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第39話 アークガド大聖王国VSガドニア候国


 吹っ飛んでいくドウブっちゃん達を見送る。

 流石に大嶮山までは届かないだろうけど、敵陣のど真ん中よりゃマシだろ。


 俺も飛べりゃ速いんだけどな。

 なんでタイフーン系の技で俺自身は微動だにしないんだ?

 自然エネルギーだけじゃ他のフォームに変身できねえし。

 しゃーないな。


「さて……走るか」


 地面を踏みしめて、スタンディングスタートの体制をとる。

 マラソンになるか……。

 ガイアスクランブラーがありゃ良かったんだけどな。


 ドン!!!! 


 橋が崩れるが気にせず、前傾姿勢で走る。

 人にぶつからないように……なんて考えてる間に、首都ガドニアが遠ざかっていった。



◇◆◇◆



 制服姿のマキナは、大嶮山の関所長、ニッカ・ウインス男爵に案内されて貯蔵倉庫にいた。

 

 龍の鱗・髭・爪・牙……。

 解体が済んで整然と並んでいる。

 因みに龍の肉は別の部屋の、冷蔵室に保存されているそうだ。

 専門家が解体したそうだが、今その者たちは、ガドニア侯国反乱の報を伝えに国都へ向かっている。

 

 マキナは赤龍の魔石と向き合う。

 想定以上の速度で走った魔導車だが、先回りを気取られぬよう貿易都市ボーニアを大きく迂回した為に、時間的余裕はない。

 かなり高価な物だとは聞いているが、その点はあまり考えないようにして自分よりも大きな魔石――ほとんど岩だが――に手を触れる。

 胸の蒼い宝石が煌めき、そこから強い風がビュオッと吹き荒れる。

 マキナの黒い髪が強風になびくが、徐々に風は弱まり、それに反比例するように魔石の赤みがかった茶色は少しづつ白くなっていった。

 目を閉じていたマキナは魔石が完全な白になると、ゆっくりと瞳を開いて同席している関所長ウインス男爵、アベイル隊長、シソーヌ姫、護衛騎士アルマに向き直る。


「終わりました」


 マキナの背中から、ひょいと妖精アグーが顔を出す。


「まだ満タンとはいかんが、これで魔法少女ジュエリールのチカラを十全に発揮できるぞい」


「これだけの魔石の魔素を使っても満杯とはいかないのか……その胸の宝石はとんでもない代物なんだな」


「三人分なんでかなり入るんですよ。それで、敵の状況はどうですか?」


 マキナの問いに、アベイルは眉間にシワを寄せる。


「今ゴリン殿が高台から感知魔術で探っているが、貿易都市ボーニアからすでに進軍は開始されているようだ。あと一時間もかからず到着するだろう」


「国都からの救援は間に合いませんか」


 ウインス卿の嘆きに、アルマが呟く。


「転移阻害がなければ、サイロス宰相様が軍を連れてきてくれるのですが……」


「なんで魔王がいなくなったのに人同士が戦わなくちゃいけないの? ボーニア伯、あんなにいい人だったのに……」


 シソーヌ姫がうつむき、アルマがその肩を抱く。

 その様子を見たウインス卿が、肩を落として言った。


「何度かお会いしましたが、ボーニア伯爵は穏やかな人柄です。しかし国への想いは並々ならぬものがありました。候王からの命令となれば従うでしょう」


 沈痛な空気が漂う中、アグーがふわふわと皆の中心へ出る。


「わからんのはあのチョーロクとかいう男ぢゃ。ここに向かう間も話したが、広範囲の通信妨害、転移阻害。高度な転移魔術を使用し……恐らくは赤龍を操っていたのもヤツぢゃ。魔王軍の手の者でもなく、世に知られている魔術師でもない。ナゾばかりぢゃな」

 

 その言葉に皆が押し黙ると、響くような声が関所に轟いた。


「おっほっほ。ある程度の身の上は、お話したではありませんか」


 6人は顔を見合わせ、急ぎ城壁の上へ走る。

 外に出ると、特使団の騎士たちと見張りの関所兵が空を眺め、その先には深藍色の衣を被った仮面の男が宙に浮いていた。


「まあ、嘘でしたがねぇ。おほほ」


 魔力を乗せ、声を増幅させて笑う男。

 ガドニア侯国の宰相、チョーロクだ。


「貴様は何者だ! 父上に何を吹き込んだ!」


「これは人聞きの悪い。ガドニア侯国が国主の希望を叶える為、宰相として奔走しておるまでですぞぉ」


 スウッと空中を滑るように、関所へ接近するチョーロク。

 

