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第1話 気が付けば異世界


 ……生きてる?


 いや、身体の痛みがない。という事は、あの世なのか?


 ぼやけた視界、聞こえない音、手足の感覚も感じられない。

 そうか。死んだのか……俺は。


「や! やった! せ、成功した! ね! ね! やって良かったでしょ!」


 声だ。

 耳に膜が張ったように不明瞭だが、確かに聞こえた。

 子供の声か? 

 子供の、女の子の声がした。


 意識が鮮明になってくる。

 どうやら俺はうつ伏せに突っ伏していたようだ。

 自分のカラダを自分のカラダと確かめるように、ヒジをつき、ヒザをつき、手の平を頬に当ててみた。

 わずかだが、指先を撫でる仮面の感触。

 感覚も戻ってきたようだ。


「ん、んー! ……わたくしは、シソーヌ・ヒーメ・アークガド。ここ、アークガド聖王国の第一王女で、貴方をこの世界へ引き寄せた召喚主です」

 

 ん? なんて言った?

 だんだん目も見えるようになってきたけど……。


 鮮明になってきた視界に映るのは、赤いお上品な絨毯とだだっ広い西洋風の広間。

 いや風じゃねえな、まんまだ。

 下で光ってんのはなんだ?

 魔法陣……ぽい。

 すげぇ魔法陣っぽい。


 なんだ?

 どうなってる?

 状況が全くわかんねぇな……俺はなんでこんなトコにいるんだ?

 スーツも通常のフォームに戻ってるし。


 大首領は……倒した。

 俺は手袋に包まれた右の拳を、戻ってきた感覚を確かめるように握る。

 この手に残る、この感覚。

 間違いない。

 確かにダルダム大首領の核を砕いた。

 砕いたんだ。

 ヤツは滅んで、俺も滅んだ。はず。


 ……死ぬ前に夢でも見てんのかな?


 光が収まり、魔法陣? が、消えた。

 俺は周りを見渡す。

 完全に戻った視界に映る、ピアノ発表会みたいな服着た金髪の美少女。

 それと黒い髪を肩まで伸ばした、西洋甲冑を着る端正な顔立ちの女。


 俺が言うのもなんだが、コスプレにしちゃ馴染み過ぎてる。

 外国人か?

 目の色も違うし。

 でも日本語しゃべってたよな?


 俺が二人をしげしげと観察していると、こちらを伺いながら二人がコソコソとしゃべりだした。

 俺のガイアイアーはその会話を難なく拾う。


「え? え? 言葉が通じないんですけど……」


「姫さま、仮面で顔が見えないですから彼は亜人族……それも言語を使用しない亜人族かもしれません。敵意がないことを示すために、ひっくり返って腹を見せてみてはいかがでしょうか? 犬のようにクンクン言いながらだと、より効果的かもしれません」


「……わかったわ。今は一刻を争うものね」


 少女が仰向けになり、両手を曲げて高い声を出す。

 ええ……。


 俺が黙ってその様子を見ていると、少女が急に立ち上がって甲冑の女に叫んだ。


「なんで自分はやんないのぉ!?」


 涙を浮かべて詰め寄る少女と、視線を合わさない甲冑女。


「あー……アンタらに害がねえのはわかったよ」


 居たたまれなくなってこっちからアクションを起こしてみた。

 すると少女が目を見開いて、こちらを凝視する。

 凝視したまま、ツカツカと俺に詰め寄ってくる。


「通じるじゃん! 言葉通じるじゃん!? なんで最初ムシしたの!? ねぇなんで!?」


 おお……俺が悪いの?


「いや、悪かったよ。混乱しててさ。さっき言ってた自己紹介みたいなヤツ、良く聞こえなかったんだよ。ゴメンけどもう一回言ってくんねえかな?」


 俺がそう言うと、女の子は後ずさりして両手を横に広げ、甲冑の女にドレスを下に引っ張らせている。さっき寝転がってたからシワができたんだろう。


「おほん! ……わたくしは、シソーヌ・ヒーメ・アークガド。ここアークガド王国の第一王女で、貴方をこの世界へ引き寄せた召喚主です」


 おお、急に気品が。

 ん? 

