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第29話 工夫と協力


「撃てぇ!!」


 ボゥン! ボゥン! と関所長ニッカさんの号令で魔導砲とやらが火を噴く。

 形は昔の大砲に似てるけど、玉が鉄じゃないからアレも魔法の道具か。

 大勢で遠距離攻撃するが、赤龍は器用に飛び回って大して当たってない。

 怪獣みたいな図体で素早すぎるだろ。


「弾幕のおかげで近寄れんようぢゃが、このままでは埒が明かんぞい」


 確かに。

 アグーが言う通り、決定打に欠ける。

 ここまでやっても逃げないって事は、何が何でも俺たちをどうにかしてぇみたいだな。

 ガイアシューターを打ちながらふと見ると、マキマキが蒼い弓を引き絞ってじっとしている。

 狙いを定めてるんだな。


「サファイアロー!」


 蒼い矢が赤龍の翼に当たる。

 バランスを崩した巨体に攻撃が降り注ぐが、赤龍はすぐに体勢を整えると、またビュンビュンと避け周りってブレス攻撃の隙を伺ってるようだ。

 ちなみに俺の攻撃は当たってない。

 当てるつもりで攻撃してるけど、当たってない。


「硬すぎる。よっぽどの攻撃じゃないとやっつけられないですよ」


「うむ。今のを続ければ倒せるぢゃろうが、こちらがバテるのが先かの」


 そう言ってアグーは城壁のみんなを見た。

 まあね。

 みんなの体力や魔導砲の玉も無限じゃないだろうし。


「大技とかないのか?」


「ジュエルパワーが万全じゃないんで難しいです。カブラギさんは自然にエネルギーが回復するんでズルいですよ」


 ガイアエネルギーは万物をチカラに変えるから、風に触れるだけで少しだけど回復する。

 マキマキは石のチカラをエネルギーに変えるそうだから、魔石からじゃないとこちらの世界ではエネルギーを回復できないらしい。

 羨ましがられても無理はない。


「よし、俺がバシッと決めてやるか! でも早すぎて技が当たんねえよ。」


「アタシのライトニングレインで動きを止めます。その一瞬で」


「お。了解!」


 とは言ったものの、どうしようかな。

 通常フォームじゃ空は飛べねぇから勢いが足りない。

 足場がありゃ蹴り上げて突っ込むんだけど、関所の城壁を蹴り上げたら流石に不味いよな。

 そうだ!


 俺は片手でガイアシューターを打ちながら、中年魔術師さんに近づく。


「なあ! ゴリンさんって言ったっけ!?」


 氷の槍を打ちながら、ゴリンさんは赤龍を見据えたまま返事する。


「どうされたカブラギ殿!」


「ここに来る途中出してたあの魔術盾マジックシールドってヤツ! アレ空中に出せるか!?」


「出せる! どこに出せばいい!?」


「20メートル上空! 赤龍に向けて45度傾けてほしい! 足場にしたい!」


魔術盾マジックシールドは魔術以外を弾かぬぞ! 足場にはできん!」


 まじか。

 じゃあどうしよう。


水集ウオーターギャザー


 俺が考えていると、足首の下周りに水が集まってくる。

 何事かと顔を上げたら、人の良さそうな二十代後半くらいの関所の兵隊さんが手を俺に向けて小さい魔法陣を出していた。


「私の本業は花屋なので水魔術が得意なんです。これでどうでしょうか?」


 おずおずと聞いてくる兵隊さんに、俺は親指を立てた。



「アンタ最高だぜ」



 ゴリンさんが氷の槍を出すのを止めた。


「カブラギ殿! いけるぞ!」


「ガチガチの硬いヤツ頼むぜゴリンさん!」


 目を瞑りながらブツブツ唱え始めるゴリンさんを横目に、グッとしゃがむ。


「サファイアロー!」


 マキマキが上空に矢を放った。


「今だ!!」


揺蕩たゆたう質の一切を拒絶せよ! 五重魔術盾フィフスマジックシールド!!」


 上空に厚い魔法陣が展開された。

 城壁をボンとへこませて、俺は跳ぶ。


「ライトニングレイン!!」


 沢山の落雷に撃たれて、赤龍の動きが止まった。

 俺はクルッと足を上にあげ、厚い魔法陣に両足をつけて――

 ヒザを伸ばす!

 魔法陣が粉々に砕ける。

 俺はみんなの攻撃が当たる赤龍に向けて拳を振り上げ、


「デラストぉナックルぅぅぅ!!!!」


 赤龍のみぞおちに叩きつけた。


「ギャアアァァァアアァ!!!!」


 身体に穴を空けて落下していく赤龍。

 デカい図体が大きな音を立てて、地面に落ちた。

 着地した俺は、関所の上でこちらをのぞき込むみんなに拳を突き上げる。



 ワアアアアアアアアアアアア!!!!



 歓声が上がる中、俺って今すげえヒーローっぽいなぁ。なんて考えていた。



◇◆◇◆◇



「そうですか……国都はそんなにも」


 ニッカさんと俺たち異界人3人組に、シソーヌ姫と護衛騎士アルマ、アベイル隊長と文官さん2人の9人は、関所の応接室で今回の遠征の目的を話していた。


 特使団が関所を通る事は聞いていたらしいが、目的は聞いていなかったみたいだ。

 というのも、通信魔導具は傍受もできるらしい。

 だから機密情報は基本通信魔導具ではやり取りしない。

 するにしても暗号などを使うそうだが、今のご時世に暗号を使う事自体おかしな誤解を招きかねない為、控えたとの事。


 なるほどねぇ。

 自国が弱ってるってバレちゃ不利な援助を提案されかねないし、ソレを断るとカドが立つってか。

 まさかとは思うが、侵略される可能性もゼロじゃないし。

 七国同盟ってヤツも戦後で国力は対等じゃないから、ゴリ押しもまかり通りかねないってことね。

 十年以上もロクに連絡の取れなかった同盟国の方針がどうなってるかなんて、わかんねぇもんな。

 慎重にならざるを得ないね。


「赤龍の話は商人たちから聞いておりましたが、まさかこの地まで流れてくるとは。西三国の一つ、ポロイス大共和国の方角へ向かったと聞いておりましたゆえ」


 ポロイス大共和国ってのは大陸七国のひとつで、アークガド聖王国とは真逆の方向なんだそうだ。

 赤龍の話ってのは、ガドニア侯国に現れた槍使いの異界人が追っ払ったって話ね。


「あの赤龍ってのがこの世界にはゴロゴロいるんスか? 俺らの元の世界じゃ、あんなの出たら大騒ぎですけど」


「とんでもない! 龍種が人里に現れるなど異例中の異例です。特に赤龍など、知恵ある龍を除けばその危険度は超級。魔王4将軍にも匹敵します」


 聞けば龍自体珍しい魔獣らしく、年月を経た龍は知恵を持ち縄張りから出てくることは滅多にないそうだ。

 実際この数十年。

 冒険者が未開拓地でうっかり出会った事はあったけど、人里に現れた事はないんだと。

 そんな赤龍を、あんな素早くてとんでもない怪獣をたった一人で追い払ったっていう槍使いの異界人。


 地球の人間じゃないかもな。



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