「大聖王国は特殊な国ですからなぁ。《世界の守護者》が眠る土地に国都がある、故に、焦土作戦は使えますまい。オウゴン教全てを敵に回しかねませんしねぇ……おっほっほ。すでに兵糧は十分。不足しても転移で運ばせていただきますが」


「飛翔剣!」


 アベイル隊長が剣を振って飛ぶ斬撃を放つが、チョーロクへ達する前に霧散した。


「く! しかし一人で先行するとは、よほど己の力量に自信があるようだな! その驕り、後悔させてやる! 皆! 迎え撃つぞ!」


 アベイル隊長の言葉に反応して、関所の兵たちが動き出す。

 魔導砲の準備に入るのだろう。

 まだ魔石の装填は不十分だが、敵の首魁の一人が目の前にいるのだ。

 この機を逃す手はない。


「おっほっほ。一人で来るはずがないでしょう」


 チョーロクが布に包まれた腕を上げると、山道に大きな黒い渦が現れた。

 不味い。

 何かをする気だが、その何かはさせるべきではない。

 

 アグーが背中に張り付くと、マキナは飛び立ち、右手から朱く光る鞭を出してチョーロクを打つ。

 鞭の先端がチョーロクに迫るも、身を包む衣がギュルリと回転して姿を消し、マキナの後ろに現れた。

 マキナは振り向きながら左手を突き出し、蒼く光るボウガンを連射する。

 光る矢は深藍色の衣を貫くが、チョーロクは微動だにせず数多の熱線を放ってきた。


「エメラルシールド!」


 熱線はマキナに届くことなく、翠の壁に防がれる。


「なるほど。ワタクシの熱線は通りませぬか」


 マキナが振りかぶって鞭をしならせ、チョーロクを再び狙う。

 チョーロクは前方に黒渦を出して、鞭の先を飲み込ませた。


「つっ!!」


 マキナの左肩に痛みが走った。

 衣装が破れ、血が流れる。

 距離を取る為に後ずさると、自分が元いた場所の後方に小さな黒渦が浮かんでいた。


「おっほっほ。自分の攻撃は通るようですなぁ」


 肩を震わせて笑うチョーロク。

 マキナは奥歯を噛んだ。

 手玉に取られている。

 

「では、役者を揃えますかねぇ」


 最初に出した、大きな黒渦から馬に乗った候王マシラム・イチ・ガドニアが。

 その横にはロンメル・ソセン・ボーニア伯爵がクツワを並べて出てきた。

 

 黒い渦は後方にゆっくりと下がっていき、その後ろには隊列を組んだガドニア兵がズラリと並んでいる。


 広い山道を埋める敵。

 速過ぎる状況の変化に、マキナたちの対応は不十分だった。

 魔導砲もまだ用意できていない。

 

「ば……ばかな。転移は阻害されているはずでは」


「ワタクシが阻害したのです。座標を合わせるなど、造作もないですぞぉ」


 ウインス男爵の言葉に、上機嫌でチョーロクが答える。


「兵は詭道なり、と、申しますなぁ。騙しあいはこちらの勝ちです。おほほ」


 そう言って地面に降り立つと、今度はチョーロクの横に別の黒渦が現れた。

 姿を見せたのは、中華風の全身鎧をまとった白騎士。

 白騎士が腰を深く落とし、龍の装飾が施された槍を片手で構える。


「いかん! いかんぞい!!」


「退避! 全員退避!!」


 アグーの警告にアベイル隊長の命令。

 槍の穂先、その射線上から慌ただしく兵たちが逃れるが、白騎士は待たない。



 ズゥバアアァァァァァアアン!!!!



 強固なはずの、高さ10メートルの門が粉々に砕けた。

 厚さ50センチはある金属の塊が、だ。

 吹き飛ばされた数人を、魔導師カンミが飛行フライの魔術で城壁の上へ運んでいる。

 

「全軍!! 進めぇ!!」


 オオオオオオオオオオオ!!!!


 候王の号令、軍の咆哮。


 マキナはやるせない気持ちで蒼のボウガンを構えた。

 その時。



 ドゥォオオオオオオォォン!!!!



 進軍する候王軍の前に爆音が鳴り、砂ぼこりが舞い上がる。

 不意の出来事に、その場の生物は動く事を忘れた。


 晴れていく砂ぼこり。

 皆が息を飲む中、腕を組んで現れたのはあの男だ。


「呼ばれなくとも現れる! 救世戦士アスガイアー……」


 ポーズ


「推参!!!!」



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