 王国? 

 召喚?


「ちょっと待ってくれ。王国ってことは……ここって日本じゃねえのか? 日本語しゃべってんのに? いや、それよりも、この世界って、何?」


「事態を呑み込めないのは分かります。しかし今は事態が差し迫っており、詳しくお話する時間が――」


 バァゴォオン!!!!


 会話の途中で、広間のでかい扉が内側に吹っ飛んできた。

 と、甲冑の女が広間の入り口と金髪少女の間に割って入る。

 護ってる? 護衛? 

 あ、姫って言ってたけど……マジなのか?


 扉が燃え上がり、煙の向こうから複数の影が向かってくる。


「ひいぃぃぃいいぃい!!」


 姫が悲鳴を上げる。

 姿を現したのは2メートルほどの、黒いマントを羽織った5人組。

 だが、顔の部分を見て意表を突かれる。


 ガイコツだ。


「なんでぇ? なんで入ってきてるのぉ? 聖結界はぁ?」


 姫が泣き、甲冑女が剣を構える。


闇骸骨ダークスケルトン……結界の影響が他の魔物より少なく、奇襲に特化したタイプですね。」


 魔物と来たか。


「なぁお姫様、アレは、悪者ですかね?」


「見たらわかるでしょお!!」


 激しいなこのコ。


「俺は見た目で相手を判断しないんでね。それよりもお姫様、さっきはなんて言おうとしてたんですか?」


 はぁ? みたいな顔しないでくれねえかなぁ……。

 俺はスーパーヒーロー。

 相手が何であれ誰であれ、弱い方につくぜ?

 

「事態は差し迫って言ってましたよね? 俺にどうして欲しいですか?」


「……? ……! 助けて!!」


 ベルトのガイアコアがキィンと鳴った。

 全身にチカラがみなぎる。

 ガイアエネルギーがほとんど空だったからな、助けを求められてこそヒーローは戦えるってもんだ。


「ちょっとゴメンよ」


 甲冑女を脇によせる。


「王女ノ首ヲ晒セバ、ニンゲンドモノ士気モ落チヨウ。殺セ」


 ガイコツ共が一斉に向かって来るが……遅いな。

 三大幹部だったアクラツ将軍に比べりゃ止まってみえるし、技を当てんのも簡単だ。


「アスガイアー・パンチ!!」


 俺が拳を振りぬくと、ガイコツ共が弾け飛んだ。

 10発の打撃を高速で放つ技だ。

 メガアスガイアー・パンチやギガアスガイアー・パンチもあるが、今はパワー不足だし、ガイコツ共の強さを考えるとこれで十分。

 粉々になった骨がバラバラと床に落ちた。


「なんと……闇骸骨ダークスケルトンを一撃……」


「すっごい……」


 振り返ると、二人が唖然と俺を見ていた。

 今のを退治するために俺は呼ばれたのかな?


「今ので全部ですか? お姫様」


 姫が何かに気づいたみたいに焦りだす。

 まだまだか。


「いえ! この城は魔物に攻められ、風前の灯なのです! 今まさに国都の民衆が総出で迎え撃っていますが……敵は強大で旗色は悪く、王家の秘術でわたくしが異界から強者を迎えて助力を乞う手筈だったのです」


 なるほど。

 まだ聞きたいことはあるけど、そんな場合じゃないってことね。



 ならさっさと行くか。



「助力を乞うんでしたよね? 次はどこ行きましょうかお姫様」


「この世界のものではなく、まだ見返りも提示していないというのに……貴方は、神の使い……なのですか?」


 神の使い?

 はっは、笑えるな。


「違います。ただのスーパーヒーローですよ」



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