第3話 慌ただしく自己紹介
動かなくなっちまった。
急に降ってきて、びっくりしちゃったかな?
通常フォームだと飛べねえからな。
にしても、変わった格好した嬢ちゃんだ。
そんで気に入った、いいタンカ切るじゃねえか。
「あとは任せな」
俺は城壁のへりから戦場を眺める。
波のように打ち寄せる、敵の突撃。
それを連携して迎え撃つ人間たち。
交代で門から打って出て、勢いを保ってんのか。
聞いた限りだと、十日も前から休まずにこれをやってる事になる。
ギリギリだな。
門から軍を交代させる淀みなさは見事。
だがあれ以上敵の攻め手が増えたら均衡は崩れるし、その攻め手を増やさせない長距離攻撃のチームもエネルギーが尽きかけている。
一刻の猶予もねえな。
聖気ってやつでガイコツの再生を防げるなら、逆のチカラもあるだろう。
んで、再生を強化してる可能性がある。
こういうののお約束だ。
「アスガイアー・アイ!!」
視覚を強化してエネルギーの流れを確認してみると……。
案の定だが、薄黒ーいモヤが戦場に広がってる。
それが特に濃い場所があそこ、1200メートル近く敵の後方か。
敵の本陣だろう。
当然リーダーもそこかな?
集団戦は一番影響力のあるヤツから潰すのが鉄則だわな。
「ちょ、ちょっと待って! アナタは!?」
ん? まあ、気になるか。
「救世戦士アスガイアー。お姫さまに呼ばれた、お嬢ちゃんの仲間だよ」
「……じゃあ、地球の人?」
「そうだ」
答えて、俺は城壁を飛び降りる。
戦ってる人間たちは……。
ヤバイな、限界にみえる。
ガイコツが歩兵ばかりなのが救いか。
とりあえず会話する余裕を作らねえと。
「アスガイアぁぁ……バクレツナックルゥ!!」
前線の敵を蹴散らす。
味方が俺に気づいた。
「何者か!!」
銀色の立派な全身鎧を着た、金髪の騎兵が呼び掛けてくる。多分あれが……。
「アンタがアベイル隊長か!」
「いかにも! して貴公は!」
「お姫さまに呼ばれた助っ人って言やぁ分かるか!?」
アベイル隊長が手綱を引いて。俺に向き直る。
兜から見える顔は若くて整ってた。
「なんと! ならば其方、異界人か! ご助力感謝!」
「いいってことよ! それより策がある! マルク将軍は!?」
アベイル隊長が、剣先で前方を指す。
「この場より二時の方向へ、300メートル!」
あのデカめの旗か。
でも二時の方向とかメートルとか……、
今はいいか。
「了解した! お姫さまがアンタらのこと心配してたぜ! 全員死ぬなよ!?」
マルク将軍へと走る俺の後ろから、複数の雄たけびが上がる。
気合入ったみたいね、しばらく大丈夫そうだ。
走る俺に刃が突き出される。
両手で挟み、折る。
手の平に残った欠片を逆方向に弾き、ガイコツを吹き飛ばす。
槍が複数突き出される。
前宙で避け宙で足を蹴りだし、ガイコツを粉砕する。
特大のハンマーが横殴りに繰り出される。
滑走して避け、拾った石を投げ付けてハンマーを持ったガイコツの頭部を砕く。
敵を蹴散らして進むけど……。
一体一体の装備が簡素じゃない。俺にとっちゃそんなでもねえが、多分こいつら雑魚じゃねえ。
こりゃあ、この国の正念場だ。
……見えた! 多分、あのゴツイ金ぴかの鎧着たおっさんが将軍だ。
「マルク将軍!」
強いな。
一振りで複数のガイコツを吹っ飛ばしてる。
「何者か!!」
「異界人の助っ人だ! 策がある! 乗ってくれ!!」
とりあえず周りの敵が邪魔だな。
「みんな伏せてくれ!」
ベルトのバックルにしてあるアスガイアーコアを擦り、右手を構える。
オウエンエネルギーをガイアエネルギーに変換、チャージ。
「む! 皆! 伏せよ!!」
エネルギーの集中に気づいてくれたか。
この世界の魔法とやらも、似た性質なのかもな。
将軍と部隊の連中が伏せたのを確認。
迫るガイコツ共の武器が届く前に――
「アスガイアぁ! ビィィームゥゥウ!!!」
右手から熱線を出して、敵を横なぎに焼き払う。
燃費の悪い技だけど多人数にはこれだ。
前線のガイコツ共が燃え尽きて、黒い霧に変わっていく。
ビームの範囲内の敵は全部倒せたか。
やっぱりダルダム団の怪人よりゃ脆い。
とはいえ、さすがに多勢に無勢だ。
「見事! お主は魔術師か!」
「似たようなもんだ! それより将軍! 敵の本陣を見つけた! このままじゃジリ貧だ、協力してくれ!」
将軍が手綱を引いて、俺に向き直る。
「申してみよ」
「短期決戦で行こう! 俺が道を作るから、将軍たちは広がって道を維持してくれ! 最後は俺が! 大技で敵の大将を討つ!」
俺が必殺技で敵をぶっ飛ばし、攻め手の集団に穴を開ける。
将軍たち精鋭部隊がその穴を抜けて敵本陣へ突撃。
そのあと、ガイコツ共が雪崩れ込まないよう盾になってもらう。
その間に俺が敵の大将を倒す。
残る敵も弱体化して不死身じゃなくなったなら現状はよくなるし、援軍だって呼べるかもしれねえしな。
俺の提案に、騎馬兵たちがどよめく。
「其の方、正気か? ひしめくアンデッドの大軍を抜けると?」
「チカラの一端は見せただろ? あれ以上をあと2発撃てる」
今の残りエネルギーだとそれが限界。
だけど、決める時は決めてきた。
今回も当然、決めてみせる。
「あいわかった! 乗ろう!!」