表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/191

アスガイアーの④



 ハルイチは児童養護施設にいた。


 ニューエネルギー研究所の悲劇から5年。

 当時職員のタチバナと共に逃れた先は、彼が施設長を務める児童養護施設《絶対カキツバタ園》だった。


 自宅は焼失していた為に住所を園に移し、ダルダム団を壊滅させるための日々を重ねた。

 大学には進まなかった。


 発電所、

 多目的ダム、

 原発、


 あらゆる場所に奴らは現れ、事あるごとにそれを叩き潰した。


 国家事業であるエネルギー研究を害し、施設を度々襲撃する秘密結社ダルダム団は今や、日本政府に国際テロ組織として認知されている。



◇◆◇◆



「ハル兄、口の周り食べかすだらけだって」


 ハルイチにとって、子供たちと食卓を囲んで過ごす時間は数少ない安らぎだった。

 ここにいるのは自分と同じ、親のいない境遇の子供たち。

 今の時代、児童養護施設への不信感は根強く、支援金も年々減り続けている。

 ハルイチは近所のスーパーマーケットの区画を理解ある店長から無料で借り受け、鉄板焼き屋を運営して売り上げのほとんどを施設に寄付していた。

 タチバナは当初受け取らなかったが、ハルイチの言う家族に生活費を入れるのは自然な事だとの主張に折れた。


 そう、この場にいるのは家族だ。


「マチ子、おやっさんは?」


 ハルイチは朝食のハムエッグを頬張りながら隣に座る児童指導員、この園の出身である桜井マチ子にタチバナの所在を尋ねる。


「園長ならまた地下で機械いじりしてる。ハル兄もなんとか言ってよ。もう五日もこもってんだから」


 溜息まじりに腰に手をやるマチ子。

 園の代表であるタチバナがその調子の為に、マチ子が実質この園を取り仕切っている。

 まだ21歳の身の上で。

 他の児童指導員も通いの3人しかいないため、負担は大きい。


「メシ食ったら様子見にいくわ。今日は店休みだから洗濯はやっとく」


「悪いねハル兄」


 年長の子供たちが、二人の様子を見てはやし立てる。


「夫婦みたいだね」


「いちゃついてんなよ兄ちゃん姉ちゃん」


「馬鹿な事言ってないで早く食っちまいな! よく噛むんだよ!」


 子供たちをどやしつけるマチ子の横顔を眺める。

 彼女の気持ちは分からないが、自分にそんな気はなかった。


 奴らを、父と兄を殺したダルダム団を根絶やしにするまでは。


 ドタドタと慌ただしく、地下から階段を駆け上る音が聞こえる。


 バタン! と食堂の扉が開いた。


「ハルイチ君! 奴らの通信を傍受した! 淡路島に向かってる!」


 よれよれの白衣を着て、髪をくしゃくしゃにしたタチバナが叫ぶ。

 ハルイチは立ち上がり、ベルトのバックルに手をやる。


 フゥオン! 


 ハルイチは救世戦士アスガイアーへと変身した。


「すまねえマチ子、予定が狂っちまった」


「いいさ、ケガしないならね」


「がんばれアスガイアー!」


「お土産買ってきてね!」


 マチ子と子供たちに手を上げ、屋外に出る。


「ガイアスクランブラー!!」


 アスガイアーが叫ぶと、真紅のバイクが施設の陰から無人で走ってくる。

 そのまま飛び乗って公道へ出た。


「フライングモード!」


 再び叫ぶと、真紅のバイク、ガイアスクランブラーはアスガイアーを乗せたまま飛行形態へ変わる。

 アスガイアーは空を駆け、倒すべき敵に向かい目的地へ。


 ちなみに国土交通省から飛行許可は得ており、特例で飛行経路の申請も免除されている。

 良い子は真似しないように。



◇◆◇◆



 場所は淡路島。

 明石海峡大橋のたもと。


「諸君! 機は熟した! これより作戦行動に移るのである!」


 ダルダム団の幹部、アクラツ将軍の号令に3体の怪人、ならびに鉄仮面を被った構成員30人は拳を空に突き上げて応じる。


 今回が怪人たちの初陣となる。

 怪人1号ハイエナ男、

 怪人2号ワニ男、

 怪人3号ハヤブサ男、

 秘密結社ダルダム団がガイアエネルギーの研究を進め、苦心の末に作り上げた超人研究の成果だ。


 《人類超進化計画》を度々妨げる、救世戦士アスガイアーを抹殺するための新戦力である。


 埴輪はにわのような鎧に身を包んだ、総髪で威厳を漂わせるアクラツ将軍が作戦内容を告げる。


「あと一時間で明石海峡大橋を唯野大臣が渡るのである! 我々は大臣を拠点へと強制的に連れ帰り、改造手術を受けさせダルダム団の理解者へと変貌してもらうのである!」




「そうはさせるか!!!!」




「誰だ!!」


 ダルダム団が声の方角へ目を向けると、逆光の先に明石海峡大橋の塔柱部で赤いラバースーツの男が腕を組んで立っていた。


「過ぎたる悪に! 明日を生きる資格なし! トゥ!!」


 空中で回転して、地面に降り立つ。


「救世戦士アスガイアー推参!」


 アクラツ将軍が、ゆっくりと前に出る。


「クックック。まんまと現れたであるなアスガイアー。今回は一味違うであるぞ……見よ!!」


 バッと手を後ろにやる。


「人類超人化計画の一端! 怪造超人の面々である! ハイエナ男!」


「グルルル」


「ワニ男!」


「ゴォォオ」


「ハヤブサ男!」


「ケェェエ」


「貴様の快進撃もこれまでである。ガイアエネルギーを使用した怪人……獰猛な獣の力を兼ねそろえたこやつ等に、勝てるであるかな?」


 アスガイアーは構える。


「御託はいいからかかってきな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリックして応援してね↓
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