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誘い込み

 今夜2回目の更新です。

(ありゃ……?

 あれだけ脅かしたのに、もう尾行がついてるよ)

 

 壮前(さかざき)建設を後にした沙羅は、尾行されていることに気がついた。

 先ほどから付かず離れずで、背後についてくる気配がある。

 歩行のスピードを変えても相手との距離が変わらないので、まず間違いない。

 しかも複数だ。

 

 おそらくは先ほどの騒ぎの報復か、拉致目的だろう。

 しかし壮前側も、大した勇気である。

 沙羅とことを構えることは、まさしく命懸けになるであろうことを、思い知ったばかりであろうに。

 いや──、

 

(ちょっと脅かしすぎたかな……?)

 

 追いつめれば、鼠が猫を噛むことだってある。

 沙羅をどうにかしなければ、自分達は生き残れないと考えた者が、壮前側の人間にいたのだろう。

 まあ、その認識は間違いではない。

 沙羅は壮前建設を、本気で潰すつもりでいたのだから──。

 

 だが戦う意志が無く、逃走する者がいたとしたら、わざわざ追いかけてどうこうするつもりは無かった。

 沙羅の目的は組織を潰すことであって、個人を潰すことではないのだ。

 なのに自ら彼女の手にかかりに来るとは、救いようの無い連中である。

 

「ふん……。

 じゃあ手っ取り早く済ませますか」

 

 沙羅はぐるりと辺りを見回して、樹木の多い場所を探す。

 ここは住宅街だから、市街地のビルの谷間の中よりは見晴らしがいい。

 目的の場所はすぐに見つかった。

 

 沙羅はその場所に向けて、歩みを進める。

 それは公園だった。

 公道で反社会勢力とことを構えるよりは、広さのある公園で決着をつけた方が良いと、当然と言えば当然の判断を彼女は下したようだ。


 遊具などが置いてある幼児向けの狭い所では話にならないが、ある程度大きな公園ならば、多少大暴れしてもあまり他人の迷惑にはならないし、樹木が多ければ人の目も避けられる。

 

 沙羅は公園の入り口に辿り着くと、懐から御札のようなものを取り出して、それを門柱に貼った。

 それが終わると彼女は、そのまま公園には入らずに何故か公園の外側に沿って歩き出す。

 そして出入り口となる場所を見つけると、また札を貼り付けてその作業を繰り返し、ついには公園を一周した。


 その作業が終わった沙羅は、ようやく公園に足を踏み入れる。

 それから彼女は、外からは見えにくい位置にあるベンチを見つけて、そこに腰かけた。

 そのまま暫し、ことが起こるのを待つ。

 

 やがて、沙羅の前に5人の男が姿を現した。

 全員が一様にチンピラという名の型にはまった風体で、ある意味無個性なそれぞれの姿をあえて記憶する必要は全く無い──と、沙羅は感じていた。

 実際、この5人の内の一人は、壮前建設で沙羅と直接顔を合わせているが、彼女にはそれが誰だったのかよく思い出せなかったし、興味も無かった。

 

 だが、そんな彼らについてあえて特筆することがあるとすれば、皆、若いということだろうか。

 やはり髭を生やしていたり、パンチパーマ等の今時の若者にはほぼ有り得ないような髪型をしていたりするのでイマイチよく分からないが、たぶん全員が二十歳前後だろう。

 

 おそらくつい最近まで、暴走族か何かをやっていたのを引き抜かれて、組の構成員となったことが伺える。

 とりあえず名前が無いと不便なので、彼らを便宜上「ゲドウ・チンピラA~E」と呼ぶことにする。

 

「なるほど。

 若さ故の暴走、そして怖い者知らずと言ったところか」

 

 あまり年齢が変わらないのに、沙羅はしたり顔で頷いた。

 そんな彼女を取り囲むように、チンピラ達は近寄ってくる。

 

「馬鹿な奴だな……。

 わざわざ人気の無い所に入り込むなんて。

 叫んだって助けなんかすぐ来ないからな、覚悟しろよ」

 

 おそらくリーダー格のチンピラAの言葉を受けて、沙羅は「アハハハハ」とわざとらしく笑う。

 完全に舐めきっていた。

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