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出来ることなら転生したかった。  作者: ALP
友達になろう。
13/16

2、くらいから始めましょうか。Ⅰ

蝉のけたたましい音にもなれた何日目かの夏の日。アイスキャンディーが思いの外早く溶けて手がベタついたのに気づいた私は急いでそれを頬張りました。


何を食べても満たされない私にとって、アイスキャンディーは口寂しいときにとてもありがたいものです。自然界に存在しない過度に着色されたソーダ色は見ているだけで心が落ち着きます。なんだか私に似ている気がするのです。


このときの私は明確化できないもやもやした感情を溜め込んでいたのでした。ウツボカズラを知っていますか。甘い匂いを出しながら虫を食べる植物です。なんだか私に似ている気がするのです。


何故、私は生きているのでしょう。


あれから半年が経ちました。私は物語を作りました。主人公は力に目覚めて剣を手にし、襲い来る強敵『綻び』と戦う。その力の付与を私が取り行い、一緒に共に生きていく。


アイスの棒を歯でぎゅっと噛むと木と少しのソーダ味がしました。さて。残念ながら、この世界に脅威は存在しません。


はい。そうです。私は嘘を付きました。その嘘によって、彼女達には夢や希望を与えて力を増大させることができました。私は今度こそ、そのまま物語が進行していく信仰にも似た望みを持っていましたが、はい。こちらも残念ながら。欲望、空腹が勝ったのでした。


私がした行為は本当に嘘なのでしょうか。過ちなのでしょうか。『綻び』だってお腹が空きます。そして、その空腹を満たすことが出来るのは私が作り出した物語に配置された『セバイバー』なのです。それが『綻び』。いくら知性があっても乗り越えることは不可能な仕組みです。


不思議な力の対価。それはセバイバーのオーラであり、同時に私が生きるための対価でもあります。どうしようもありません。そういう仕組みなのですから。


晴天と暑さと蝉の音が憎たらしく思えてきました。前言は撤回しておきましょう。


時折、思い出すことがあります。姫が言った言葉です。


『罪悪感なんて抱く必要はないのに。』


姫は私の飢えをいつ理解したのでしょうか。私の力が徐々に弱まっていくことに気付ける筈がありません。それとも、僅かにでもそのように推知できるような言動の変化が私にはあったのでしょうか。考えたところで分かりません。


兎に角、あの言葉を思い出す度に心が締め付けられるように痛むのです。それでも、あと半年もすれば私はまた同じことを繰り返すでしょう。考えるだけ無駄です。とっくに諦めたのですから。


突然、私は歩みをやめて静止しました。


「見つけた。」


それは声が聞こえてきたからです。どうやら私に投げかけられたようでした。今日もまた審判の時が来たようです。


「見つかっちゃいましたね。」


そう答えると真っ白な装束を纏った『スクリプチャー』が私に向かってきました。


迫り来る脅威。いかがいたしましょうか。どうせならば、裁かれた方がましだと私は考えました。


「ま、考えただけですが。」


心と行動は一致しませんでした。私は繰り出された第一撃を防ぎ、剣を弾きました。


勝負あり。力の差は歴然でした。私はスクリプチャーの首を掴んでへし折ることにしました。断末魔というやつでしょうか。右手の力を加えれば加える程に声は高く大きなものになっていきます。耳障りでイライラします。


「そんなに弱いなら向かって来るのを控えてはいかがでしょうか。その決断はもしかしたら、強さかも知れませんよ。放っておけばいいじゃないですか。私だって無駄な殺生なんてしたくはありませんから。今からしますが。おや、何か言いたそうですね。」


パッと手を緩めるとスクリプチャーはむせながら言いました。経営危機にでも瀕しているのでしょうか。青年にもなっていないだろうこんな少年を雇うなんて。私は2歳ですが。


「・・・間違ったものを正すために戦って何が悪い!・・・あああぁっ!!」


憎たらしくなる程に真っ直ぐな瞳をしています。呆れるくらいに馬鹿です。ええ。呆れ果てたので私は再度、首を絞めました。


「つまらない回答でした。スクリプチャーは皆そう言います。指示通達やマニュアルでもあるのでしょうか。果たして、そこにあなたの意思は介在しているのでしょうか?それは目的であって、あなたの行動原理として足り得ますかね。そもそもスクリプチャーってなんなんですか?私があなた達に危害を加えましたか?あれ?現在進行系で加えているかも知れないですね。迷惑をかけるから『綻び』は死んだ方がいい。その言い分は多少は理解出来ます。しかし、それでしか生きられない『綻び』に罪はあるのでしょうか。そういった排他的な態度が私共の憎悪を増幅させるのですよ。おや?・・・おーい。返事がありませんね。」


かつて天使と呼ばれた私はいつの間にか悪魔になっていました。

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