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第40話 死闘


 決まった。

 正にスーパーヒーロー。


 間に合った事実に安堵しつつ、ガイアコアにヒーローエネルギーの蓄積を感じる。


 単純なチカラを発揮するには自然シゼンエネルギーで十分。

 他者から助けを求められたり、声援をもらうと溜まるのが応援オウエンエネルギー。

 ヒーローらしく振る舞ってテンションを上げると溜まるのが英雄ヒーローエネルギーだ。

 

 これらをガイアコアに蓄積して、ガイアエネルギーに変換する。

 先述のエネルギー比率で、救世戦士アスガイアーは形態フォームの変更が可能になるんだ。


 今なら変われる。


「ふん!!」


 ガイアスーツがボッと赤い光に包まれて、肩と肘のパーツ、仮面のアイシールドの部分が鋭利に変化する。


「変! 身! バトルフォームぅ!!」


 俺は地面を踏みしめて、ポーズをとる。

 と、

 槍の先が目の前に現れてすんでで避ける。

 あっぶね!


「あっぶね! 変身ポーズは攻撃すんなよな常識だろうが!!」


「そんな話は知らん」


 白騎士は槍をクルリと回して、石突を大地に付ける。


「お主の相手とこの関所を破るが我が責務。救世戦士アスガイアーとやら、某と立ち会え」


 俺は腰を落として、拳をガチンと打ち合わせる。


「そのつもりだ……よ!!」


 俺は間合いを詰めて、拳を叩きつける。

 白騎士は槍の柄で防ぐ。


「アスガイアー・メガパンチ!!」


 連続で繰り出す殴打。

 その全てを、器用に槍の柄で防がれる。


 秒速100発とかで! 一発一発が鉄板打ち抜くくらいのヤツなんだけどな!

 左足で頬を蹴りこむが、白騎士は片手で防いで、そのまま掴んだ足首を持ったまま、振りかぶる。


「マジか!!」


 地面にクレーターが出来る。

 いっっったぁ!!

 俺は埋まったまま両手を突きだす。


「アスガイアーメテオストーム!!」


 白騎士は、炎に包まれて吹き飛んだ。

 爆風が周囲にも及ぶ。

 関所は透明の壁が、侯国軍はチョーロクの魔力障壁で防いだのが見えた。

 ボーニア伯の号令で侯国軍が後退している。


 これですぐ戦闘が始まることはねえな。

 つまり……。


 燃え盛る炎の中を、何でもないように白騎士が歩いてくる。


「俺とアンタの一騎打ちで戦局が決まりそうだなぁ!」


 俺は拳に炎を纏わせて、構えた。


「よもや、これ程の者と相まみえようとはな……」


 白騎士も槍をブンブン振り、


「血が滾るぞ」


 ピタッと止めて構える。


「アンタ異界人だろ? なんで侯国に手を貸す? それに侵略すんならまともに俺の相手なんかしなくても、やりようなんか幾らでもあんだろ」


 俺はさらに腰を落とす。


「アンタは誠実だ。少なくとも、戦うって事にはな。ただ戦うのが好きなのか? 弱い人らがどうなってもいいんかよ」


 白騎士も、槍をさらに深く落とし、半身に構える。


「知らぬ土地で恩を受けた。ならばその恩、返さねばなるまい。例え弱きものを挫こうとも、妻と子を我が身可愛さに戦場へ置いて逃げようとも、仕えるべき者のその先を、信じるまでよ。それが忠義であろう?」


 ……何言ってんだこのおっさん。

 取り合えず、このワカランちんは力ずくで止めるしかねえみてぇだな。


 同時に踏み出し、大地をへこます。


 槍の穂先と俺の拳がぶつかって空気が爆ぜる。

 周囲の岩が砕け、お互い後ずさる。

 

 ここで飛び道具使いてぇトコだけど、侯国軍に当たる。

 余計な人死にはなるべく(・・・・)避けてぇな。

 向こうもそう考えてるみたいで、関所に当たるような攻撃はしてこない。

 真面目なのね!


 俺はバク宙しながら、かかとをおっさんに振り落とす――

 と見せかけて! 空中で体勢を変えて横蹴り!!


 おっさんは槍を立てて柄で防ぐ。

 反応が早えよ!

