、打撃の攻撃を避けることは容易だ。

 また、たとえ喰らったとしても、そのダメージを軽減するような受け方もある。


 だから実力が伯仲していればしているほど、打撃は決定打にはならない。

 それは多くの打撃系格闘技の試合において、お互いに何十発も打撃を打ち合い、更にいくつものラウンドを重ねてもKOがなかなか出ないことからも明らかだ。

 

 そもそも、一撃必殺も有り得る刀との勝負で、打撃を有効打が出るまで打ち続ける余裕など無い。

 だから大江はどの段階かは定かではないが、必ず組技に出るだろう。

 無論組技とて、それに対処する術は存在するが、打撃のそれよりも高い技術が必要な上に、一度組み付かれてしまえば、反射神経や動体視力も役に立たない。

 純粋な力が物を言う場合も多い。

 

 しかも刀による攻撃は、密着状態では威力が半減する。

 先に述べたように、腕の力だけでは刀は真の実力を発揮できない。

 全身を使う動作によってこそ、その真価は発揮される。

 組み付かれて身体の一部だけでも動きを封じられてしまえば、攻撃力は半減したと言っても良いだろう。


 それに下手に相手との密着状態で刀を振るえば、それは自らを傷つけることにもなりかねず、その動きはかなり制限される。

 まあ、相手が刃物を手にしている以上、組みにいった方も決して無傷では済まないだろうが、それでもまともに斬撃を受けるよりは、はるかに安全だ。

 

 そして組み付かれて一番怖いのは関節技だ。

 勿論投げ技や絞め技も怖いが、投げ技は受け身などによってダメージを軽減する術があるし、絞め技も度が過ぎてさえいなければ後遺症も無い。


 だが関節技は手加減さえしなければ()めた瞬間に、下手をすれば一生もののダメージを相手に与えることができる。

 テコの原理を用いての関節の破壊──それが関節技である。

 技を成立させるまでには高い技術と駆け引きが必要だが、一度完全に極めてしまえば、たとえプロレスラー並みの筋力があろうとも、これから逃れることは難しい。

 

 ましてや沙羅と大江ほどの筋力差があると、技術云々を抜きにして、強引に力だけで関節を極めることも、そして折ることも容易い。

 いや、それ以前に、関節を極める必要さえ無いのかもしれない。

 

 おそらく大江ならば、単純な握力だけで沙羅の腕を骨ごと握り潰すことも可能だろう。

 まさに赤子の手をひねるようなものである。

 そしてそのダメージから、短時間で立ち直ることも困難だ。


 だから沙羅が大江に掴まれた瞬間に、勝敗は決まると断言しても良いだろう。

 おそらく大江はそれを狙ってくる。

 それが刀を持つ沙羅に勝つ手段としては、最も確実で安全だと言える。


 他にも絞め技で意識を奪う方法もあるが、これはたとえ沙羅がおちたとしても、ギブアップさえしなければ、ある意味負けていないとも言い張れるので、そんな曖昧な決着よりは、もっとハッキリとした勝敗を大江は望むはずだ。

 

 ただ、問題はどうやって沙羅に近づくか──であるが。

 沙羅も大江に組み付かれた時の危険性はよく理解しているので、彼の接近は絶対に許すつもりは無い。

 彼女は刀で大江を牽制しつつ、間合いを慎重に計り、組み付かれる危険性を感じるほどに間合いが詰まれば身を引く。


 それでいて大江に付け入る為の隙も、(うかが)っている。

 しかし隙らしい隙は、なかなか見つけられなかった。

 風邪気味なので、今晩の更新はこれっきりです。

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