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これからの話

 沙羅による除霊があっという間に終わってしまったことを、奈緒深(なおみ)(いぶか)る。

 事実、奈緒深には霊を()ることができないので、本当にこの家から霊がいなくなったのか、それを確かめる(すべ)が無い。

 そんな奈緒深の不安を見抜いたのか、沙羅は明るく笑った。

 

「心配しなくても、大丈夫だってば。

 なんなら一ヶ月位様子を見て、それで何もなかったら依頼遂行ということにしてもいいし」

 

「いえ……別に疑っているという訳では……」

 

 と、言いつつも、疑っていたのは事実なので、奈緒深は小さく肩をすくめた。

 

「でも、こんなにあっさり片付くものだなんて、私、知りませんでした……」

 

「ああ、他の同業さんじゃこんなにあっさりはいかないよ。

 うちはどちらかというと、もっと凶悪な連中を相手にするのが専門だからね。

 だから私達にとっては自縛霊程度は大したことなくて、本気でやれば秒単位でやれるよ。

 あまり早いと客に胡散(うさん)臭く見られるから、適当に手を抜くけどね」

 

「はあ……」

 

 実働時間がたったの10分でも、十分胡散臭いと奈緒深は思う。

 というか、胡散臭い云々よりも、そんなことを暴露している時点で、客商売としては致命的であるような気がした。

 たとえ依頼をきちんとこなしていたとしても、手を抜いて行われた仕事に正当な料金を払うのは、誰だって嫌だろう。

 

 ただ、そんな自身に不利なことでも包み隠さずに話してしまう沙羅の態度が、逆に信用するに値すると奈緒深に感じさせてしまうのは、彼女に人徳というものがあるからなのだろうか。

 

「とにかく霊についてはこれで一応解決だけど、まだ問題は残っているね」

 

「え?」

 

 沙羅の言葉に、奈緒深はまだ何かあるのかと身構える。

 1つの問題を解決しても、すぐに次の問題を提示することによって、依頼を引き延ばして段階的に料金を請求するのは、悪徳商法の手口だと先ほど沙羅自身が言っていた。

 

「ああ、そんな身構えない。

 別にこれ以上は、奈緒深さんの負担にはならないと思うよ。

 ただ、何故自分が霊に襲われたのか、その理由は知りたいでしょ?」

 

「え、ええ……。

 それはまあ……」

 

「じゃ、詳細を説明しましょうか」

 

 と、沙羅は近くにあったソファーへと、勝手に腰を下ろす。

 奈緒深もその隣に腰を下ろした。

 

「え……と、今回の事件の原因は土地にあるみたいなんだ。

 ここは昔、お寺だったって言っていたでしょ?」

 

「ああ……そういえば……」

 

 そこで、奈緒深は何かに気づいたようで、ものすごい勢いで青ざめていく。

 

「おっ、お寺と言えばお墓ですよね!?

 そして昔は土葬ですよね!?

 もしかして、私の家の周りに、沢山死体とかがまだ埋まっているって言うんですかっ!?」

 

「ああ、そっか。

 その可能性もあるね」

 

 沙羅の言葉に奈緒深は絶句した。

 霊の見えない彼女にとっては、霊よりも身近に人間の死体があることの方が、現実感を伴っていて怖いことなのだろう。

 実際沙羅だって、自分の家の敷地内に死体が埋まっていると思ったら、さすがに気持ちのいい物ではない。

 

「でもまあ、ここがお寺を廃業したときに、お墓はちゃんと移動させてるはずだから、その辺は心配しなくてもいいんじゃないかな」

 

 その言葉に奈緒深の表情が緩む。

 しかし──、


(無縁仏とかは、残っているかもしれないけどね……)

 

 沙羅は内心でそう思ったが、奈緒深を怖がらせるだけなので口には出さない。

 寺が廃業した際に遺骨はどうしたのか、それは部外者である沙羅には分からなかったが、放置されている可能性も否定出来ないのだ。

 

 現在ならば墓の移転や墓終いは、業者に委託すると数十万円からの料金がかかる。

 それが檀家の墓全て──数十から数百基もの数を寺だけで行うのは、いや檀家の力を借りたとしても、その処理には相当な負担がかかるだろう。

 だからいい加減な処理で、済ませていたということもあり得た。

 

 事実、過去には寺の敷地に親族の遺体を投げ込んで埋葬を押しつける者もいたというほど、遺体の扱いが軽く考えられていた時代もあった。

 つまり、それだけ人の命も軽かったのだ。

 更に言えば貧乏な者も多く、故人の埋葬や供養に割ける余裕が無かった者も多かっただろう。

 

 勿論、奈緒深の先祖が、遺体を雑に扱うような人間だったのか、それは分からない。

 むしろ過去の時代は、現在よりも信心深い人が多かったのだろうし、墓や遺体の扱いは丁寧だった──と、期待しておこう。 

 

 いずれにしても沙羅には、この家の敷地内に葬られた人々の霊の気配は感じられなかった。

 ならばこの件については、何も心配する必要はないだろう。

 不用意に地面を掘り返さなければ。

 

 むしろ、問題は──。

 

「でも、ここには死体より、もっと怖い物が埋まっているかもしれない」

 

 奈緒深の顔が強ばった。

 沙羅の言葉の意味が分からなかったが、死体より怖い物?

 いくら考えてもそれが何なのか、奈緒深にはいまいち想像できない。


 第二次世界大戦中の、不発弾とかだろうか──と、奈緒深は首を傾げた。

 昨晩はワクチンの副反応で寝込んでいたので、更新出来ませんでした。

 他の作品も今週は無理ですねぇ……。

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