2、くらいから始めましょうか。Ⅳ
万物は流転する。ええと、あれは誰の言葉でしたっけ。世界史の参考書のページの記憶を辿り、該当のページを捲る。ああ、見つけました。ヘラクレイトスでした。
電車の揺れを感じながら、参考書を読む。この時間は嫌いではないのです。集中すればするほど帰りまでの距離が短くなるのです。ちらちらと朱色の光が窓から差し込んできますが、それを楽しむことも嫌うこともせずに私はただただつまらなそうにこの本を読んでおります。
同じものはない。何ものも変化していく。万物流転の意味はそんなところでしょうか。
では、永遠は手に入らないのでしょうか。流転しないものは存在し得ないのでしょうか。何だか私も哲学者になったみたいです。
おっと。
今、私が覚えるべきなのは、単語や歴史の流れだというのに、思考はそこで立ち止まってしまいました。これはいけないと思い、また来週のテスト範囲に本のページを戻そうとしていたら、もう駅に着いていました。
急いで電車を降りました。後ろからはドアの閉まる音。ひやっとしましたが間に合いました。
「ふう。危なかったです。」
独り言のつもりで呟いた私の言葉。誰にも投げかけたつもりはありませんでしたが・・・。
「違うでしょ。」
反応がありました。目の前には黒髪の少女というには幼すぎる幼女というには大人びた女の子がいました。夕暮れの朱色に照らされている彼女を見て、私は神々しさを感じました。そして問いました。
「何がでしょうか。あなたは?」
「はぁ。そんな人生じゃなかったでしょ。獣のようなあなたに。人ならざるあなたに。『綻び』の存在のあなたに。戻って。」
呆れた顔で私の問いなんか無視して、彼女はそう言いました。
「・・・ファリア?」
私は名前も知らないはずの彼女を確かにそう呼びました。
「あっ。」
私は今生まれたのです。そして実現したいことがあります。それを生まれながらにして手にしていることを新鮮だと感じました。
差し出された手を握って私は歩き出しました。
遥かなる場所へとたどり着くために。期待に胸踊らせて私は歩き出しました。