 そんでその槍なに!?

 今の蹴り、アスガイアーキックなんですけど!

 大首領のカッチンコバリア以外で砕けなかったの初めてだわ!


 振り下ろされた槍を、腕を交差させて防ぐ。

 が、瞬時に下から石突きがアゴに叩きあげられる。


 早えし重てぇ!

 痛てぇ!

 

 攻撃の勢いでバク転して着地。

 空いた右脇腹に横殴りを当てる。

 おっさんは地面を深く削りながら、また槍を構えた。

 あの鎧かってぇな。

 全然形変わってねえよ。


 でも警戒はしてる。

 効いてんのか?

 

 おっさんが槍を突いてくる。

 間合いの外だけど、避ける。

 後ろの岩山が砕けた。

 はい! やっぱりね!

 冗談みたいな速さでまた槍を突く。

 何度も。

 何度も何度も何度も。

 俺は避ける。

 避ける避ける避ける。

 大嶮山の岩山が粉々になっていく。

 

 視界の端に、チョーロクが浮き上がるのが見えた。

 空中で腕を上げ、紫電を纏わせると、巨大な黒渦を空に展開させる。


 俺はそれを止められない。それどころじゃない。

 白騎士のおっさんが残像で無数に見える槍を繰り出しながら、間合いを詰めてくる。

 俺は格闘技なんてやったことない素人だ。

 全部我流の実践方式、アスガイアーのチカラで何とかやってきた。

 アスガイアーアイの動体視力、ガイアスーツの身体能力で必死に身体を動かす。

 なんだよこのおっさん……、


 強すぎんだろうが!!


 僅かに、ほんの僅かに深く繰り出された突きを見極め、左手で槍を受け流す。

 オラぁ! 隙アリだ!


「デラスト・ナックルぅ!!」


 おっさんの腹に渾身の一撃を叩きつける。

 手ごたえアリだぜザマぁみろ!!


 白騎士が勢いよく上空に飛ぶけれど、すぐに体勢を整えて槍を横殴りに振る。

 真空破が恐ろしい速さで飛んでくるのを見て、後ろに飛ぶ。

 つま先すれすれの地面に、三日月型の深い穴が開いた。


 誘いだったのかよ!

 だけど、目いっぱい食らわせた。

 なのにストンと着地してやがる。


(今のでも、決め手に欠けんのか)


 俺が腹ん中で悪態を吐くと、地面が暗くなってるのに気がついた。

 バッと上を見ると、チョーロクが出した黒渦から大岩……いや、岩山が降ってくる。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 オゥイ!!

 あんなんどうやったってキツいぞ!


 俺がどうするか迷ってると、関所からマキマキが飛び出してきた。

 

「RGB! プリズムモード!!」


 そう叫んだマキマキが、まばゆく白光する。

 光ったのは一瞬。

 スッと嘘みたいに光が収まると、純白の豪華な衣装に変わったマキマキが、空中で虹色の弓を構えていた。


「プリズムアロー!!!!」


 放たれた矢は、ゆっくり落ちてくる岩山を貫き、砕く。

 岩砕群が関所に降り注いだ。

 魔導砲と特使団のみんな、なんかデッカイ斧を振り回すアルマがそれらを落とした。


「私の姫さまにぃ! 何をしてくれる下郎がぁ!」


 アルマが関所から跳び、大斧を振りかぶってチョーロクに切りかかる。

 チョーロクは魔力障壁を出すが、振り下ろす大斧にバリンと砕かれ、返す刃で袈裟切りに両断される。

 

 倒したか!?


 深藍色のボロ切れがパサリと、

 凹凸のない仮面がウワンウワンと地面で音をたてる。

 仮面が動きを止めて一拍の時間を置くと、グワッと起き上がるようにチョーロクが再び姿を現した。

 

 不覚と呼べない程の、刹那の油断。


 チョーロクの、布に包まれた手が光る。

 アルマはすぐに身体を捻ろうとしてるが、無理だ。

 斧は振り上げたまま。

 当たる。



「アルマ!!!!」



 関所から身を乗り出し、叫ぶシソーヌ姫が見えた。

 極太の熱線が放たれ――

 

 


 高出力のそれは、俺の背中を焼いた。

 


 

 

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