怨まれる被害者 後編
※第8章は22日木曜日の20時に投稿されます※
3日後の4月15日。月輪さんがある意見…というより答えを言ってくれた。
「私は川崎さんが犯人だと思いました。」
「川崎さん…まだ被害者との関わりが浅かった人ですね。」
「中月先輩に,容疑者の靴の写真を撮ってきてほしいと言いましたよね?」
実は,月輪さんにそう言われていた。
「あんな写真で大丈夫でしたか…?」
「えぇ,とても。決定的な証拠が写っていましたもん。」
「え?」
「被害者の死亡推定時刻は12日の3時から4時の間。その時間帯は大雨が降っていました。…そして
あの現場周辺にはぬかるんだ土があったのです。」
「ありましたね。あの,もしかしてですけど…。」
「はい,殺害したときに飛び散って付いたと思われる土の汚れが写ってました。」
妙に靴が汚れているなとは思っていたけど…。
「中月先輩が聴き込みが終わって,川崎さんが帰る際に私独自で聴き込みをしたんです。“よく靴が
汚れることはないですか”って聴き込みをしたんですが,川崎さんは“ないです。ちゃんと洗っているので”
と証言していました。…ですが点々と付いた汚れはあまり気にならなかったのか,気付かなかったのか。
結局,あとで現場に行ったのですが,僅かに飛び散った泥水の跡がコンクリートに付いて
いましたし,ロープからも見つかりましたし。」
月輪さんが今言ったことはすべて正しかった。容疑者は川崎さんで,動機は突発的な犯行だったから
無かったらしい。汚れの件も気付かずに放置していたとか。
…にしても,もし犯行時と同じ靴を履いていなかったならば,どれだけ苦労したことやら…。
いや,よくよく考えたら,風邪を引いていたのは…殺害時に大雨に晒されたため…?
:今話登場人物
:艦艇警察署 捜査一課第3係
・中月遙申
・月輪希々
:その他
・(川崎友奈)