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謎を紐解いて 真打2  作者: キョンシー
第5章 ちょっとした休息
12/22

ちょっとした休息 後編

 4月10日。午前中は2人と長い会話をした。気が付くと正午を過ぎていた。昼ごはんをつくろうと1階に

下りたら,姉さんが既につくっている最中だった。…でも今日は和食じゃないっぽい。

「和食も飽きたころだと思うから,変えてみるよー。」全然飽きていない…それどころか,最近和食を

欲するようになってきている。でもつくり終わる前だったのでそんなこと言えるわけもなく…。

「ん,その顔は和食に飽きていなかったね?」…姉さんは察してくれたみたい。

「ふぁい。」

「そっか。」どこか嬉しそうだった。

黙々と昼食をとっていたら30分が経過していた。姉さんはとっくに食べ終わり,2階に上がっていった。

そしてふと,姉さんがいなくなったらなんていう想像をしてしまった。なんていう想像をしてしまったの

だろう。…でも事件に巻き込まれる頻度を考えたら,いつ死んでもおかしくないような気もする。

もう少しで食べ終わるから後片付けとかして,姉さんのところに行こ…。


 姉さんは仕事部屋にいた。…でもすることは終わっているはず。

「どしたのー?」横で笑顔で聞いてくる姉さん。そんな姉さんの手をぎゅっと握った。姉さんは放心

したかのように口をぽかーんと開けてみていた。

「…寂しいの?」

「そういうわけじゃなくて…。」

「じゃあ寒いの?」

「今の気温22℃ですからそれは無いです。」

「じゃあ単に握ってくれているだけかー。うれしー。」姉さんはにこにこしながらそう言った。…

ほんとこの笑顔が悲しくなるよ…。

「遙申。」急に真顔になった。

「はい?」

「私に関する想像をしたんでしょ?で,怖くなってこうやって私に触れることで,心を落ち着かせようと

しているのかな?」

「わー姉さん凄い…。」

「すっごいでしょー。ずっと一緒に居るから分かるんだよー。」

「なんか察してもらってばっかりですね…。」

「気にしなくていいよ。察するのは慣れているから。」姉さんは笑顔で,そしてきっぱりとそう言った。


 数十分が経過していた。…そういえば,3人来るって言っていたな。

「姉さーん。3人目のお客さんとは?」

「ふぁ?」姉さんは若干眠っていたっぽい。顔が下にむいたまま返答しているよ…。

「あ,えっとね,佐良さんの妹さん。」

「優香さん…?」

「そーそー。同級生だから分かるかー。」

「…男性の来客は無いんですか?」

「今日は無い。気まずい?それとも,異性の目の前だとどきどきするとか?」

「まぁ…どっちもですよ。」

「やっぱ遙申も男性だよねー。そういう面なかなか見ないから安心した。」

こんなことを話している自分が恥ずかしくなったので,話を切り上げた。

「なぁんで切り上げちゃうのー。せっかく遙申が見せない一面が見えていて安心してたのにー。」

姉さんがむーむー言いながら袖をつかんでくる。

とか言っていたら,玄関のチャイムがなった。

 姉さんが向かった数十秒後,優香さんが来た。…優香さんとは同級生なので接点が多いが,佐良さんの

方は全くないので,呼び方が変わってきてしまう。

「佐良の件,ありがとうございました。」と言って深く頭を下げる。

「いえいえ,大丈夫です。」

「佐良は今でも他人を傷つけるようなことができない姉ですから…。しかも私にまで遠慮するから,

前みたいな事件は,佐良には起こせないはずなんです。」

横で姉さんは頷いていた。南海さんを見た時から,犯罪を犯せない人だという印象があったが,

そういう人はたいてい見せない一面がある。でも,南海さんはまるで裏が無いような人だった。

「ところで小遙さん…。佐良,教員を全うできていますか…?」

「そりゃもう,大いに。たまに生徒や私らが呼んでも気づかないときもあるけど,それでも与えられた

仕事はするし,教え方は上手いですし…。」

優香さんはそれを聞いて安心したようだった。

「脳疲労が多いほど着実にこなそうとしてしまう佐良なので…。」

「家の方で支障は出ていない?」

「全然。なんなら家でも働きますよ。家事もしますし,雑事もしますし。必ず私が佐良につくように

しているんですけど,“優香は休んでていいよ!”って言うんですよ。…一番休まなきゃいけない人間が

こう言うと胸が苦しくなります。…でも私,佐良に任せちゃうんですよね。自分が代わりにしないとって

思うんですけど,佐良の優しさに甘えちゃって…。」

さっきまでの笑顔を交えた回想ではなかった。今にも泣きだしそうだった。




 その後,姉さんがなだめて,見送られる形で中月家を去った。…この世の仕組みとして,優しい人ほど

社会の闇に巻き込まれやすい。南海さんだってそうだし,これまでいろんな人が巻き込まれてきたのを

見た。

「遙申。佐良さんはいつか絶対大変な目に遭う。」

と姉さんが言っていた。…確かに遭いそうだけど,断言してしまうほどなのか…?でも,自分より

姉さんの方が南海さんと接点が多いのだから,察してしまうのだろう…。

今話登場人物

中月なかつき

小遙こはる

遙申はるた

:その他

南海みなみ優香ゆうか

・(南海みなみ佐良さら

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