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第29話 黒白の狂獣


 俺は腰の袋に手を添えた。

 中にはガイアコアが入っている。


 どうする?

 変身するか?


 いやいや。救世戦士アスガイアーは大聖王国の所属だって大陸七国の会談で言ってあるから、安心して行っておいでって、サイロスさんが言ってたじゃねえか。


 さっきまで両軍を小突き回してたのが、アスガイアーだってバレるのは不味い。

 サジーさん。適当に戦って、そのスキに全軍を退却させようって。

 国境付近に恐ろしい魔獣が出るって知らしめて、戦争を起こさせないようにしようって言ってたのに。

 俺を殺せる威力の攻撃を連発してきた。

 

 いいよいいよ。

 サジーさんがなんのつもりか分かんねえけど。

 俺が主導して打ち合わせ通りにしてやる。


 サジーさんをハイエナ男のまんまぶっ飛ばして!

 この国境に恐ろしいヤツがいるって知らしめてやるよ!


 ダルダム団に改造されて!

 タチバナのおやっさんに改良された超怪人! 

 ハイエナ男を舐めんじゃねえぞ!


 ウオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!


 俺は咆哮を上げて遠くのヤツ等を牽制し、かぎ爪を出してサジーさんに向かう。

 サジーさんはまた小さい魔法陣を出して、金色の刃を連続で俺に放出してくる。

 それをかぎ爪で叩き落としていくけど、威力と数が多すぎて足が止まっちまった。

 気が付くと足元にサジーさんが。

 身構えようとするも、どてっぱらに衝撃。

 痛ったぁ!

 さっきの白い魔素で殴られたのか!

 こりゃスピードじゃねえ、転移だ。

 魔素の流れが緩やか過ぎて分っかんねえ!

 ガイアセンサー使えりゃ捉えられるのに!


 爪撃を飛ばそうにも避けられたら後ろの大皇国の連中に当たっちまう。

 格上相手にハンデが多すぎるぞ。

 お。


 俺は吹っ飛ばされた後、地面を削りながら着地。

 そのまま両手で爪撃を飛ばす。


 サジーさんは飛び上がって、いつの間にか浮かんでいた雲みたいなモンに乗った。

 斬撃は大皇国軍に向かうが、翠色の風壁に防がれる。


 マキマキだ。

 助かるわホント。


 俺は跳び上がってサジーさんに向かう。

 ぴょんと雲から降りて俺の突進を避けたサジーさんに、振り向きざまズババと爪撃を繰り出す。

 転移で消えるサジーさん。

 地面に爪痕が大量に刻まれた。


 消えたまま姿を見せない。

 どこ行った?


 きょろきょろしてると、空中にまた魔法陣が大量に浮かんだ。

 四方八方からまた金色の刃が飛んでくる。

 ジグザクに走って回避するけど、サジーさんの姿はまだ見えない。

 魔法で隠れてんな?

 

「ウオオオオオン!!」


 咆哮を上げて、音の衝撃破で魔法陣を破壊していく。

 360度ぐるりと咆哮を飛ばし、音の反響が他と違った箇所に爪撃を飛ばした。

 サジーさんが姿を見せる。

 高級そうな紫の貴族服が破れて血が出ていた。


 やっとダメージ食らわせたよ。

 俺は辺りを見渡す。


「ボケっと見てっと全員食っちまうぞぉ!! この平原は俺の縄張りだぁ!! とっととシッポ巻いて家に帰りやがれぇ!!」


 腹から声出して叫ぶ。

 狼狽えながらザワザワしてる両方の軍勢。

 早くどっか行ってくれ。

 正直しんどい。


 サジーさんが手をかざしてこちらに向ける。

 手の平には白い魔素がぎゅるぎゅると渦を巻いていた。

 白い魔素がボンっとすごい勢いで飛んでくる。

 俺は両手でガードするけど、ボンボンと幾つも飛んできて両手がめちゃくちゃ痛い。

 砂ぼこりが何度も舞う。

 その様子を見てまた大勢の歓声が聞こえてきた。


「凄い! 圧倒している!」


「《黒白の狂獣》と言ったか!? 恐ろしい強さだが《銀伯爵》に敵うものか!」


「ふはは! 見たか大共和国! 我らが英雄の雄姿を!」


「大皇国め! そのような事を言っている場合か! 《銀伯爵》様! 《黒白の狂獣》に鉄槌を!」


 エライ人気者じゃないのサジーさん。

 長いこと人気取りしてきた成果かね。こりゃコイツ等、退却しそうにないな。

 どうするか。

 

 なんとかサジーさんを追い詰めて、この場の奴らにヤバイ! って思わせねえと。

 でも勝てるビジョンがまっったく浮かばねえわ。


 サジーさんへの声援が飛ぶ中、聞きなれた声が聞こえてきた。

 

「頑張れぇぇ!!」


 声の方向に目をやる。

 マキマキ……。


「がんばれ!!」


 シソーヌ姫。


「頑張れ!!」


 アルマ。


「踏ん張るんぢゃあ!!」


 アグー。


「己を信じろ!!」


 ソレガシの旦那。


 声を張り上げているメイ姫。

 マルマリ家の、護衛の二人。


 どっちを応援してるか分かんないようにしてるみたいだけど。

 分かるぜ。


 みぞおちの奥が熱くなる。

 ガイアコアを着けてなくても、チカラが湧いてくる。


「いやいや。人気者じゃあないの、うん」


「どうも」


 気持ちを切り替えたらいい事思いついた。

 俺は四つ足で猛ダッシュ、身構えるサジーさんだが、無視してその周りをグルグル回る。

 もうバターになるくらいグルグル。


 魔素って空気中にあるんだよな?

 自分の体内にもあって、それを各属性に練って放出する。

 俺はガドニア侯国の時に《魔素妨害》ってヤツを経験した。

 あの時、技は出せたけど体外に放出されたエネルギーが上手く機能しなかったんだよね。

 多分空気中の魔素が荒れ狂って、技のエネルギーが乱れたんだろう。


 それと同じ状況を作る。

 超高速で円形に走って!

 空気をかき回すんだ!


「わ、わ、すごいね。身体が線に見えるよ。でもそれでどうなるんだい?」


「こうなるんだよ!」


 腰の袋からガイアコアを出して、怪人の身に少しだけ流れるガイアエネルギーを注ぐ。

 ガイアコアが強い熱を出した。

 アチチ。

 高熱が空気に混ざり、上昇気流になって暴風の渦が狭まっていく。

 

 竜巻のいっちょ上がりだ!!

 

「おお! これはちょっと不味いね! うん!」


 転移とか時間止める魔法は難しいんだよな?

 こんだけ乱れた魔素の中だとパッと使えねえだろ!


 フワッとサジーさんの足が地面から離れる。

 が、すぐさま足を金色に変えて着地。

 身体を重くして竜巻に巻き込まれるのを防いだのね。

 想定内だけどね!!


 ウオオオオオオオオオオン!!!!


 俺は逆に、風に乗って竜巻の上空に跳ぶ。

 渦の中心まで上がると、その真ん中を一直線に下りる。

 勢いに乗ったところで爪撃をメチャクチャに放って、サジーさんが動かないように牽制。

 爪を牽制にしてたら攻撃できないと思うじゃん?

 残念。

 ハイエナの最大の武器はね。

 牙です!!


 

 ドゥオオオオオオオオオンン!!!!



 大地が割れて、四散した竜巻が数万人に吹き荒れた。



 

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