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第21話 姫の提案。というより懇願。


 金がないそうだ。


 食糧も底をつきそうなんだそうだ。


 出来る事ならやります!

 なんて息巻いてた俺もマキマキも、顔を見合わせる。


「あの、その辺は俺ら不得意分野で」


 俺がそう言うと、マキマキも首を縦にぶんぶん振る。

 すると王様の後ろで控えていたサイロスさんが苦笑する。


「そんな事は言いません。当てもあります」


 王様がテーブルに肘を置いて、手を組む。


「食料は今のままで七日、切り詰めて二十日。復興のための物資も全く足らぬ。しかし、下手に他国へ支援を要請すればいらぬ弱みを見せてしまうのだ。そこで大陸七国でない、兄弟国のガドニア侯国へ使者を出そうと考えておる」


「祖国に!?」


 アベイル隊長が大きな声を出した。


「アベイル隊長はガドニア侯国の公子でいらっしゃるんです。今は見識を広めるために、アークガド聖王国で隊長職を任官されています」


 アルマが教えてくれる。

 アベイル隊長って王子様だったのか。


「ガドニア侯国はアークガド8世の時代。大陸が戦火に見舞われていたころ、政治よりも軍略に長けた聖王の兄君が王位継承権を弟君にお譲りになり、南西の大嶮山を超えた地を今の大陸七国であるゼギアス大皇国との緩衝地帯とするべく切り開かれた国です。ゼギアス大皇国とも国交を開いた今その本来の役目はもはやありませんが、アークガド聖王国とガドニア侯国はそう言った理由で強い絆があるのです」


 なるほどな

 つまりアレだ。

 俺は隣のマキマキに言う。


「つまりアレだな、アレってことだ」


「……親戚がやってる国ってことですよ。本家と分家みたいな」


 マキマキが俺が言うより分かりやすく説明してくれた。

 エライね!


「それは良いお考えです。大嶮山より西は魔王軍も侵攻しておりませんゆえ、人魔大戦から国力もかなり回復しているはずです。父王陛下も快諾されるでしょう」


 アベイル隊長も太鼓判を押す。


「うむ。数年の内には色をつけて返礼せねばならんが、隣国とはいえアッキンド大商国に借りを作るよりもよほど負担が少ない。アベイルに特使を任せる。急務であるため無理をさせるが、騎馬隊から使節団を選抜して明後日には向かってもらいたい」


「ハッ! お任せください!」


 サイロスさんが俺たちに顔を向ける。


「そこでカブラギ殿、海崎殿、アグー殿にお願いがございます。アークガドの戦力は国内に残った魔王軍残党の排除と治安維持に充てなければならず、人手不足なのです。大嶮山には強力な魔獣も多く、それらに対応するには兵力もそれなりに割かなければなりませんがその余裕もなく、根無し草の冒険者にも内密な使節派遣なので依頼するわけにいきません」


「なるほど、ワシら三人でそれなりの戦力になりますからな」


 護衛として同行してほしいって事ね。

 アベイル隊長っていうナビゲーター付きで他国に帰還方法の調査にいける。

 こりゃ願ったりだわ。

 アグーが俺とマキマキを見る。


「いいよ俺、行く行く」


「アタシも大丈夫です」


「決まりぢゃな」


「待って!!」


 話がまとまりそうになった時、シソーヌ姫が両手を机に突いて叫んだ。


 何事?


 みんながシソーヌ姫を見ると、コホンと咳払いをひとつ。


「お父様、アベイル隊長は元はガドニア侯国のお身内です。兄弟国とはいえ、正式に援助を願い出るならばアークガド聖王国からもそれなりの肩書の者が同行しなければ、失礼というものですわ」


 シソーヌ姫が右手をアゴに付けて、視線を宙に向ける。


「しかしお兄様はまだ帰国されてませんし、宰相さまも四功臣の補助や国都復興の指揮でお忙しく、マルク大将軍も軍事面の編成で手が離せません。バラック宮廷魔術師長も施設面の修繕を監督するお立場……。ならば仕方ありません。王族のわたくしがその役目を負うべきではないかと考えます」


 シソーヌ姫はそう言って、ゆっくりと左手を胸に当てた。


「ならん」


 王様がその提案を切って捨てる。


「お父様、今は国の為に王族も身を粉にして奔走するべきですわ」


「ならん」


 目を閉じて微動だにしない王様。

 シソーヌ姫が目に涙を溜めて、ふるふると肩を揺らしだす。



「ヤダヤダ行く行くゼッタイ行くもんパパのばかーーーー!!!!」



 テーブルに身体を乗り出し、仰向けに手足をバタバタさせてシソーヌ姫が暴れだした。


「ダメったらダメです! 聞き分けなさいシーちゃん!」


 王様がそう言って立ち上がり、サイロスさんが頭を抱えてマルク大将軍とバラックおじいちゃんが苦笑いする。


「……シーちゃん?」


「陛下は親バカであらせられるのです」


 俺たち地球組が唖然としていると、アルマが小声で俺たちに教えてくれた。

 あの威厳からこの落差。

 まあキライじゃねえけど。


 アルマが暴れるシーちゃんの足をガシっと掴む。

 バタバタ手を振らせたままズルズルとテーブルの下に引きずり下ろし、ギュッと抱きしめて頭をナデナデする。

 そのままアルマの胸に顔をうずめて、


「うぅ……、パパのばかぁ……ひげぇ……」


 恨み言を言いながらしゃくりあげてる。

 シソーヌ姫は国都から出た事ないんだっけか。

 そりゃ外を見てみたいって思うわな。

 でも確かに危ねえし、親は心配する。


「陛下、魔王の黒雲も晴れて魔物のチカラも減退し、地上人の魔素出力も上がっております。危険も薄れておりますので、ご再考願えませんでしょうか」


 アルマがシソーヌ姫を抱きしめて、頭を撫でながら提案する。


「アーちゃん!」


 大将軍アンタもか!


「しかしだなアルマよ、大嶮山はかの暴虐龍が棲むと言われる恐ろしい場所。我が聖王国が管理している山道も魔獣対策はしておるが、絶対に安全とは言えん。シソーヌに万が一があっては……」


「そうだぞアーちゃん」


「姫さまに万が一はありません。私が命を懸けてお守りいたします」


 アルマは完全にマルク大将軍を無視して王様を見つめる。

 王様も困ってる様子だけど、んー……。

 俺がそこで手を上げてみる。


「あー……、アルマはシソーヌ姫の護衛騎士なんですよね? そのアルマが護衛しきれないみたいに言われちゃうと、本人も騎士としてのプライドがあるでしょうし。王様の気持ちもすっごい分かるんですけど、かわいい子には旅をさせろって言いますし……、いや言うんですよウチじゃ」


 注目されてるんで両手を広げる。


「シソーヌ姫はアルマが命を懸けて守る。そのアルマは俺が命を懸けて守りますよ。救世戦士なんて肩書でやってますから、世を救う戦士ですから。絶対、なにがあっても守りぬきます、どうでしょう?」


 これで説得できたかな?

 どう?




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